ろころころ
2025-11-27 03:46:34
4129文字
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安寧キャンセル界隈


「一切誰とも交際しなかった貴方が、あの子フロウと付き合うなんて。……どういう風の吹き回し?」
……交際?」

夜のジーヴルシティは昼の穏やかな空気とは一変、ルガルガンの如くディープな空気を纏う。

隣に許可も取らずに座ってきたグロリアはワイングラスを傾けていたが、酒好きでは無いリグはめんどくさいなと顔を顰めた。
リグが酒を好まない理由は単純で、特に飲むメリットが無いから。小さい頃から酒と限らず、毒やら何やらを飲まされてきたリグには身体に異変を起こす液体に対する耐性がついている。よって、酒を飲んでも他の皆のように気分が良くなることも無いので、彼にとってはただ値段が高価なだけのソフトドリンクである。

しかしこうして共に飲んだ相手は勝手に酔っ払うので、無駄に絡まれて疲弊するだけなのだ。同寮のカメックスにも張り合えるくらいの損な役割だろう。


「聞いたわよ。フロウとちゅーしたんでしょ。ちゅー!」
「うるさいですよザシアンさん。誰から聞いたんですか?」
「ツヴァイ」
「あぁ………え、えぇー………

想定外と言えば想定外だが、言われてみれば悪意無しに言いふらしそうランキングTOPに入り込むのが彼女だ。
とはいえ、元いえば恋仲なのはツヴァイとフロウの二人である。リグはどちらかといえば部外者で、キスに関してはリグが毒を飲んでしまったので毒タイプであるフロウに吸い出してくれと依頼した結果なのだが。無論、報酬は支払った。否。支払ったというよりは、フロウにとっては恋仲であるその少女を、趣味悪い同族から庇った貸しへの帳消しで手を打ったという方が正しいだろう。

「で、どうなのよ?」
「残念ですが、我々はそのような関係性では御座いませんので悪しからず。誠にソーリー」
「嘘よ」

はぁ?とリグは笑顔を貼り付けたままキレた。なんだコイツ。変な酔っ払いに絡まれたものだ。女性の何がなんでも恋愛に繋げたがる頭にキュワワーを乗せてそうな思想は、リグに取って理解し難いものだ。いや、リグと限らず多くの男性はそうだろう。他人の関係性なんてどうだっていいだろうに、何をそんなに気になるんだか。……まぁともかく面倒なので、ここは退散しよう。


「埒が明かない会話は嫌いです。私は帰ります。お代はここに置いておくので、貴方は一人寂しくミルクでも啜っておいてくださ
「────ユピテルが、言ってたのよ」
「はぁ?何をですか」

ユピテル。エオス島の選手のサーナイトだ。
リグはあまり関わることはないが、グロリアは定期的に中庭で開かれる女子会に顔を出しているので、関わる機会が少なからずあるのだろう。
……その彼女が、どうしたって?

……フロウと一緒にいる時の貴方は、心が落ち着いているのだと」
………………
「確かにそうよね。最近、彼といる時の貴方は必要以上の刺激を求めない。それは、落ち着くからでしょう?刺激で心を麻痺させて、寂しさを紛らわす必要が──────」
「ザシアンさん」


"それ以上言ったら殺します"


リグは冷たい笑顔を浮かべながら、グロリアに対して殺意を向けた。

冷えきった空気に、グロリアは溜息をつく。
リグは今度こそテーブルに代金を置くと、マントを翻して立ち去った。