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保科
2025-11-21 15:52:24
1965文字
Public
スタレ
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みやぶる
次のターンは攻撃が通る/ゆるアグサフェ どこかの永劫回帰にて
「オクヘイマの案内、本当に有難うございました、金織様。
その
……
貴女様のお陰で、私も、この街で楽しく暮らしていけそうです
……
!」
「ええ
――
それは何よりです。
どうか、この場所が、貴女にとって第二の故郷となりますよう」
アグライアが、暗黒の潮により故郷を失った、という女性が路頭に迷ったのを見かけたのは偶然だった。彼女の相手で困り果てた衛兵の青年を見かねて、というところもあったけれど。
警護を申し出てくれた衛兵と女性を連れ、アグライアは暫く辺りを案内していたのだ。
女性が頭を下げるのに深く頷くと、ではまた、と軽く手を振った。
「は
……
はい!
あの、衛兵さんも
……
有難うございました!」
「俺は大したことは何もしていませんよ。どうぞ、お元気で」
何度も頭を下げつつ、浮かれた足取りで歩き去る女性を見送った後、彼女の街案内に付き添っていた衛兵も、一歩前へ出る。
「それでは俺も、ここで失礼します。いい時間を過ごせましたよ」
頭を下げるのに、アグライアは再度頷くと
――
「ええ。
――
貴女も満足しましたか?セファリア」
「
……
。
――
あー、バレてたんだ?」
す、と顔を上げた時には、すでにその身体には鎧も、手元には槍もなく、普段通りの出で立ちの詭術の半神
――
サフェルが立っていた。困ったような笑い顔で、手持ち無沙汰に自分の尻尾をつまむ。
「なーんだ。つまんないの、折角だからビックリさせようと思ったのに」
「つまらない、などと。
気づいたときは本当に驚きました
……
心臓に悪いでしょう」
「はー?これっぽっちも表情変えなかったくせに〜?」
ぶう、と口を尖らせたサフェルが、近くの石に乱暴に腰かけた。
「それで?」
「はい?」
「なんであたしだってバレたの。後学のために教えてよ」
金糸にバレないよう細工はしてたんだけど、と、投げやりなサフェルの問いかけに。アグライアは顎に指先を当て、そうですね
――
と、呟いた。
「
……
バルネアの案内をした際に。隅の小型のピュエロスについて、ここの湯は熱めだと、あなたは相槌を打ちました」
「あー、うん。
……
したねえ?」
「ですか、それは300年以上前の話なのですよ」アグライアは悪戯が成功したかのように、くすり、と楽しげに微笑む。
「熱すぎる、という投書がディアディクティオに多くあったことから、ぬるま湯に変更されて長く経ちます。
その時点で、普段ピュエロスに近づくことのない人であること
――
つまり、良くバルネアを利用してくれている、彼本人ではないと察しました」
「
……
だー、そもそも誰になりすましてたのかまでバレてたのかあ。
知ったかってよくないわ〜。流石金織サマサマ?」
「後はもう、連想ですね。『当人そのものになり済ませるほどの詭術の才の持ち主』、この時点でもう、心当たりは一人しかいませんが
――
『近年オクヘイマに近寄らず、また、ピュエロスに苦手意識がある』
――
ほら、貴女です」
アグライアの、さも簡単と言わんばかりの態度に。む、と顔をしかめたサフェルは、はいはい!と威勢よく手を挙げる。
「後もう一個追加!」
「なんでしょう」
「『あんたのつまんないバルネア案内に律儀についてくかわいい猫ちゃん』!」
「酷い言い様ですね。彼女は楽しんでくださっていましたよ」
「観光案内はエンタメが大事だってのに、やれ歴史だのお湯の効能だの嫌になっちゃうよ!
あれにキラキラお目々向けてたあのお嬢ちゃんが特殊なだけだって」
はぁあ、とため息混じりに肩をすくめたサフェルは、呑気に軽く伸びをする。誰かになりすますのは、やっぱり肩が凝るものなのだ。
「
……
まーいいや。見たかったものも見れたし、あたしも、満足〜、っと!」
「
……
見たかったもの
……
?」
アグライアが小首を傾げる。彼女の言う通り、アグライアがしていた案内の中には、お宝であったり伝奇であったりを好む、彼女の好きそうな話はなかったはずだが。
よいしょ、と立ち上がったサフェルが、意図を見抜けず困惑するアグライアを愉快そうに眺める。
そうして、徐に手を持ち上げると
――
アグライアの眉間へと、ずびしと指を立てた。
指先で押されて盲目の瞳を瞬かせるアグライアに、サフェルは、にま、としてやったりな顔をする。
「
――
眉間にシワの寄ってないあんたの顔」
「
―――
」
「んじゃあね、金織様。息抜きも大事なんだから
……
。
精々この後もお仕事頑張んなよ」
手を一つひらりと振って、サフェルは振り返ることなくさっさと姿を消した。
残されたアグライアは、傷む額を抑えながら、小さく息を吐く
――
「
――
心配するなら、そう言ってくれればいいでしょうに
……
」
その声は誰に届くこともなく。もう、と少し拗ねたようなアグライアのつぶやきだけが、その場にひとつ残される。
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