2025-12-29 16:26:50
4850文字
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まりろ家すけべチャレンジ 1〜2日目まで

まりちゃんがポリセさせたいって言ってたので頑張ろうと思います。任せてください。


Night2 触れるだけのキスまで


 気を抜いていた、としか言いようがない。だって昨日の夜は何もなかったから。
「そう不貞腐れるな」
 ちゃぽん、と水が揺れる音と共に腹に回った手がゆっくりとヒカセンを引き寄せる。湯船の中、エメトセルクに背中を預ける形になり、ヒカセンは俯いて頬を染めた。そうすれば顕になった頸に柔らかい唇がそっと触れる。じんわりと、昨日よりは幾分か薄れた痺れが広がった。
「何もしない」
……してると、思うけど」
「そろそろ口付けぐらいは慣れてくれ」
「なれることは、ないよ……
 お湯の中から持ち上がった腕がそっとヒカセンの顔の輪郭を撫でた。少し引き寄せられ、仕方なく振り返って見上げれば、唇にゆっくりと触れるだけのキスが落ちてくる。じわり、とまた微かな痺れが新しく滲む。逃げ出したい。今すぐに。しかしこの狭い浴槽の中でそうもいかず、されるがままになっている。
 昨日はエメトセルクが先にお風呂に入っていて、今日は先に入っておけ、と言われて素直に入って、これである。しばらく家から離れていたから勘が少し鈍っている、と言うわけでもない。
 きゅう、と結ばれた唇をいつもだったら舌で突いてくるのに、今日は本当に触れるだけだ。唇を合わせて、その熱と柔らかさを味わって、離れてまた抱き締める。傷が増えている、と耳元で囁かれながらそっと脇腹を撫でる手に耳まで赤くなってしまうけれども、その手がそれ以上の場所を触れることはない。抱き締めて、キスをするだけ。本当に、それだけだ。
……本当に、しない?」
「ああ」
 尋ねる声が、響き以上に意味合いが含まれてることに、きっと気付かれている。しかしエメトセルクは指の甲で優しくヒカセンの頬を撫でるだけで、そろそろ上がろうか、と告げた。
 ふわふわのタオルで身体を拭き、寝衣に手を伸ばしたところで腕を掴まれる。どうせ脱ぐからそのままでいい、と言われぽかん、と口を開けて見上げたところでそのままぐるりとタオルで包まれ、寝室まで運ばれてしまった。髪を拭いていろ、と小さいタオルを渡してエメトセルクが部屋を出ていくのを見送り、ぽかんとしたまま言われるがままに髪を拭けば、湯気立つコップを持ったエメトセルクが戻ってくる。腰にタオルを巻いただけの姿につい頬を染めてしまうが、エメトセルクは指摘もせずにコップを差し出す。
「ほら、ハーブティーだ」
 ふわりと立つ香りに受け取ってホッと息を吐く。一口口に含む合間にエメトセルクはどうやらヒカセンの髪を乾かしてくれるらしい。指先が頭皮に触れるたびに微かな刺激が走って、案外これは気持ちいいかも、と目を閉じる。
 保湿やらオイルやら、どうせ戦闘や度で痛むからと少し蔑ろ気味だったけれども、エメトセルクは丁寧に丁寧に手入れをしてくれるものだから、そんなところから彼のお人好しなところとか、身内に甘いところを知れるな、なんてぼんやり考える。
 ふわふわと思考を巡らせ、ハーブティーを飲み干す頃に、さらさらと乾いた髪が首筋に落ちた。パチン、と指を鳴らす音と共にコップが消えて、エメトセルクがヒカセンを抱え上げるとそのままベッドに寝かせる。毛布も剥がされて、身体を隠そうとするよりも早く隣に入り込んだエメトセルクに抱き込まれてしまえばどうにもできず、ヒカセンはつい息を止めた。
「何もしないから、体の力を抜け」
 ふにり、と柔らかい唇がヒカセンの額に押し付けられた。甘やかに刺激が走って、ヒカセンがんっ!と抗議のために顔を上げれば、鼻の先にも柔らかく唇が触れた。触れるだけの唇が頬を、唇の横を、そっと撫でていく。
「これだけだ。何もしないが、久しぶりにお前とゆっくり過ごせるのだから、これぐらいは許せ」
……別、に許してないわけとかじゃ、ないよ」
 だめ、とは言ってない。けれどもエメトセルクは小さく笑うだけで、耳や首筋にキスをして、捕まえたヒカセンの掌に唇を押し付け、まるで大切なものに触れるかのように握った手を指で撫でるものだから。痺れなんてどうでもよくなって、それよりも触れる手の優しさでヒカセンは胸が苦しくていっぱいいっぱいになってしまう。
「ほら、眠るのだから体の力を抜け」
 回った腕がそっと背中を撫でる。囁くように名前を呼ばれて、唇が瞼に触れた。
「いい子だ。……大丈夫だ」
 ゆっくりと身体の力は抜けるけれども、触れる体温にずっとお腹の奥が飢えている。それでも、彼は何もしないと言うのだ。
 唇をゆっくり喰まれる。呼吸のために唇の隙間を開いても、舌が入り込むことはない。やわやわと唇の感触を楽しむように、少し擦れて、吐息が擽る。滑るように唇が肌を撫でて首筋や耳の下に触れても、エメトセルクは噛み付くことも吸い付くことも無かった。あくまでそっと肌をなぞり、ほんの少しだけ甘く痺れて。それでもそれだけで胸が苦しくなる。身体の力は抜けている。抜けているから、なおさら触れる熱がよく分かる。ヒカセンが閉じていた瞼を持ち上げてエメトセルクを呼べば、どうした、と優しく返された。
…………寝る、時間だよ」
 何もしないと、彼が言った。それはきっと本当で、だったら尚更これ以上触れられたら、きっとヒカセンはおかしくなってしまう。それは怖くて、苦しくて、恥ずかしい。
 笑え声がそうだな、と囁いてヒカセンを抱きしめ直した。ふにりと胸が潰されるほどの包まれる熱に少しだけ息を詰めて、全身にじわりと痺れが滲んだ。けれども額に触れた唇が優しかったから、ホッと息を吐く。
「おやすみ、エメトセルク」
「ああ、おやすみ」
 ゆっくりと撫でられる手は優しくて、ほんの少しだけぴりりと痺れが走る。それ以上に体温が心地よくて、ヒカセンは目を閉じるととろとろと眠りに落ちていった。