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しろくまたたくはくしゅんさん
2025-11-03 17:46:43
5388文字
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【00 殺マリ】歩いて帰ろう
刹マリ 約5千字
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「ん、
……
んん
…………
」
クッション性はあるがやや硬い質感。手を伸ばせば、冷たい感触が指先に触れた。
「うん
……
?、────っ!!」
彼女は驚きで叫びそうになる口を咄嗟に閉じ、両手で塞いだ。
(刹那?!どうしてここに?──いえ、そもそもここは
……
──)
コックピット脇のわずかな隙間に納まり毛布にくるまっている刹那を傍目に、マリナは視線を動かす。薄暗いが、大量に並んでいるボタンやスイッチ、レバー、ペダルにパネルの数々が見え、彼女は察した。
(これが、ガンダムのコックピット
……
。間違って触らないようにしなきゃ)
ブリッジの制御解除やガンダムマイスターの音声認識によってのみ操作が可能になるのだが、機器に対しまったくの素人であるマリナは身を縮める。それから、隣の刹那を見つめた。
(眠っていると顔が幼く見える────そもそも彼は何歳なのかしら?)
互いに知っている情報はあるが、刹那の年齢を定めるには少なすぎる。少なくとも、マリナのほうが年上であるのは確かだ。
寝顔を眺め、それから視線をゆっくりと前に戻す。
(これが、刹那の見ている景色
…………
)
ヒトの何倍もある機体。そして、どうやって使うかわからない操作機器の数々。操縦しているからにはすべての位置と意味を把握し動かしているのだと理解し、マリナは視線を落とす。
(私ではとても無理。戦いは嫌だけれど、乗っている人たちの努力は尊敬に値するわ)
体を縮め過ぎたらしい。マリナは急に体の窮屈さを感じた。おそるおそる体を伸ばし、リラックスするように深く呼吸をする。その中に匂いが混じると、マリナは視線を隣の刹那に注ぐ。
(不思議だわ。幼い頃から戦いに身をささげているのに、刹那からは弾薬や血の匂いがしない)
香を焚いているような性格には見えないが、凛と咲く花の香りがする。毛布から、座席から、眠っている彼自身から。
(あ、)
起きる、と彼女は呼吸を止めた。まつ毛を震わせ薄い瞼から現れたのは、夕焼けの名残を閉じ込めたような赤茶色の瞳。
「──
……
、マリナ、イスマイール。起きていたか」
起きたばかりの掠れた声。以前よりも低くなった声に、マリナは反応する。
「おはよう、刹那。そして、席を奪ってしまってごめんなさい。──拾ってくれたのが貴方で、よかったわ」
「別にいい。症状に関しては自覚していたか」
「ええ────連邦に拘束される少し前に、ね」
彼女が夢遊していると一番最初に気づいたのはシーリンだ。一番初めの被害者とも言える。夜中に起こされ、あれこれと話すマリナに対し驚きベッドに迎え入れ、翌朝「なぜ私がシーリンのベッドに?」と問うマリナに夢遊病に罹っていると告げたのだ。
「だから、眠るときは深く眠るための薬を飲んで、念のためベッドの足と自分の足をくくっていたの。拘束されてからは薬が無くても、個室の牢に入れられていたから誰にも迷惑はかけなかったのだけれど
……
」
部屋をあてがわれ、ベッドを前にしたときマリナは悩んだ。備え付けられた寝台にロープを括り付ける場所は無い。しかし、無重力空間を想定しており体を保定するようのベルトを見つけ「これなら大丈夫そう」と眠る前に装着した。しかしスイッチ一つで解除できる手軽なベルト式拘束具は、彼女の夢遊を止められなかった。
「そうか。後でスメラギ・李・ノリエガに相談するといい。同じ薬は出せないかもしれないが」
「ええ。そうするわ。それと、夜間の施錠も」
刹那は良い案だと肯定し頷くと、ハッチを開ける。二人で共有していた空間の空気が入れ替わり匂いが薄れると、マリナは少し寂しい心地がした。
「マリナ」
手を差し出す刹那。マリナは疑うこともなくその手を取り、一夜限りの宿を出る。エスコートされデッキに降り立つと、船が急に進路を変えた。
がく、と床がずれるような衝撃。マリナの身が前のめりに倒れる。
「っ、きゃ、!」
「マリナ!」
刹那が咄嗟に身を乗り出し、かばう。壁へ激突するのはなんとか避けられた。
「ごめんなさい、刹那!」
「いや、大丈夫だ。怪我はないか」
「ええ、ありがとう──「パパ!運転荒いです~!」『スマンスマン!みんな、大丈夫かぁ?』「──っあ、!ああーッ!!」
父親に命じられ所用で来たのだろう。ミレイナは体勢を崩し抱き合う二人を見つけある種の確信犯とも言える質問を投げかけた。
「やっぱり!二人は恋仲なのですっ!?」
「「ちがう」わ」
むう、と頬を膨らませたミレイナがそれでもあきらめずに続けた質問責めは、『いい加減解放してやったらどうだ』とイアンにとがめられるまで続いた。
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