MN*B
2025-12-01 07:28:51
7471文字
Public 宗おに:二次創作
 
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【宗おに】カレンフェルトで踊る/En Dans på Karrenfeld|オリジナルキャラあり

ゲーム主人公:居る。名前変換できるけど、脇役程度。
一人称:変更できるけど、ゲーム主人公のものではない。
1ページ目:おにいさん視点 2ページ目:教主様視点
この間書いた小説を経て、教主様とのカプもアリだなってなったんですけど、教主様とくっつくゲーム主人公を出力できなかったので、オリジナル信徒ちゃんでお送りします。
でも、教主様が求めたくなる人物像を考えていたらこんなのになっちゃいました。求めるって、たぶん意味違うなぁ。しかも最近また教主様への解釈に自分の中で変更があったんですが、勿体ないので投稿します。
これが自分なりに甘めな小説です。恋、愛……?というより、執着でしかないと思います。残念ながらこういうのしか書けないんですねー。



彼女は一人で帰ってきた。教主様からの伝言もちゃんと話したと誇らしげにしながら。それもまた、いつものことだった。

それから数日が経ったある日、私は教団に作ってある個人用の執務室で、頭に響く騒がしさに耳を傾けていた。
私がそうやって椅子に腰かけ、じっとしていると、気まぐれのように彼女が現れる。
私の膝の上で、彼女は猫のように上半身を預け、床に身体を流す。そうして私に頭を撫でられるのが好きなようだった。
それでしばらくした後、彼女は満足してまたどこかへ行くのだ。それまで、彼女の気が済むまで与えてやれば、それでいいようだった。

いつもと変わらず、私は彼女を撫でてやっていた。その最中、徐に彼女が口を開く。

「ねえ、教主様」
「なんですか?」
、飽きちゃった」
「飽きた、とは」
「ここに居るの飽きちゃったから、出ていくね」

部屋からだろうか。そう思うくらいに軽かった。しかし、次に続いた言葉で全てがひっくり返る。

「来る者拒まず、去る者追わず。なんでしょ?」

なんでまるで〝もっと早くそれを知っておきたかった〟みたいに言うんだ。
私は撫でる手を止め、彼女を見下ろした。
妙に思考が、胸がざわつく。その感覚のままに口から言葉が流れ出す。

「何か不満や不安、満たされないものがあるんですね? そんなことを言うだなんて。……ああ、もしかして彼のせいですか? 今まではそんなことなかったのに……お気に入りだったんですか? 他と同じだったので気がつきませんでした。それなら連れ戻せば」
「教主様。、なんにもいらないよ」
……そうですね。教義の通りであれば、何も必要としませんよね。では、なぜ」
「飽きちゃったんだもん」

その言葉に私は安堵の息を漏らした。なんだ、いつもの我儘か。
中身のない空っぽな要求は、手のかかる幼子のままだ。どうしてなのかと問えば、気分であったり、そうしたかった等の、輪郭すらも曖昧な感情の発露でしかない。
ちゃんと満たされているのなら、こうなることもないはずなのだが……とはいえ、少しだけ手のかかる程度であれば可愛いものだった。
信徒もおおよそがこの意見だ。だからこそ、都合も良かった。

「どうしてそんなことを言うんです。もしかして、構って欲しいんですか?」
「違うよ。が構ってあげるの、もうお終いでいいよね?」

……

「教主様が欲しがったでしょ、信徒。だから、そう居てあげたんだよ。でも、もういっかなって。他のことしたくなっちゃった」

彼女はそう言って、私の膝から離れ、立ち上がる。その目線の高さは座ったままの私と大して変わらなかった。
私は変わらず、座ったまま彼女に言葉を投げかける。

「ここから出て、どこに行くつもりです。貴方にはどこにも居場所も、力も、何も、何もないんですよ」
「足があるよ?」

至極当然のことのように、それだけでいいとばかりに彼女は話し、一歩二歩と歩き出す。私から距離を取る。

「好きな方向に歩いて、たまにステップとターンをするの」

バレエを踊るように、彼女は軽やかに回った。柔らかな髪が揺れる。信徒で揃いの質素な服が捲れる。
彼女はそれだけで楽し気にくすくすと笑い声をこぼした。

「疲れたら寝て、また起きて、走ったり飛んだりするの。そうしたいなー」

ここに居たってできることだ。しかし、そういうことではない。
きっと、そうなのだ。これは〝本気自由〟だ。
ゴトンと酷く重たい音が背後で鳴った。私の座っていた椅子が投げ出され、倒れた音だ。……立ち上がった私の、教主としての顔の下から、〝俺〟の本音が出る。

