不破
2025-12-07 22:00:56
5617文字
Public 空戦
 

#27




 こちらを向くマグナムの銃口。その向こう側から、芝居かがった男の声が聞こえた。

……ああ、考えはわかってるよ相棒。俺がもう6発撃ったかまだ5発か。実を言うとこっちもつい夢中になって数えるのを忘れちまったんだ」

 目の前の人物が言いながら、こちらにマグナムを向けたまま左手のマチェットで黒刀を弾き、目深に被っていた外套フードを脱ぐ。
 茶色い短髪にヘーゼルの目、不敵な笑みを浮かべた男。ウィリアム・ボードレール。かつて、この貧民街に身をおいていた頃、一時期行動を共にしていたグループにいた男だった。声を聞いた時点で気がついてはいたが、いざ顔を見ると一抹の驚きはある。フュゼは少しだけ目を細めると、口の片側だけを歪めた。
一瞬の沈黙の後。ウィリアムの目が細められ、金属が僅かに軋む音とともに引き金が引き絞られる。シリンダーが回転し、がちりと音を立てて撃鉄ハンマーが雷管を叩くが、銃声はなく、弾丸が放たれることもなかった。
 ウィリアムの舌打ちが聞こえるも、その隙を突いて素早く黒刀でマチェットを払う。

……似合わねえんだよ。阿呆ったれ」

後方に下がろうとするウィリアムにそう吐き捨てながら、彼の鳩尾を跳ね上げた左足で蹴り抜いた。

「ぐっ……!」

 数歩下がったウィリアムが羽織っていた外套を剥ぎ取るように脱ぎ捨てる。モノトーンのタクティカルスーツ、その腕章には炎の紋章が見て取れた。

「くたばった野郎の真似事たあ、女々しいじゃねえか。ウィル」

自分てめえで殺しといてよく言うぜ、フュゼ」

 ウィリアムの腕章を目にし、蹴りを放った左足を降ろさぬまま放った言葉に、スイングアウトしたM19のシリンダーから薬莢を落としながらウィリアムが応えると、.357マグナム弾をスピードローダーで装填しながら、続ける。

……俺達と同じこの街にいたお前が、爵位を得て軍の一員なんてな。昔なら信じなかった」

「てめえこそ、貧民街のテロリストが傭兵に鞍替えたあな」

「賢い選択ってやつさ。お陰でお前を殺すのも楽にやれそうだ」

 彼の言葉を鼻で笑いながら左足を下ろしたフュゼは黒刀を肩に担ぎ、ぞろぞろと周囲に現れるウィリアムと同じタクティカルスーツに身を包んだ傭兵達を視線だけで確認した。貧民街に居た頃に見た顔も何人かいる。かつてのテロリスト共が揃って傭兵の仲間入りというわけか。どうやら傭兵というのはどんな輩でもなれるものらしい。
 フュゼは黒刀を担いだまま左手を腰に当て、うんざりだと項垂れた。