めやぬら
2025-11-24 23:27:06
11158文字
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ハロウィン

ニキひい。
以前公開していたものの完成版。
見たかったのは、ニキの対一彩と対燐音と対ほかの人の温度感の違いだったんですけど、迷走しました。
ニキひいは3ページ目だけです。


 
 可愛らしくも華やかに飾り付けられたイベントスペースには、たくさんの魑魅魍魎がいた。ニキも例に漏れずモンスターの一人になりすまして、用意されていたお菓子のカゴを受け取る。中には、イベントに来てくれた人へ渡す用のお菓子。ニキが作ったやつよりももっと事務的だけれど、包み紙にはそれぞれのアイドルのマークやロゴが入っていて、ファンにしてみたらとても嬉しいものなんだろう。
 そのうちの一つをつまみあげ、裏表に返して眺めてみる。
 
「やっぱ蜂の巣なんすねぇ、僕らは」
「なンだぁニキ。不満か?」
「うわっ」
「うわとはなんだよ、ワンちゃん」
「犬じゃなくて狼!」
「見えねェ〜」

 Crazy:Bらしい模様を眺めていたら、吸血鬼の仮装をした燐音に肩を組まれた。ニキは余ってた狼男の仮装だけれど、燐音は割と当たりくじを引いたようだ。すらっとした長身にマントは映えるし、気障ったらしい首のヒラヒラがよく似合っている。主に胡散臭さが似合ってる。
 そんなことを言ったらこのままチョークスリーパー待ったなしなので、そこには突っ込まずに首を振った。

「不満じゃないっすよ。でもせっかく蜂なのに、中身ははちみつ味でもなんでもない普通のクッキーなんでしょ。面白みないなーって」
「キャハハ!ニキも分かってきたじゃん。まァ今回はしゃあねェわ。包装だけでもユニット別になってンだから、十分っしょ」
「そんなもんすか」
「そんなもんそんなもん。あんま気乗りしなかったけど、割と人も来てるみてぇだし、結構楽しいねェ」
「ふぅん……

 燐音は本格的な仮装と人入りでやる気が出たようだ。ニキはというと、余ったら持って帰って良いと聞いたからやる気はあまりない。適当に歩いて、あの決まり文句を言われたら渡せば良いや。そんな感じだ。よほど相手が嫌な奴とかじゃなければ渡し渋りはしないけど、余ったら嬉しい。

「あ、そーだ。おいニキ」
「なんすか?」
「トリックオアトリート♡お菓子よこせ」

 にっこりきれいに笑って手のひらを差し出す吸血鬼は、あんまりにも可愛くない。お菓子頂戴リクエストの例外が初っ端に来て、盛大に顔をしかめた。

「なんかちがう!」
「っせェな、キャンキャン言うなよ〜!どうせお前、作る専門・配る専門だろォ?寮でもなんかやってたって証拠は上がってンだよ。っつーわけで、ガサ入れだァ!」
「きゃん!ちょっと!勝手にポケットに手突っ込むな!」

 有無を言わさずに衣装の上着のポケットをまさぐられる。そこには、お腹が空いたらつまもうと思って、寮で作ったお菓子をいくつか忍ばせていた。用意してくれたお菓子をうっかり食べちゃわないようにという気回しは、燐音に台無しにされてしまった。

「おーあったあった!二個か、しけてンな」
「お、追い剥ぎ!」
「人聞き悪ィこと言うなよな。んじゃ貰ってくぜ〜、ハッピーハロウィ〜ン」
「何がハッピーだ!」
 
 じたばたと拙い抵抗をしたが虚しく、燐音は二つほどかっぱらってサッと離れる。思ってもないようなことを言って颯爽と去っていく後ろ姿は機嫌よさげで、余計悔しさが煽られる。
 思いのほかあっさり離れてくれたのは良かったが、非常食がなくなってしまったので少し不安だ。さっさと配り切って帰るか、途中途中人にお菓子をねだるか。ぎっちりお菓子が詰められたカゴを見つめてちょっと考える。
 さっさと配りつつ、ハロウィンを口実にして色んな人から貰っていこう。そう決めて、コウモリをあしらったカゴを手に、割り当てられた場所へと向かった。

 ―――

 仮装を脱ぎ捨て、余ったお菓子をいただきながら寮に帰り、一目散に向かったのは朝からニキの根城と化していた共有キッチン。
 出る前、大量のお菓子を入れたカゴに『ご自由にどうぞ 椎名』のメモを貼っつけて出てきたけれど、成果はどうだろう。配給品の余りのクッキーを咥えて入口を覗き込んだら、そこには見覚えのある姿が二人、袋を手に取ってなにやら談笑していた。