「服も、住む場所も、何もかもを与えてきた。足があると言ったが、その肉と骨だって、もはや私が与えたようなものだ」
「教主様がそうしたかったんだよね?」

与えられるのが当然なのだと、彼女は疑わない……というより、むしろそれとは反対で、彼女は私から〝受け取ってあげている〟のだと、そう言っていた。

「それならは教主様の望んだとおりにしてきたよ。一人の信徒との時間をあげたよ」

その上、我儘を言っているのは私のほうだと言い聞かせてくる。そして、彼女は自身の胸元に手を置いた。

「身体は削ぎ落せないけど、服を返して欲しいならそうするね」

布ずれの音が続く。彼女が身に着けていた物が全て床に投げ出される。
彼女は躊躇なく、服を脱ぎ捨てた。下着も靴も同様にだ。その結果、一糸纏わない姿を晒すことになっても、そこに恥じらいもなかった。あまりにも自然体だった。
それを見ていることしかできなかった私も、羞恥を感じない。あるのは、――

「じゃあねー」
「いけません」

彼女の二歩は私の一歩にも満たない。その距離を埋めるのは容易く、ほとんど腕を伸ばすだけで事足りた。
離れようとする腕を掴み、身体ごと引き寄せ、抱きしめる。低い位置にある小さい頭に頬を寄せて、羽交い締めにして、逃げられないようにした。
――あるのは焦りと、微かな苛立ち。

「足りなかったんですよね。貴方は欲しがりですから、私に構って欲しかったんでしょう。本当はいけないことです。ですが、満たされていないということは私が救ってあげなければ」

彼女の意思を塗り潰すように捲し立てて、顎を掴んで上を向かせる。

「ほら、あーん」

【蜜】でできた飴玉を口元に差し出せば、彼女は不思議そうな顔をしながらも、大人しく受け入れる。嗚呼、これで……
何も考えることだってできない。【蜜】で満たしてしまえば、思考を奪えば、意思を失くせば、求めなくなる。ジユウも、ヘンカも。
彼女はとろりと緩んだまなじりで私を見つめた。

「教主様、――満足した?」

却って、問われる。これではまるで、私が与えられたかのようじゃないか。

どうして。何も変わらない?
もしかすると、彼女はずっと、〝何も変わっていなかった〟だけなのか?
今まで私が見てきた姿は、私が信じていた言葉は、全て、全部が、彼女のありのままだった? それとも演じてきた? なぜ、満たされてくれない。
理想が。模範のような、無垢で変わらない、成長しない、在るべき姿のまま、不変の。知能も成長も求めない完璧。不幸とは縁遠く、この世の甘さを詰め込んで、煮詰めて、結晶化させたような、私の信徒モノ

彼女を抱えたまま床に崩れ落ち、座り込む。
絶対に私の元から離れない、離れるなんて考えすら思いつかないような、そんな愚かなかわいい子だと思っていたのに。お前だけは何をせずとも……いい子だとそう思えていたのに。

「私を裏切るんですね。いえ、裏切ったんです。なんて、なんて酷い……

嗚咽と共に涙をこぼして見せる。そうすれば、彼女は私の胸元に埋まっていた顔を上げた。

「教主様、泣いてるの?」

彼女は心配そうな顔をして、私の腕の中から私の顔を覗きこむ。そして、いつも彼女がされてきたように、彼女も私に施す。

「悲しいの?」
「はい……
「止まらないの?」
「ええ、貴方のせいですよ」
「そうなの?」
「だから……
「だから?」
「行かないでください。……ね?」
「そっか。うん……

