河童の皿箱
2025-12-18 08:47:50
3250文字
Public 遊戯王:短め(2025年度)
 

The Grand Creators

煌めく世界を…

 バシャリと跳ねる、水の音。ぱちゃりと踏んだ、聖殿の水。シンと冷たく、清廉で。
 目を向ければ、女がひとり。澄み渡る青色の髪は美しく波打ち、そして穏やかに微笑んだ。

 「ようこそいらっしゃいました、勇者様」、と。

 それは、長い長い旅の始まり。聖殿の外に出てみれば、繰り返しばかりの退屈な日常はどこかへ消え去った。幼き日に憧れていたような魔法の世界。空には大地が浮かび上がり、神々からの奇跡を受けて、旅人たちは今日も往く。そしてそんな旅人に、自分はなったのだ。

 それは、新たなる仲間との出会い。遺跡で出会った魔鉱石の戦士、道すがらを流離うはグリフォンを従えし獣人。竜のような、鳥のような騎乗生物に乗ってずんずん進めば、見たこともないモンスター、時には危険もあったけど、それを過ぎては新しい街。歩いてきた道は、進んできたダンジョンは、真っ新な地図を賑やかにしていく。

 それは、外法の呪いとの戦い。夜光蝶の導きで、迷い花の森を抜け、辿り着いたのは暗黒神殿。安置された聖剣を求めて踏み入れば、歯が立たぬほど強力なモンスターの群れに襲われて。けれど謎の黒騎士が現れては、共に戦った。

 聖剣は勇者を選んだ。勇者は剣を振るった。勇者は運命の旅路を辿り続けた。

 でもね。時々こうも思うんだ。また記憶を消して、君たちと『はじめから』ができたらって。

 そんなことは、誰にも言わない。魔法鞄のポーションを数えて、魔道具や武器、防具の手入れをして。酒を飲み、飯を食い、すっかり描き込まれた地図を広げて、さあ、どこに行こうか。まるをつけて、ここへ行こうと。そこは、ずいぶん遠くの港町。なら、あそこから船に乗っていこう。必要なものはちゃんと買わないと。予算は? 新調は? それはお店で決めようかって。
 明日の旅路と旅支度、すっかり慣れたその行程を、心に描いておやすみなさい。ちょっと高い宿屋のふかふかベッドに身をうずめては、目を閉じる。



 その日、夢を見た。

 バシャンと跳ねる、水の音。ぱちゃりと踏んだ、聖殿の水。シンと冷たく、清廉で。
 目を向ければ、女がひとり。澄み渡る青色の髪は美しく波打ち、そして穏やかに微笑んだ。

 「ようこそいらっしゃいました、勇者様」、と。

 変わらぬ彼女から手渡された、真っ新な地図。どこに何があるのかもわからないそれは、胸をドキドキさせてくれる。ふと、顔を上げる。聖殿の水が、小さな街が、照る太陽が、彼女の髪があぁ、なんて

 煌めく世界を、この地図の上へ。