usagipai
2025-12-23 22:17:58
4619文字
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ねここさん宛

うちよそ小説


ジュピN

ある日の昼下がり。
Nはジュピターとの話し合いのため、シンフォニアの神殿を訪れていた

いつもなら、静謐で澄んだ空気に包まれているはずの神殿。しかしこの日はどこか様子が違かった、回廊を行き交う天使たちは慌ただしく、小走りで書類や箱を抱えている者も多い。羽音や足音が重なり、神殿全体が落ち着きを失っているようだった。

事情を尋ねると、どうやらこの時期は愛を司る「ヴァネッサ」という神子の繁忙期らしい。

「キューピッドの矢を使って、恋人を沢山発生させないといけない時期なのです!」

天使の一人がそう説明してくれた。一方のジュピターはといえば、その話題にはまるで興味がない様子で、忙しなく動き回る天使たちをつまらなそうに眺めているだけだった。

そうこうしてる内に、目的の部屋が近づいていきた、その時

「きゃーーーーー!!!???」

背後から突如、耳をすんざく悲鳴が響いたかと思えば
次の瞬間、ぐっと強い力で引き寄せられ、Nはジュピターの胸元に抱き込まれる形になる

……?」

状況を理解するより早く、視界の端で何かが崩れ落ちた。どうやら、転んだ天使が運んでいた荷物が派手に散らばったらしい。もしそのまま進んでいたら、直撃していたのは間違いなかった。

「チッ……めんどくせぇとこしやがって」

舌打ち混じりに呟きながら、ジュピターはNを庇うように一歩前に出た。
散乱した荷物が床に転がり、羽と羽音が慌ただしく交錯する。

……だが、Nはそこで小さな違和感を覚える。

(庇った……?)

この男は基本的に“守る”という行為をしない神だ。
怪我をするかどうか、危険かどうか――そういった物事を天秤にかけて他者を守るタイプではない。
荷物が直撃しそうだとしても、避けろと一言言って終わり。それがいつものジュピターだった。

なのに、今は反射的に前へ出た。
理由もなく、躊躇もなく。

……?」

Nが視線を向けると、ジュピターは一瞬だけ床に散らばった荷物を睨みつけ、眉をひそめていた。

その荷物の中身――
転んだ天使が慌てて拾い集めているそれは、白く磨かれた弓と、金色の矢。

キューピッドの矢。

……あ」

事情を察した天使が、青ざめた顔で小さく声を漏らす。

そうだ。
Nは“別世界の神”。
この世界の法則に属さない存在であり、キューピッドの矢がどんな影響を及ぼすか、誰にも分からない。

だから――
ジュピターは庇ったのだ
守るためではない
面倒な事態を防ぐために

……防ぐ、はずだった

微かな音と共に、一本の矢が弾かれ、軌道を変え――
不運にも、ジュピターの肩をかすめて突き刺さった

……は?」

間の抜けた声を出したのは、他でもないジュピター本人だった。

数秒の沈黙
そして、ゆっくりとNを見るその瞳が、明らかにおかしい

……なぁ、N」

さっきまでの苛立ちも、無関心も消え失せ、
やけに距離が近い。やけに視線が甘い。

「お前……今日、やけに綺麗じゃねぇ?」

――最悪の結果である。

キューピッドの矢はNに当たることなく、
庇った張本人に直撃。

そしてこの日
丸っと一日中N様を口説くジュピターが爆誕したとか

後日
「おいN忘れろ」
「はは」
「誤魔化してんじゃねぇぞ」
「はは」