Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
ジルク
2025-12-01 20:04:57
2233文字
Public
白鳥自カプ
Clear cache
テーマ「花」
CoC「白鳥の歌を謡うとき」ネタバレ
特にいつ頃の話とかないけど書いたのは生体解剖より後。
1
2
花屋のレジ横に、その瓶は並んでいた。色鮮やかな花が閉じ込められた大小の瓶。それぞれ色が揃えられていて、赤い花のもの、黄色い花のもの、紫の花のものなど、色とりどりだ。
同僚に頼まれて、退職する上司への花束を受取りに来ただけなのに、俺はその花が閉じ込められた瓶から目を離せなくなっていた。
「ハーバリウム、気になりますか?」
花束のラッピングを終えた店員から声をかけられる。
「あ、そうですね
……
。こういうの、あまり見たことがなくて。どうやって作られているんですか?」
「プリザーブドフラワーやドライフラワーを瓶に入れて、専用のオイルを注ぐんです。こうすることで生花より長く花を楽しめるんですよ」
「ずっと綺麗なわけじゃないんですか?」
「置いておく場所にもよりますが、半年から一年ほどで花が色褪せてしまったりオイルが濁ったりしてしまうので、飾れる期間はそれくらいですね。生花だと1週間程度なので、それよりは長いんですけど」
改めて瓶の中の花に視線を落とす。瑞々しくて綺麗なのに本来の形では生きていなくて、それでいていつかは死ぬ花。
「あの、これっていくらで買えますか?」
「こっちの大きいのが25ドルでこっちが21ドル、この小さいのが16ドルです」
指し示された瓶に視線を向ける。大きさの割に高額に思えるが、きっとそれだけ技術や手間がかけられているのだろう。
「この、小さい瓶の白い花のやつ、一ついただいてもいいですか?」
片手に収まりそうな大きさの瓶に、小振りの花がいくつか、鮮やかな緑の葉と共に納められているものを指差す。
「もちろんです」
頼まれていた花束とは別で会計してもらう。似合わない買い物だなと思いながらも、もう少しこの花を眺めていたかった。
数週間後。
自宅に帰るとアポロが来ていて、ソファに腰かけてハーバリウムを手に取って眺めていた。
「珍しいもの買ったな」
彼はそう言ってから視線をこちらに寄越す。
「なんでだろうな。自分でもよくわからないけど」
そう返せばアポロは笑って、ハーバリウムの瓶をローテーブルへ戻す。そこには以前彼が置いていった造花のバラも飾ってあって、白い花が並ぶ構図になっていた。
「それさ、お前にやるから、持って帰ってくれないか」
思わずそう口にしていた。
「どうして? お前が欲しくて買ったんだろ?」
アポロの瞳が好奇心にきらめいて、こちらをまっすぐに捉える。
「そうだけど、でも、お前に持っていてほしくて。こないだのお返しって程でもないけどさ、そんな感じで
……
。色褪せたら捨てていいから」
理由なんか、自分でもわからなかった。贈り物として買ったわけではないはずなのに、どうしても彼に持っていてほしくなってしまった。
「そ。じゃあ忘れなかったら帰るとき持ってくな」
アポロはもう一度ハーバリウムの瓶に手を伸ばすと、自分の側へ引き寄せて置き直す。
「なあ、ギル。この花って生きてると思う? 死んでると思う?」
ハーバリウムに視線を向けたまま、アポロが問うてくる。
「
……
さあ、どっちでもないんじゃないか」
「そう言うと思った」
自信なく答えれば、アポロは満足気に笑った。
***
(造花がハーバリウムになって返ってきたな)
自宅に持ち帰ってきた瓶を、照明に翳して眺める。
(ギルは『こっち』だったか)
生命の手触りを封じられ、美しさだけが保存され、それでもいつかは劣化し捨てられる花。生を止められた上で生きているように扱われ、いずれ終わりを迎える存在。
(本当に面白いな)
ギルバートは終わることを怖がる癖に惹かれてもいて、いつだって矛盾した反応を見せる。
(いつかこれを捨てたら教えてやるか)
ハーバリウムをデスクの端に置く。花はまだ瑞々しい純白を保っている。
1
2
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内