彼女は痛ましそうに私を見つめると、私の頭を撫でた。慰めるように指で私の髪を梳いて、

「それじゃ行くね」
「は?」
「ん?」

彼女はきょとんと、純粋で澄んだ瞳をしたまま、首を傾げる。私を拒絶する。

「聞き間違えでしょうか。行かないでくださいと、私は――私が頼んでいるんです」
「そうなんだ。でもね、は行くねって言ってるの」

話が、話が噛み合わない。
私も彼女の髪に指を通しながら、彼女に言い聞かせる。

「私の言うことを聞けないんですね。善くありません。ワルい子ですね」
「なんで?」
「私の言うことを聞かないから」

通していた指に力を籠め、その髪を掴んで強く引く。彼女の背中に回した腕はそのままに、彼女を仰け反らせて、容易く折れそうな首を晒し上げる。
突然のことに彼女は何も分かっていない顔をしたままだった。……だが、それもすぐに崩れる。きっと泣いて、喚くだろう。
そうでなくとも、いつも忙しなく鳴く雛鳥の如く騒ぎ立てていた彼女だ。それがいきなりの暴力に晒されるのだから、そうなれば今度こそ。

痛みに眉を寄せた彼女がゆるりと私のほうを見る。その仕草で、私の指に絡んだ髪がぷつりと切れた感触がした。

……教主様」

彼女の手が私の頬に添えられる。彼女を掴んでいる手には目もくれずに、彼女は私のほうをじっと見た。

「まだしたい?」

それは淡々とした響きで、付き合わなきゃだめなのかと物語っていた。彼女が何かに飽きた時と変わらない、普段通りの反応だった。

私の目の前に居て、【蜜】を受け入れているのに……間違いなく【蜜】の影響を受けている、なのに、――嗚呼! 何故だ!!
だめだ、だめだだめだだめだこれではだめだ!!
涙も暴力も【蜜】でも、彼女の意思がカエらない!!

喉が強張る。
何かを言おうとしても、言葉にならずに霧散する。

指から力が抜け、腕を床に下ろした。
切れた髪が絡んでいて、私の手にそれだけが残される。

解放された彼女は、私から離れ、立ち上がった。

その透き通った肌は、これから通る草木に裂かれ、細かい傷でくすみ、たくさんの痕がつくのだろう。……その傷をつけるのは俺でもいいじゃないか。
その柔らかい髪は、これから砂を巻き込み、枯れ葉が絡むようになるのだろう。……そうやって乱すのは俺にだってできるじゃないか。
その小さな爪は、これから泥に塗れ、石にぶつけて割れて、血で汚れるのだろう。……そうなるくらいなら俺にくれたっていいじゃないか。

どうしてもそうなりたいのなら、その全てを〝私〟が与えてあげるから、だから――その役目を〝俺〟にやらせてくれよ。
磨くのも汚すのも壊すのも、俺に任せてくれれば望んだとおりにしてあげるから。だから、……

本人に手を伸ばすことも出来ずに、彼女の脱ぎ捨てた抜け殻をかき集める。残された僅かな熱と匂いだけでも自分のものにしておきたかった。


「んー。しょうがないなぁ」

すぐ近くから彼女の声がして、顔を上げれば、やはり目の前に彼女はいた。
いつもと今までとなんら変わらない顔で、声で、目で、彼女は言う。

「あともう一回だけだよ」

私が身体を起こせば、彼女は甘えるように身体を寝そべらせて、私の膝に上半身を預ける。いつも通りの定位置に戻って、小首を傾げた。
私の膝に腕を乗せて、見上げるのだ。何も身に纏っていないことなど歯牙にもかけない。宗教画や彫刻が恥じらわないように、彼女もただそう在るだけだった。

私が飴玉を差し出せば、従順に口を開ける。幼い顔で「あー」と声を出しながら、【蜜】を迎え入れる。
彼女は飴玉の形をしたそれを何度か口の中で転がして、それからごくりと丸呑みにした。

……どうですか?」
「ふふっ。甘~い! ね、教主様」

何かに満たされた幸せそうな顔をして、彼女は私に微笑んだ。それはいつもと何もカワらないものだった。



それ以来、彼女は我儘を言わなくなった。ご機嫌斜めになることも、可愛らしい癇癪を起こすことも、なくなった。
ただ、満ち足りた様子で笑う。他の信徒と同様に。模範的な信徒のように。
私は私のそばに立つ彼女の髪を撫でる。……あと一回、もう一回。