保科
2025-11-22 16:06:48
3355文字
Public スタレ
 

災厄組、パンケーキを食べる

現パロ(学パロ) 連ツイで投げてたやつをまとめて地の文加筆しました 

細々描いてる現パロ災厄組と同軸で、2年の🐈‍⬛と🦋、1年の🍷の3人です(キャスだけ記憶ない) まあでもそんな裏設定特に関係ない パンケーキ食ってるだけだし

……サフェル先輩、キャストリス先輩。
悪いが、今から付き合ってくれないか」
放課後。帰り支度をしている最中、後輩くんが呼んでるよ、とクラスメートに声をかけられたサフェルとキャストリスが廊下に向かうと。そこには腕を組んだモーディスが立っていた。――ただ立っているだけにも関わらず、とても一年坊とは思えない圧だ。ギャラリーが何事かと遠巻きに推移を見守っている。
――はい。モーディスさんの頼みとあらば」
「いや早っ」
そんな中、頼みの詳細も聞かず、即座に頷いたキャストリスに思わずツッコミが出た。お人好しすぎやしないかと少々心配だ。
「助かる。サフェル先輩は、難しいか」
「え、あー……
サフェルも幸いにして今日は用事もない。断るつもりもなかったのだけれど――それはそれとして。
……いや、いいけどさあ……
と、少々歯切れ悪く辺りを見渡す。ひそ……ひそ……と聞こえてくる噂声は、堅物イケメン1年生が2年の女の先輩を誘ってることをささやき合っていて、明らかに悪目立ちしていた。居心地が悪すぎるし芳しくない。
……詳しくは説明してくんないの」
「してもいいが、廊下で時間をとるのは通行の邪魔だ」
………
その良識があってどうしてこの誘い方になるんだ、と思わなくもなかったが――まあいい、クレムノスの王子の実直ぶりはサフェルとて前世から身にしみている。
白旗を上げるように両手を挙げれば、頷いたモーディスは「玄関口にて待っている」と一言告げて踵を返す。キャストリスが不思議そうにつぶやいた。
「モーディスさん、一体どうしたのでしょうか……
……引きこもり姫、とっとと行くよ」
「え?あ、はい……?」
このまま留まって質問攻めにあうよりかは、離脱を選んだほうが賢明だ。



「ええと、モーディスさん、もうすぐですか?」
「ああ、この辺りのはずだが……おいサフェル、あまりフラフラするな」
「はいはーい。随分歩かすじゃーん」
まあ王子がわざわざ声掛けるならよっぽどの理由があるんでしょ、と、サフェルも早々に覚悟を決めた。何千万回繰り返した間柄、こうなれば一蓮托生だ。
時折モーディスに首根っこを掴まれつつ、何も考えてなさそうなキャストリスと共に歩き続ける。
度々立ち止まってはスマホとにらめっこするモーディスに続いて、電車に乗って2駅ほど進み。そこから十数分ほど歩いて――たどり着いたのは。
「わあ……素敵なお店ですね!」
……ええ、ここ?」
「手間を掛けたな。――構わん、何でも頼め」
看板に掲げられたハニーパンケーキの文字。可愛らしい木目を基調とした内装。女性ばかりの店内――堂々と座るモーディスの向かい。
「いや、よっぽどの理由これ!?」
思わずサフェルが声を上げても、さて、賑わう店内では特に目立ちはしなかった。SNSで人気のパンケーキ店であった。
「なんだ緊張して損したぁ……
「そう身構えるような誘い方はしてないはずだが……
ズルズルと机に突っ伏すサフェルを見ながら、モーディスが不満げに鼻を鳴らす。
「その、少し驚きました。モーディスさんは……こちらのパンケーキを召し上がりたかったのですね」
サフェルの隣、メニュー表を手に取って瞬くキャストリスに、モーディスは頷いた。
「ああ。前から目をつけていたが、俺がこういった店舗に一人で訪ねると……どの店でも、店員を含め店内を萎縮させてしまうようでな」
「それは……
「そりゃまあねえ」
思わず顔を見合わせる女性二人に、モーディスはゆるく息を吐く。
「そういう訳だ。
構うな、俺の驕りだ」
「あ、ありがとうございます……
……そ?ま、そういうことなら甘えちゃおっかな〜」
モーディスが見ていたメニュー表をひょいと持ち上げると、サフェルはパラパラとめくって。
「んじゃ、あたしこのベリーのやつ!ライオンちゃんは?」
……俺は最初から、一番シンプルなハニーパンケーキと決めている」
「なるほどねぇ、マジで楽しみにしてたんじゃん。姫は決めた?」
え!と、振られたキャストリスが素っ頓狂な声を上げる。
「え、ええと待ってください、アイスのも良さそうなのですが、チーズクリームもまた……
……………
気のないフリをしていたモーディスが、す、と彼女が眺めるページを徐にめくる。
……キャストリス。隣のページにはワッフルもあるぞ」
「わっふる!?!?!?」
「王子これ以上混乱させるのやめな〜?」



