mk98LL
2025-12-31 19:22:40
6108文字
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2025年書き納め

2025年書き納めということで、夏目友人帳メインほぼオールキャラとなりました。本当は一つのお話に全員出したかったのですが、風呂敷がデカくなりそうだったので二本立てです。
①夏目と友人達
②夏目と祓屋二人
となっております。(各話独立。CP要素はありません)

本年も大変お世話になりました。来年もどうぞよろしくお願い致します🙇‍♀️

帰路に、約束を携えて



 まだ日の高い昼の道を、高校の制服に身を包んだ六人の少年少女が並んで歩く。二学期の終業式をつつがなく終えた彼らが感じるものは、毎日の学校生活から少しだけ離れる開放感か、はたまた鞄に仕舞われた成績表を家族に見せる事のプレッシャーか。
 けれど、全員の胸に共通して宿るものがある。それを声にしたのは、一番浮かれた様子で先頭を歩いていた西村だった。

「なぁなぁ〜! 冬休み、みんなは何するんだ!?」

 頭の後ろで手を組んでくるりと振り返ったその笑い顔は、いかにも浮かれていますと言わんばかり。その様子に苦笑しつつ最初に答えたのは、相棒的存在の北本だ。

「どうせお前は、雪合戦だ雪だるまだかまくらだって去年みたいに騒ぐんだろうが。今年の冬も寒いらしいからな」
「なんだよ良いだろ楽しいだろ〜! 俺が単純みたいな言い方すんな!」
「でも、みんなでかまくら作るのは楽しそうよね。去年も踏まえて、今年はもっと上手く作れるんじゃない?」
「私は、海外で仕事をしてる両親や離れた大学に通っている兄が家に帰ってくるから、それも楽しみだわ」

 笹田に多軌も会話に加わり、ワイワイと話の輪が大きくなる。最後尾を歩いていた夏目は、隣に並ぶ田沼に顔を向けた。

「年末年始となると、お寺は忙しいんじゃないか?」
「まぁ、寺中の大掃除は大変かな。けど、近所の人が手伝ってくれたり、他の寺から人手が派遣されてきたりもするから……俺と父さんがやるのは、普段生活してる場所くらいなもんだ」

 大丈夫だよ、と笑いつつその眉は少しだけ困ったように歪んでいる。広い寺に父親と二人で暮らしている田沼のことだ、基本的に色々なことを一人でできるが、家中の掃除となると大変だろう。
 ふと、夏目もまた年末に向けて養母が準備を進めていたことを思い出す。

「掃除か……塔子さんは普段から綺麗にしてくれてるけど、そういえば障子を張り替えたいとは言ってた気がするな」
「お、手伝ってみればいいんじゃないか。俺も父さんとやったことあるけど、慣れると難しくないぞ。新しい障子から光が入ると気持ちがいいし」
「俺にできるかな」
「塔子さんが上手そうだし、大丈夫だろ。まぁ……ポン太が遊び出さないように見張ってる必要はあるかもな」
「はは、確かに」

 大掃除で暇になったニャンコ先生が、真新しい障子紙や木枠で遊び始めるのを想像すると少し面白くて、可愛い。「私は猫ではなーーい!!!」と怒られそうではあるが。
 想像に二人してくすくすと笑ったところで、先頭の西村から声が飛んだ。

「おーい田沼ぁ! 田沼のお寺の鐘って、撞きに行ってもいいのかぁ?」
「ん? あぁ、いいぞ。近所の人も何人か来るみたいだから、良ければみんな来てくれ」

 軽く片手を上げて田沼が頷けば、西村はよっしゃ! とガッツポーズを見せた。

「除夜の鐘かぁ。俺も行ってみるかな」
「そういえば、撞いたことないかも。兄さんも誘ってみようかしら」
「大晦日の夜って寒いわよー? みんな、防寒はしっかりしてよね!」
「夏目も来いよ。ポン太も一緒にさ」
「あぁ、行きたい。ニャンコ先生は……酒臭くなかったら、連れてくよ」
「妖怪達の新年会……いや、大晦日ならまだ忘年会か。どちらにせよ、年末年始は一週間くらい飲み会やってそうだな」
「まぁ、暇さえあれば飲んでるような連中だから」

 あの酒好きの大妖は、きっと多くの顔見知りと共に往く年も来る年も関係ない宴会を楽しむのだろう。瞬きの間に数年が過ぎ去るような時間概念を持つ妖怪達にとって、年末年始というものを楽しむ感覚は理解に乏しいのかもしれない。
 それでも、と夏目は思う。
 今年は一緒に年越しをしよう、と声をかけてみようか。
 ニャンコ先生用の丼に年越しそばを用意してやって、デザートにみかんを剥いてやる。部屋で飲むのは控えめにしてもらって、夜遅くなってから一緒に田沼の寺に行くのだ。
 なんだかんだと言いながら、先生はきっと一緒にいてくれる。夏目はそんな気がした。

「あ、じゃあ私はこっちだから」
「俺、買い物頼まれてたんだった。スーパー行かねぇと」
「おれはこっち、っと!」

 いつもの学校帰り、いつもの分かれ道。また明日、また来週と別れるところだが、今日は違う。

「遊ぶのも良いけど、ちゃーんと冬休みの課題もやるのよ!」
「げぇ、最後の最後にそういうこと言うなよな委員長!」
「よかったな西村。これで忘れられないぞ〜」
「ふふっ。それじゃみんな、良いお年を……は、まだ早いわね」
「だな。除夜の鐘のことは、父さんにも話しておくよ。何か決まったら俺からみんなに連絡する」

「──じゃあみんな、またな」

 手を振って、皆がそれぞれの帰路を行く。
 一人になった夏目の足元に、草むらから出てきた白くて丸いものがのそのそと近付いてきて夏目を見上げた。

「二学期とやらは終わったのか。別れ際まで騒がしいガキどもだ」
「明日から学校はないからな。ただいま、ニャンコ先生」

 離れて見守っていてくれたらしいニャンコ先生を抱き上げて、夏目は歩き出す。家族の待つ家は、すぐそこだ。
 成績表のこと、障子の張り替えのこと、年越しそばのこと、除夜の鐘のこと。話したいことはたくさんある。きっと、塔子はあらあらと喜んでくれるだろう。滋はいいじゃないかと穏やかに頷いてくれるだろう。

「なぁ、先生。今年は、一緒に年越ししてみないか」

 素直じゃない用心棒はきっと。

……フン。その時に、気が向いたらな」



終.