保科
2025-11-29 20:56:04
1447文字
Public スタレ
 

アンガーマネジメント

サフェルとモーディス むちもま宛 むちもま……おれだよ……
お題:6秒ルールを教えてもらって早口で6秒数えてキレる🐈‍⬛など(?)

「冷静さを身に着けておけ、サフェル」
と、あきれ顔のライオンちゃんに声をかけられたのは、しかめっ面のあたしが不機嫌丸出しで尻尾を叩きつけていたときだ。
……何さ、なんか文句あんの王子」
「指導者――もとい半神たるもの、態度を表に出し民にどう見られるかということも気にするべきだ。……というのは建前だが。
その様に、悪口雑言にいちいち目くじらを立てていてはきりがないだろう」
それが何を指すか、はあたしも彼も分かりきったことだ――吹き抜けの下の階からは、さっきからひっきりなしに、元老院のやつらのねとついた会話が風に乗って聞こえてくる。
『ああ、やはり黄金裔はオンパロスに不要な存在!』『そうだとも!火追いの旅も即刻やめさせるべきだ!』――ここに二人揃っていることには気づいてもいないのだろう、手すりから下を軽く覗き込んだモーディスは、フン、と不満げに鼻を鳴らした。
「災厄のタイタンを継ぎしものとして、多少の迫害に位は慣れておけ。耐えられんぞ」
「はいはい、アドバイスどーも。
でも別に、あたしはそういうの慣れてるし。なんなら今のが詭術の名がある分マシだし」
………?」
「?」
モーディスが首を傾げた。あたしも首を傾げる。
ドロス人として生まれ、泥棒の烙印と共に生きてきたあたしにとって、自分に向けられる罵詈雑言は日常茶飯事だ、彼の言う通り、自分なんぞに向けられる言葉はそよ風と同義だ。
反応が予想外だったのか、モーディスが僅かに瞠目する。
……何だ、あいつらの囀りはお前に向けられたものではないのか?」
「じゃないけど」
「では誰の――」訝しげに腕を組んだモーディスが、
『全く、あの金織は、一体女のくせをしてどうしてああも出しゃばるのか!』
――聴こえてきた雑音に不意に口をつぐむ。
――ああ」
途端浮かぶ、どこか和らいだ眼差しに、あたしは、ぎ、と目の前の筋肉ライオンを睨みつける。
「何、違うけど」
「喚くな。何も言っていないだろう」
「ちーがーうーけーど!」
「ハァ……分かった、違う、そうだな。
まあ、お前の親しい相手が――
「親しくない知らない興味ない」
「親しくもなく、知らなく、興味のない相手が、悪しざまに言われた時の気持ちは、俺とて分かる。
だが、多少は抑えろ。いざという時の判断が鈍る」
………分かった」
強めの口調でたしなめられる。それは正論だったので、あたしは反論をせず、ボソリと返答した。――とはいえ、表層的に抑えようと、尻尾はびしびしと床をたたき続けているため、内心は丸わかりだろう。モーディスがため息を付いた。
……苛立ちを覚えた際、6秒数えると、多少は和らぐと聞く。今度、試してはどうだ」
「へ……何それ、おまじない?変なの知ってんね王子」
「以前図書館で目を通した文献にあった。理にはかなっているそうだが」
肩を竦めるモーディスとしても、試しの提案のようだった。とはいえ雑談のネタとして、気分転換には悪くない。あたしがそのうんちくに茶々を入れ、多少は気を紛らわせようとした矢先。
『全く、あの傲慢な女には早く退場いただかなくてはな!これ以上邪魔されてはかなわんよ!』
――二人の間に沈黙が下りる。気遣うようなモーディスの眼差しを受けつつ、あたしは、大きく息を吸い、吐き、もう一度吸い、
――いちにーさんしーごーろく!」
…………効果はどうだ」
「めっちゃキレそう」
「そうか……
モーディスが遠い目をした。あたしは、悪くない。