【巡直】お覚悟

【超巡!超条先輩】ふせったーとぷらいべったーから巡直の話を二つほど。
一つ目→いい子と揶揄されて不貞腐れるポンちゃんの話
二つ目→最終話のあとの、話です…私の週一の楽しみが……

お覚悟




 常日頃やんちゃな小学生たちに混じって遊びに興じ、小学生男子並みの精神年齢全開で大人げない数々の行為にもいい加減に慣れてきた。
 「はーい、行きますよ先輩」
 勝負に負けた小学生たちを全力で煽り散らす超条の首根っこを掴み巡回再開する一連の動作がいよいよもって体にしみ込みつつある。一本木は遠のいていく超条を罵倒する小学生たちの声と、未だ口汚い捨て台詞を吐き続ける上司の声を背中越しに聞いている彼女の目はもはや多くは語らない。

 幼い罵詈雑言が聞こえなくなったのを見計らったように不意に超条が履いている革靴の踵部分で線路を描いていた音がやにわ消え、一本木の手首に黒皮手袋に覆われた手が軽くタップした。
 「自分の足で歩く」
 やや不貞腐れた声に促されて掴んでいた首根っこを離せば、わざとらしく首の痛みを訴え擦る超条に一本木がむんっと腕を組んだ。
 「ったく、いい子ちゃんはこれだから困るぜ」
 「いい子ちゃんって、私たち警察官ですよ? 市民の平和を守る警察がいい子なのは当たり前じゃないですか」
 「へいへい、いい子いい子。一本木は偉いでちゅね~」
 「もうっ。からかわないでくださいっ」
 握った両拳を胸の前で上下に振って遺憾の意を表す一本木を指差してケラケラ笑う超条に彼女の頬が膨らむ。
 正直いい子って褒められる歳を卒業した身として恥ずかしくもあるが嬉しくもある。が、何よりまだまだ子供扱いされている気が否めない。軽々照れを上回る向かっ腹が、追い抜きざまに肩を軽く叩いていく黒い皮手袋の感触に溢れ返った。
 目にも留まらない速さで超条の襟を掴んだ一本木が豪快に彼を押し倒して上を取った。
 「せ
 「せ?」
 「先輩投げ飛ばして上を取った私はいい子じゃなくて……、悪い子、です
 「いっつー。急に何すん、──あー
 超条はバツが悪そうな顔で頭を掻いた。読心術を使わなくとも分かる目蓋に愛嬌のある目を半分隠した困り眉顔。血色の良くなった頬と襟首を掴んでいる手の震え。
 子供の癇癪にしては些か背中の痛みを無視するのが難しいものの、相手を見返してやりたい気持ちを無碍に出来るほど超条は悪い大人ではない。
 しんしんと一本木の心に降り積もる雪をそっと払う不器用な黒い手が素知らぬふりして彼女の頭を撫でつつ、半身を起こした超条は出そうになった溜息を嚥下した。