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不破
2025-12-07 22:00:56
5617文字
Public
空戦
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#27
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通信の向こうが騒がしい。エヴゲーニヤはそれを耳にしながら、想定外の事態が起きていることを察して目を細めた。
『会敵! カノープス1が拉致された!』
貧民街に降りた直後のことだった。カノープス隊の1番機が拉致されたと、共同作戦を行うロザリンドの声が響いてくる。それとほとんど同時に、そばにいるソニアが驚いて息を呑む声が聞こえるが、それに構っている場合でないことは明白だった。
『カノープス2! 勝手に動かないで!』
『うるせえな』
続いて聞こえるロザリンドとフュゼの声。しかし、そのやり取りを最後にHUDモードで展開した端末に表示していた味方のリストにあるカノープス2の文字が暗くなる。どうやら通信を切ったようだ。
以前、カノープスの談話室であった時に粗野な男だとは思ったが、実際に命令を無視するような真似をするとは。
「アルコル1、どうする!? 作戦は
……
」
『作戦は続行するわ、ベガ隊はそのまま作戦を続行して! 第2中隊にカノープス2を追わせる!』
と、こちらが問いかけた声を遮りながらロザリンドの声が返ってくると、エヴゲーニヤは「了解!」と返した。
しかし、瞬間だった。貧民街の路地から数多の人影が現れ、瞬く間にこちらを取り囲むようにして展開した。
「ちっ
……
!」
直ぐ側にいたロウが舌打ちをしながら銃を取り出すのを横目に、エヴゲーニヤは鋭い声で叫んだ。
「
会敵
エンゲージ
! ベガ隊交戦開始!」
『アルコル隊、会敵! 完全に読まれていたようね
……
!』
こちらの声に返すように、アルコル隊も戦闘に入ったことを通信の向こうのロザリンドが告げる。
と、こちらを取り囲んだ敵の部隊の腕章に炎の
紋章
エンブレム
を見つけ、目を見開いた。
「
AWS
アータル・ウェポン・ソリューションズ
……
!?」
AWS。エルヴィーノ・ベルナスコーニを代表とする民間軍事会社だ。各国へ装備や兵器の販売に加え、特定の戦場への兵士の派遣など、戦力の提供を行うことを事業として行っているため、社員を戦闘員として雇用している。かつて、軍に入る前の自分も、その内の1人だった。だからこそ、この作戦の成功確率が限りなく下がったことを、エヴゲーニヤは確信した。
「ああ。そんな気がしてたが、こう早く再会することになるとはな」
と、上方から声が響いた。知った男の声、それがかつて自分の上司であった男のものだと理解し、エヴゲーニヤは最悪だと笑った。
「フランク
……
」
「再会を喜ぼうって顔じゃないな。イェーニャ」
ワイヤーを使って降下してきた男がこちらの顔を見て言う。フランク・バーネット。強面のスキンヘッドのその男は、かつて
――
とは言っても数年前の話だが
――
自分がAWSの戦闘員だった頃、所属していた隊の隊長を務めていた人物だった。
「敵として再会なんて笑えない冗談でしょ。こっちの動きはお見通しってわけ?」
「当然だ。知ってるだろ?
AWS
俺達
は常に相手の動きを読む」
「それは、そうだったね!」
フランクの言葉にかつて所属していた部隊の教えを思い出しながら戦斧を振り上げる。
AWSの戦闘員は各地の貧民街や大規模なテロの現場にも派遣されたほどの手練れ揃いだ。少数のベガ隊で凌ぎ切れるほど甘い相手ではない。となれば、打つ手は1つしかない。
「アルコル1! 駄目、相手が悪い! 一旦離脱する!」
通信を介してロザリンドに言い、
背後の2人
ロウとソニア
に「離脱! 先に行って!」と告げながら、戦斧をフランク目掛けて一直線に振り下ろす。しかしそれはフランクが両腕の袖口から取り出したナイフによって受け止められ、金属音が響く。その向こうでフランクが鼻で笑う声と、背後から駆け出す足音が聞こえた。
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