day1 事の起こり
息を吸いこんで、ゆっくり吐く。リーンには家に帰ってエメトセルクのそばにいた方がいいと言われたが、なんとも少し、罪悪感にも似た感情がある。しかしどれだけ玄関で立っていたとしても、彼ならきっとヒカセンが帰ってきて、十分以上玄関でもだもだしていることは分かっているだろう。
意を決してドアを開けて、そろそろと気配を忍ばせて中へ入る。
「で、どういうことだ?」
響いた声にびくりと身体を震わせた。ソファーに座ってこちらを見るエメトセルクの怪訝な顔に、そんな顔になるよね、と頷く。そろそろとソファーに移動して、少し離れて腰掛ける。
「おかえり」
「うん、ただいま」
期間の挨拶にほんの少し、エメトセルクの眉間の皺がほぐれた。エメトセルクの手が伸びて、外気で冷えたヒカセンの頬を撫でようとほんの少し、触れた瞬間。ピリッと僅かな痺れが走る。
「
……っ、」
「さて、何故そんな光にエーテルが偏っているんだ」
彼の目はやはり、よく見えている。ヒカセンはえっと、と少し俯いた。
「第一世界で少し、無の大地の復興に関してお手伝いしてて
……ちょっと、長く滞在しすぎるちゃって
……」
「体内エーテルが偏るほどに? そこまで偏ればある体調に違和感があるだろうに」
「それが、全く
……リーンに少し調整はしてもらったけど
……」
「無意味に丈夫で無駄な身体に、変質を防ぐハイデリンの加護か
……これだから本当に
…………」
溜息を吐きながらエメトセルクは触れていた指先を離す。惜しむ感情と安堵が混じり合う。彼と触れ合うことに随分慣れてきたけど、やっぱり恥ずかしいし、胸が苦しくなって、クラクラしてしまう。
「リーンが、元のバランスに戻すには闇の力を蓄えたあなたのそばにいるのがいいって」
だから、しばらくは家にいると告げれば、エメトセルクはほんの少し嬉しそうに唇を綻ばせる。こういった表情から彼が私のことを好きなのだと強く実感を得て、ヒカセンは顔を赤くしてしまう。そんなヒカセンのことは全てお見通しで、エメトセルクは身体を移動させ少しヒカセンに近づいた。
「こうして見ると、まるであの頃のようだな」
その唇に悪い笑みが浮かぶのをみて、ヒカセンはついイルーシブを使用と身構えるが、それよりも早くエメトセルクの手が腰を掴んだ。そのままずりっと引きずられ、ソファーに押し倒されてしまう。
「え、エメトセルクっ!」
「あの頃はこうしてお前に触れることがあると思いもしなかった」
「こうしなくていい! あっ」
服の裾から忍び込んだ手がヒカセンの腹を撫でると、ピリリとした微かな痺れが走る。エメトセルクも同じように感じているはずなのに、肌を弄る手は止まらない。
「エメトセルクっ、いま、ひる!」
「そうだな」
ヒカセンの頬を白髪が撫でた。だめ、ともう一度囁いた声は途中で塞がれる。甘い痺れと共に合わさった唇をすりすりと擦られて、堪らなくなってつい開いてしまった隙間から舌が忍び込んだ。ぬるりと絡め取られながらもずっとピリピリと痺れて、お腹の奥がキュウっと苦しくなる。息が苦しくなった頃にようやく解放され、必死に息を整えながら涙で歪む視界でエメトセルクを見上げる。
「お前のエーテルが元に戻るよう、協力してやろうじゃないか」
本当にとっても悪い顔のエメトセルクが、そこにいた。
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