aka
2025-10-22 15:47:32
3874文字
Public decn夢
 

兄さんに彼女を会わせたくないhrmt

※固定主
※女性優位っぽい
※事後描写あり
※景光があんまりかっこよくない


◆side景光

「兄さんにさくらさんを紹介したいんだけど、俺の兄さんってかっこよくて綺麗で頭が良くて運動も出来て背も高くてイケボだから、さくらさんが兄さんのこと好きになっちゃうかもしれない」
「は?」
 ゼロに俺の最近の悩みを告白したところ、心底呆れたといった表情を浮かべつつも「それをそのまま青井に言ってみろ」というアドバイスを受けたので、俺は夕食を食べ終わり風呂も終わらせていつものように彼女の髪を乾かしながら恐る恐る口にしてみた。
 俺の兄さんは凄い人だ。俺が物心ついたころからずっと、兄さんはかっこよくて賢くて強い。時には厳しいけど、いつも優しいしいい匂いがするのだ。俺は八割くらい本気で、世の中のことで兄さんが知らない事なんて殆ど無いんじゃないかと思っているし、兄さんを好きにならない人なんていないと思っている。
 俺はそんな兄さんが昔から大好きだった。両親を喪って、俺を育ててくれた東京のおじさんやおばさんはとっても良い人で俺の第二の両親だと思っているけど、それでもやっぱり兄さんは特別だ。だから、そんな兄さんには一緒に暮らして想いを通じ合わせたさくらさんを紹介したいし、さくらさんにも俺の大好きな兄さんを知ってもらいたい。でも完全無欠の兄さんだから、きっと誰もが好きになってしまう兄さんだから、さくらさんだってきっと会ったら兄さんのことを好きになってしまうだろう。そうなったら、俺はさくらさんを自分の元へ連れ戻すことは出来るんだろうか。俺が兄さんに勝てる要素なんて……
「景光君」
 さくらさんの、耳に心地いいアルトの声に思考を引き戻された。すっかり乾いた彼女の黒い髪の指通りを確認してからドライヤーのスイッチを落とす。ぽんぽん、とソファの隣に座るように促され、俺はそれに従った。
「景光君は、どうやらまだ私がどれほどあなたのことを特別に想っているのか理解していないようですね」
 さくらさんの黒い瞳がまっすぐに俺に向けられている。感情が表情に現れにくい彼女はいつものポーカーフェイスで俺をじっと見つめてくるけれど、なんとなく、その黒い瞳に若干の苛立ちみたいなものが見えた気がして俺は少し焦った。
「えっ、いや、そういうわけじゃなくって」
「じゃあ、なぜそんなことに不安になるんですか?」
 彼女の指が俺の顎に触れ、俯こうとした顔を無理矢理上げられる。視線を彷徨わせながら、俺はもごもごと口の中で言い訳を並べていた。
「兄さんが、本当にかっこいい人だから……さくらさんが兄さんの事好きになっちゃったら、俺、勝てる気がしなくて」
 かっこ悪いな俺……一度不安になったら、どんどん際限なく不安要素が増して来てしまう。こんな弱音を吐く俺よりも、自信に満ち溢れた兄さんの方がきっとずっと魅力的だろう。凛とした美しい佇まいのさくらさんと兄さんが並べばきっと誰が見てもお似合いだ。
 目を逸らそうとする俺に、さくらさんが小さくため息を零したのがわかって俺の肩はびくりと震えた。情けない。呆れられたかも。どうしよう、泣きそうだ。
「景光君が何を考えているか知りませんが、私が愛しているのはあなたです。命がけで守りたいのも、手を離したくないのも、世界で唯一あなただけです」
 俺は思わず息を呑んで、目の前のさくらさんの黒い瞳を見つめ返す。彼女の瞳は先ほどから僅かもブレずに俺だけを見つめていた。
「世界一可愛いのもあなただけです」
「か、わいい……は、ちょっとなあ」
「私があなたの事をどれだけ可愛い男だと思っているか、身をもって分かってもらわないと」
「へ? あ、ちょっ……ッ」
 流れが変わってきたぞと思った時にはもう、彼女の形の良い唇に俺の唇はぱくりと捕らえられていた。有無を言わさぬ力強さで顔を両手で掴まれて、熱い舌がぬるりと捻じ込まれる。彼女からのキスなんて初めてだと気づいて、慌てて応えようと動かした舌を呆気なく絡め取られて深く吸われる。ぞくぞくッと腰が抜けそうな甘い痺れが下半身を襲い、なんでこんなにこの人キスが上手いんだよと湧いてきた苛立ちもまとめて唾液と一緒に飲み下して、ようやく離れていった赤い唇から漏れた熱い吐息が頬に触れただけでじわりと腰が重くなるほどにたっぷりと翻弄されてしまった。
「ふ……真っ赤で可愛い」
 ほとんど表情を変えることのないさくらさんが、濡れた瞳をすっと細める。甘い甘い声音が、俺のことを本気で可愛くてたまらないと思っているのだと教えてくる。ああ、やばい、どうしよう。
「ひぇ……
 馬鹿みたいに声が震えた。ああ、ちくしょう、かっこいいなこの人は。最高だよ本当に。綺麗で、かっこよくて、可愛くって。
「まだ足りない……もっともっと、私の本気をスパルタで教えてあげる」
 耳元に唇を寄せて囁かれた言葉に、ぞくんと甘い痺れが俺の体を駆け抜けた。たまらない、本当に。ごくり、と生唾を飲み込んだ俺は濡れた彼女の瞳を真正面から見返してみせる。彼女の瞳に反射する俺は、獣のように飢えた目をしていた。
「教えてくれよ、さくらさん」
 俺は可愛いだけじゃないからな。