すだ
2025-12-21 15:21:43
8909文字
Public 婿スバカグ
 

いざ、尋常に

舞手カグヤと婿スバル寄りの学パロスバカグ。交際前。カグヤを避け続けていたら、剣道場で竹刀を手に彼女と向かい合っていたスバルのお話。おまけでカグヤ視点もあります。#スバカグ


おまけ


「スバル先輩ってさー」
 聞き慣れた名前が聞こえ、思わず耳を澄ます。声のした方を向くと幼馴染のスバルと同じ高校の制服を着た女生徒が複数人で談笑していた。
「いつもはキリッとした感じなんだけど、笑うと可愛いんだねー」
「そうそう、あんな顔初めて見た」
 自分だけが知っていたスバルの魅力を知られてしまった。カグヤはこっそり眉をひそめた。
 スバルは素敵な人だ。先程の女生徒が言っていた通り、笑うと精悍な顔つきが和らぎ、可愛らしくなる。
 このままではいけない。知らないうちにどんどんライバルが増えていく。近いからという理由で深く考えずに中高一貫の女子校を選んだことを今ほど後悔したことはない。
 早く行動しなければ。決意を胸にカグヤはその場を去った。
「でも、意外だったよねー。あの『鉄仮面』があんなにデレデレになるなんて」
「うちら、学校であんな顔見たことないよね。恋人なのかな? あのとき一緒にいた女の子」
「銀色の髪の毛がサラサラで、すっごい美少女だったね。お似合いだったなあ」
 カグヤは知らない。女生徒たちが自分のことまで噂していたことを。


「スバルくんって、人当たりがいいし物腰も柔らかいから、とっつきやすいと誤解されるんだよね。でも、基本的に心を許した人にしか踏み込ませない性格だから、当然そういう子たちからの告白はお断りするの。何でも受け入れてくれそうな顔や態度に騙された子たちが何人泣かされたことか。完璧な笑顔で今は恋人を作る気がないから、と断られ続けた子たちがつけたあだ名が『鉄仮面』」
「へー」
「あまりに鉄壁だから、人に興味がないんじゃないか、とかロボットなんじゃないか、とか言われてるみたい」
「そうなんだー」
「いろはちゃん、あんまり興味ないでしょ」
「うん、甘味のことに比べれば興味は薄いかな。あ、でもでも、カグヤちゃんの幸せがかかってるとなれば話は別だよ」
「ならちゃんと情報共有しておかないと。カグヤちゃんの将来がかかってるんだよ」
「うん、分かった」
 目の前に座るいろははひなとカグヤの友人だ。カグヤと同じ中高一貫の女子中学に通っている。
 何故いろはにとって興味のないスバルの話をしているかというと、カグヤちゃんが突然幼馴染と同じ高校を受験する、って言い出したんだけど何か知ってる? と聞かれたからだ。恐らくスバルが学校で人気なのを不安がっているのだろうと、何が起こっているのかを説明している。
「なるほど……。話を聞いてると全然焦る必要なさそうなんだけど、カグヤちゃんはどうして同じ高校に行こうとしてるんだろう?」
「いつか好みの人が現れて、お付き合いしたら困ると思ってるんじゃないかな」
「自分の目の届くところにいてもらって、何かあれば妨害しようってこと? なかなか重いね」
「スバルくんもかなり重いから、お互い様だと思うの」
「大体『スバルくん』って、カグヤちゃんのことが好きなんだよね?」
 いろはもカグヤからスバルについての話をしょっちゅう聞いているため、何となく彼がどういう人物かは知っている。ひなも何かあるとすぐにいろはへの報告を欠かさない。
「うん、本人は隠してるつもりだけど周りにはバレバレ」
「それなのに、カグヤちゃんには気付いてもらえないんだ」
「昔から仲が良すぎるのも困りものなの。カグヤちゃんの気持ちも全然伝わってないみたいだし」
「お互い鈍いのも原因なんだねー」
 そこまで話すと、いろはが残っていたほうじ茶ラテを口にした。
「色々教えてくれてありがとう、ひなさん」
「どういたしまして。そういえば、いろはちゃんもカグヤちゃんと一緒にうちの高校を受験するって本当?」
「うん」
「エスカレーターで高校に入学できるのに、何だかもったいないなあ」
「いいの! だってひなさんの高校って都心部じゃない! 憧れだったんだよね、都会での学生生活」
 おしゃれなカフェで食べるスイーツ、可愛い雑貨屋さん、素敵なお洋服、楽しみだなあとうっとり目を閉じるいろは。どうやらずっと都会に憧れがあったらしい。
「ひなはふたりと同じ学校に通えたら嬉しいけどね。がんばって!」
「ありがとう! がんばる!」
「お待たせしました」
「やっほー、カグヤちゃん」
 カグヤが到着し、席に着く。
「何だか燃えてるね、何かあった?」
「絶対にスバルと同じ学校に入学したいと決意を固めていました」
「わお、やる気満々だね!」
「いろはさん、一緒に合格しましょうね」
「うん!」