ただ一輪だけの花

MHRウ教×ハ♀。両片想い。
ハ♀視点。

ウ教が大好きなハ♀。優しい彼はいつも人に、外から来た女性たちにも囲まれていて。


最近、高品質の、ほんのりと良い香りがする髪油を買った。

寝る前につけるとお肌に良いという、化粧水と保湿剤も買って、毎晩使うようになった。

狩猟に関する買い物ばかりの日々だったけれど、やっと、少しずつ、そういう買い物をするようになった。
たまにヒノエさんと一緒に買いに行ったりして、お化粧品のことを教えてもらったりするようになった。

毎朝、大きな姿見の前に立って、寝癖がないか、装備に乱れはないか、身だしなみを特に気を付けるようになった。

ヒノエさんおすすめのつげ櫛で髪を梳かしている間、わたしの中にはいつも、あの人の、ウツシ教官の姿がある。


──あなたは、よくわたしの頭を撫でてくれる……
 

その感触を思い出すだけで、お陽様の中にいるような、とても幸せな気持ちになれた。

幼い頃から、ずっとずっと大好きな人、ウツシ教官。

いつからか、あの人の目に、心に、少しでも綺麗なわたしを残したくなっていた。
あなたの思い出すわたしが、いつも汗だくの泥まみれなんて、嫌だから。

今も、キャンプのテントの中で一生懸命身だしなみを整えてから、里に帰って来た。

戻って来た時には、もう黄昏と夜の境目。

最近、とみに思う。私があなたに見せる顔は、いつもひどい状態だと。

汗や泥ならまだ良い方で、モンスターの返り血を浴びている時だってある。
拭いて帰って来ているつもりだけれど、あの人の目は、わたしが気付かなかった拭き残しなんてすぐに見抜いているだろう。

ウツシ教官──それでもあなたは、嫌な顔ひとつせず、狩猟から帰還した私に「おかえり!」と微笑んで、頭を撫でてくれる。

たまに両手を広げて待っていてくれて、優しくハグをしてくれることもある。

これがずっと、ずっとずっと続いてくれたらと、何度思ったことだろう。

なのに、今日も──まただ。

もう夜になろうとしているのに、集会所の露台席付近に立つウツシ教官が、里の外から来た、わたしと同じ女性ハンターさんの人だかりが、ウツシ教官の周りにできている。普段はニ〜三人なのに、今日は五人も。

きゃあきゃあと楽しそうに洒落声しゃらごえを響かせて、あらゆる方向からあの人に、『ウツシ教官』に話し掛けていた。
聞こえてくるのは「今夜お暇ですか?」だの「あなたに稽古をつけてほしいです」だの「お時間ある時にお茶でも」だの、そんな言葉が聞こえてくる度に、心がささくれる。

わたしのわがままだ。

あの人は、ウツシ教官は、わたしの恋人でも何でもない。単なるわたしの片想い。

だからこそ、視界に入れてはいけない景色だ。

わたしはあえて露台席のウツシ教官から離れた席に、集会所の出入り口に近いところに座り、卓上の湯呑み、煎茶の水面みなもと、うさ団子だけを見つめていた。

(最近……ずーっとこんな感じで、ちょっとしんどい……)

わたしだって、あの人をそんな風に誘いたい。

でも、あの人は誰よりも忙しい。

闘技大会の受付、偵察や諜報、里長代理、後進の育成に、盟友としてわたしの狩猟に付き合ってもくれる。他にもわたしが知らない任務をたくさんこなしているはずだ。

きっと毎日、とても疲れているはず。そんな気軽に誘えない。あの人の貴重な時間を軽率に奪えない。

大好きな人には、笑顔でいてほしい。ちゃんと休んで、元気でいてほしいから。


──でも……でも、本当は、わたしも……

@acadine