「こ、これは……!これは……!」
キャラメルハニーパンケーキをご注文のお客様、と呼びかけられたキャストリスが振り向いてからというもの――その可愛すぎるパンケーキのビジュアルに衝撃を受けたのか。キャストリスはスマホを構えたままフラッシュを焚き続けている――ベリーのパンケーキにナイフを通したサフェルが思わず苦笑する。
「わーお。……引きこもり姫がパンケーキの写真を撮り続ける妖怪になっちゃった」
……エイジリアの民が見たら随分愉快だろうな」
「いや、それ言ったら今のあたしらオンパロスの誰に見せたとて権威失墜免れないでしょ。……あ、すみませ〜ん、取り皿ください。はい、一枚で」
肩をすくめながら、通りかかった店員から皿を受け取るサフェルを、モーディスか訝しげに眺める。
……?何か使うのか」
「ん?ほら、今日の主賓はあんたじゃんライオンちゃん。遠慮せずにこのベリーパンケーキ1口食べなよ……っと」
サフェルが、自分の注文分を四分の一ほど取り分けて皿に乗せてやると、何故かモーディスが険しい顔をする。
……何も払えんぞ」
「は?いや、こっちが奢ってもらう分際で何を要求するのさ。いーから、この味も気になってたんでしょ?」
来る前から注文が決まっている奴がわざわざメニューを見る理由なんて、そんなところだろう。図星だったのか、モーディスがふいと目を逸らす。
「目敏いな。……貰うが、本当に、いいのか」
……あたしってそんな信用ないかね?」
鼻白むサフェルに、我に返ったらしいキャストリスが、ふふ、と小さく笑いながら口を挟む。
「それは、その、やっぱりサフェルさんですし……あ、モーディスさん、是非私の注文したこちらもどうぞ。キャラメルです」
「すまん。……恩に着る」
ベリーパンケーキの隣に乗せられた、同じくらいの大きさのキャラメルパンケーキに、モーディスが瞬くと頭を下げる。いえ、と穏やかに笑うキャストリスとのやりとりを眺めたサフェルが、ねえ、と口を挟んだ。
……あたしにもそのくらい素直に礼を言って欲しいもんだにゃ〜?」
ジト目のサフェルと正面から見つめ合って。モーディスは愉快そうに破顔した。
「フ。大義だ」
「うわムッカつく!久々に見たあんたの偉そうな所!」
「ふふ。早速食べましょう……
キャストリスの声かけに、さて、手を合わせて――




「いやー、美味しかった!やっぱ甘いものっていいわ」
「ああ。……レモンシュガーも気になったな。やはり食べておけばよかったか」
「えー王子って酸味系もイケる口だったの?てかそれ言うならナッツ系統も美味しそうだったけど。
ほら、焦がしバターのヤツ、隣の席の人頼んでたじゃん?」
「フン……悪くないチョイスだな」
日も暮れ始めた頃合い、店を出たサフェルとモーディスが口々に言い合うのに、キャストリスがクスクスと笑う。
「何、どしたの姫」
「いえ、今日はとても希少な体験をさせていただたいたな……と。モーディスさん、サフェルさん、是非、また来ましょう」
―――……む。いや、俺は……
「?」
面食らった様子のモーディスが、口ごもる。今日はモーディスの都合につき合わせただけだ。キャストリスが来たい時、モーディスを伴う必要があるのか、と――口を開こうとして、サフェルが横腹を肘でつく。ジロ、と睨み上げる視線に言葉が重なる。
「王子、意地悪やめな」
…………
そんなつもりはないのだが……気まずさに頭を掻きつつ、モーディスはため息をついた。確かに、誘いを断る理由としては、不十分だ。
サフェルがにや、としてやったりに笑った。
…………そうだな、また来よう」
「はい!」