「あれ、守沢くんと羽風くんじゃないすか。なにやってんすか?」
「椎名!このお菓子、お前が作ったのか?」
「そうっすよ。お~、結構なくなってますね~」

 置いていたカゴの中は、もう残り数える程度。どうやら好評だったみたいだ。自分が作ったものだから誇らしい。千秋は明るく笑って、残ったもののなかから一つ手に取っていた。

「見かけた子は取って行ったみたいでな。高峯と仙石の感想を聞いて、俺も食べてみたくなって来てみたら、羽風がいたんだ」
「あはは……俺は噂を聞きつけたクチだけどね」
「噂って、お菓子屋さんのこと?」
「お菓子屋?それは知らないけど、『寮で椎名くんがお手製のお菓子配ってる』って、結構噂になってたよ〜」
「配ってはないんすけど……まあ勝手に持って行って~って置いてたから、配ってるみたいなもんなんすかね」

 よく見たら、薫の手の中にもいくつか袋がある。別に一人一個というわけでも無いので複数持って行くのは構わないのだが、それが全部チョコレートが入ったものなのが気になった。

「それ全部持ってくんすか?別に何個持ってってもいいんで単純に疑問なんすけど、一人で食べるには多いと思いますよ」
「流石に全部食べるつもりじゃないよ。チョコのお化けのデザインがちょっとずつ違ってて可愛いってもりっちに言ったんだけど、よく分かんないって言われちゃって、力説してたんだ」
「う……いや、全部可愛らしいと思うぞ!ただその、微妙な違いに気付けていないだけでだな」
「何言ってんの、こっちの子はお目目ぱっちりで、こっちはちょっと伏し目でしょ!ねえ椎名くん」
「な、なはは~……正直、製作過程でちょっとずれただけなんで、意図はしてないっていうか……
「それでも違うの!」

 これだからもりっちは、という薫はまさかちょっとした表情の違いも見て選ぶつもりなのだろうか。かなり無くなったお菓子は残り十個くらいだから、全部デザインを見たうえでも選べるんだろうけど、見た目はニキが思っている以上に大事らしい。
 
「気に入ったのがあれば持ってっちゃってください。なんなら、ユニットとか部屋の人の分まで持ってっていいっすよ」
「え、い、いいの?椎名くんが作ったやつなら美味しいし有難いけど……
「そうすると無くなってしまうぞ?いくらここに置いているからと言って、俺達で残り全部取ってしまうのは申し訳ないな」
「いいっすいいっす、気にしないで!元々ハロウィンに便乗して作ってみただけなんで、楽しんで食べてくれる人が食べてくれるのが良いんすよ。半端に残っても僕が食べるだけですし」

 もちろん、千秋だってしっかり手に取っているのだ、興味がないわけじゃないはず。残っても僕が食べるだけで困りはしないけど、せっかくなら全部なくなってくれたほうがすっきりする。
 本当は一彩に渡したかったし、食べてほしかったけど、無理に食べさせるのはただの強要だ。これはニキが勝手にやけっぱちになって勝手にやったことで、一彩に何一つ非は無いし、悪いところもない。皆が喜んで取ってくれたらいいなと思って置いていたのは事実だ。

「そういうことなら、UNDEADの皆の分貰っちゃおっかな」
「俺も衣更たちの分をもらおう。実は、結構楽しみにしていてな。ありがとう」
「どうぞどうぞ!ちょっと多いかもっすけど、皆で分けて食べて欲しいっす」

 二人とも、残ったものを半分ずつくらい取っていく。今日はお菓子づくしだと思うが、ニキからのハロウィントリートということで許して欲しい。
 薫はちらっと時計を見た。たしか、これから夜の部の参加枠があったはずだ。それに当たっているのかもしれない。
 
「それじゃ俺そろそろ行くね。椎名くん、ありがとう」
「はーい、はっぴーハロウィーン」
「あはは、適当すぎない?ハッピーハロウィン〜」

 ひらひらと手を振って出ていく薫は、一体なんの仮装をするのだろう。不死身のユニットらしく、ゾンビとか?二枚看板の片割れとして、吸血鬼とかでも似合いそうだ。

「守沢くんはなんの仮装したんすか?」
「俺か?俺は狼男だ。結構好評だったぞ」
「へ〜、僕と同じっすね」
「そうだったのか!ぜひ見てみたかったな……と、悪い。何か用事があってここに来たんだろう。引き留めてしまったな」
「へ?あぁ、お菓子の様子見がてら、晩ご飯食べようと思って。そうだ、守沢くんもご飯まだなら一緒にどうすか?良ければ作りますよ」
「え、いや……お菓子までもらって夕飯までいただくのは申し訳ない」
「まあまあ、遠慮せずに〜」