保科
2025-11-10 01:00:44
1839文字
Public スタレ
 

拝啓、キメラを飼い始めました

サフェキャス ver3.7ちょっとネタバレ キャスさんがメッセくれたの嬉しかった

「じゃあ姫ってば、本当にキメラ飼い始めたんだ?」
「はい。その、以前からの願いでしたので……
頷くキャストリスの視線は、忙しなく庭園を駆け回る2匹のキメラに向けられている。
キメラを飼い始めましたので、よければ見に来てくださいませんか――そんなメッセージを受け、サフェルはキャストリスの下を訪れた。
キメラは賢い生き物だ。リードや柵等がなくても基本的には住処や飼い主のそばを大きく離れることはない。……と分かっていても心配は心配だろうし、それ以上に、飼い始めたばかりで可愛い盛りの二匹を見ていたいのだろう。
サフェルはそんなキャストリスの態度を微笑ましく思いつつ、同じように視線の先へと目を向ける。
「でもさ、初めて生き物飼うのに二匹ってなかなか思い切ったね?大変じゃんやっぱ」
「そうですね……ですが、一匹だと、さみしい思いをさせてしまうと思いまして。
……少しばかり思い切ってみました」
「ふーん。ま、良い配慮だと思うよ。
一匹ってのはさみしくなっちゃうもんね〜」
どことなく実感がこもった言い回しは双方無意識のものだったが、それを見抜いたのか――単に、飼い主が話している相手が気になったのか。ぽてぽてと、サフェルのところへと駆け寄ってきた片割れのキメラを撫でてやれば、くすぐったそうにしながらもその手に顔を押しつけてくる。随分人懐っこい、これならキャストリスも飼いやすいことだろう、とサフェルは密かに安堵する。気難しいキメラもいるというのは、以前開拓者から聞いていた。
そんなサフェルとキメラの様子に、――揃った様子でピコピコゆれる四つの耳に、キャストリスは思わず、笑みをこぼした。
「そうでしょうか。ふふ……サフェル様にそう言っていただけると、なんだか安心感がありますね」
……ねー。ちょっと引きこもり姫さ、もしかして、あたしのことペット枠に入れてない?」
言外にそんなニュアンスを感じ取ったサフェルが睨めば、そんなことはありません、とキャストリスは焦った様子で首を振る。が、その視線が頭上の耳に行ってるのは見逃さなかった。ドロス人の見た目がそうさせるのか、なんだか妙に聖獣やら大地獣やらと相性が良さそうと思われがちだったりする――サフェルはため息混じりに、意趣返しのつもりでキャストリスを指さす。
「あたしなんかより、あんたの方がよっぽどキメラっぽいでしょーが!」
「え。……わ、私が……ですか?」
「そうそう。そうやってぽけっとしてる顔とかそっくりだっての。ふん、マイペースぶりなら案外負けてないんじゃない?」
「えっ、そうでしょうか……?」
考えたこともなかった言葉だ。戸惑うキャストリスに、サフェルの下を離れ、歩み寄ってきたキメラが甘えるように体擦り寄せる。抱きかかえると、キャストリスはしばしその顔を眺めた。
「がうー?」
ぱちぱち。丸い目を瞬かせながら、キメラがどうしたの?というように鳴くのに、似ていますでしょうか、と考えつつ――不意に顔を上げて、サフェルを見た。
その視線に、少し気まずく思いながらも、サフェルは用があるのかと億劫げに口を開いて、
「何さ、文句なら言ってみなって――
……が、……がおー……?」
―――
――キャストリスが、鳴いた。サフェルが、目を丸くして黙り込む。
……………
…………えっと。似てる、と、仰られたので……
……その、あの、すみません……
ちょっとした、冗談のつもりだったけれど。
てっきり何それ!と笑ってくれると思っていたサフェルの無反応具合に、気恥ずかしさが増してきて、キャストリスは小声で謝罪を入れる。
しかし、口元を押さえたサフェルは、じっとキャストリスを眺めながら、んん……と小さく唸るばかりだ。その時間が長く続くものだから、どんどんいたたまれなくなってきて。空気の重さに耐えきれなくなったキャストリスは、とうとう、くい、と彼女の袖を引いた。
「さ、サフェル様。あの、何か仰ってはいただけませんか……
「え、あ、うん。可愛い」
彼女らしからぬ真顔で口にされて、――予想だにしない言葉に、キャストリスの頭が真っ白になる。
……可愛い」
「うん、めっちゃ可愛い。まーじで可愛い。ね、後十回くらい見たいけどいい?がおーって」
「十回くらい」
「てゆーか姫って飼うことできる?」
「飼う」
鸚鵡返ししかできなくなったキャストリスの手元で、あうー、とキメラが退屈そうに鳴いている。