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かろん。
7767文字
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#刀剣乱夢
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泣きたいなら泣いていいよ
#刀剣乱舞 #源氏 ※ちょっとホラーっぽい。
お試しにぴくしぶに上げてるやつそのまま持ってきてみた。
ずっと前に書いた源氏+女審神者のお話。
1
2
そのとき、
『はぁっ!!!』
一閃。
二本の刀が、同時に全く同じように綺麗な弧を描いた。
斬られたものは何だったのか。
何も見えなかったけど、白い輝きを放ちながら虚空を舞った刀は、空間を斬ったかのように感じ取れた。
現れた二つの刀に、顔を上げる。
「う
…
そ、」
最初に出たのはそんな言葉。
それに答えてくれたのは、全体的に白い印象を持たせて柔和に笑う彼。
「嘘?嘘とは酷いなあ。うちのお姫さまは」
それを受けて、彼とは対照的に全体を黒い印象で固める彼が、
「兄者。そんな軽口叩いてる暇、今はない」
早口で咎めた。
あぁ
…
。本当に。
本当に、この子たちは
…
「
…
髭切?
…
膝丸?」
私の口から薄く出た、目の前にいるその名の主は
「うん」
「あぁ」
二人それぞれ、柔らかく笑ってくれた。
「
……
っ、!!」
声にならない嗚咽と安堵で、私は全身の力が抜けそうになる。が、その前に二人が私を支えて、
「だめだよお姫さま。まだ油断しないで」
「主、すまない。まだ終わってない」
それぞれ前半は優しく、後半は鋭い声に制止されて、私は何とか足に力を込める。
それを両側で確認した二人は同じタイミングで、
「どういうつもりかな」
「どういうつもりだ」
正面。
手を伸ばしたら届くか届かないかくらいの距離に敵意、違う、これは
…
、殺意と呼んだ方が正しいのかもしれないと感じるほどの強い視線を送った。
その視線を受けてなお、平然と、ゆるりとした笑顔で真正面に立つ神刀は、喉を鳴らす。
「くくっ。凄まじい殺気だな」
……
、うちにもこの方はいらっしゃるけれど、こんなにも陰険で黒いオーラを纏っていただろうか。
同じ名前、同じ姿なのに、こうも違うものなのか。
溢れ出る悪意のようなものに足を竦ませていると、それを感じ取ってくれたのか二人とも目線はそのままに、右側の髭切が私の頭に手を置き、左側の膝丸がそっと手を握ってくれる。
「主がいなくなったときから大体検討はついていたよ」
「俺たちの目を欺いてこんな真似が出来るのは、俺たちよりも上位の者のみ」
「どういうつもりかな?」
「うちの主に何の用だ」
二人とも言いたいことは同じであると言わんばかりの息の合い方で、目の前の敵。三日月宗近を問い詰める。
問い詰められている本人は、薄い笑みを浮かべつつ
「なに。少し面白そうだったから、遊んでみただけだ」
と、その口を三日月の形に綺麗に変えた。
遊んでみただけ。
その言葉と表情にぞっとする。
ここの神様は、遊びで人を拐ってしまうのか。
「お前がどんな遊びをしようが構わないけど、うちのお姫さまにはもう一切関わらないでくれるかな」
「貴様の下賤な遊びに、うちの主を巻き込むな」
私はこの場にいるだけで、むしろ息をするだけで精一杯なのに、左右にいる兄弟は同じように敵に向かい、同じように私を守ってくれている。
対峙したときから変わらない、より濃くなった殺気が両側にあるのに、これを受けていないと言うだけで、“守られている”と支えられる腕から感じるだけで、私の両足にも自立できるくらいの力が戻ってきた。
「随分な口の聞き方だな」
未だ余裕に笑う三日月宗近は、濃くなる殺気よりも口の聞き方を咎めた。
天下五剣がどのような存在であるか、たった一言で感じ取れる。
「闇に落ちた天下五剣なんて、何とも思わないよ」
「少なくとも、畏怖するに値しない」
何の感情もなく二人とも口にしたが、その前に一瞬、それぞれが不快感を見せた気がした。
それは今二人に触れている私にだけ分かるのか、それとも相手にも気付かれているのか。
「その“主様”は随分と愛されているようだなぁ」
まぁいいだろう、と言うような顔をしてから、私へと視線を移す。
「だから何だ」
「当然じゃない?僕たちのお姫さまだからね」
「姫、か。そうか」
「そんなことより、そろそろ解放してくれないかな」
「貴様の遊びにはもう十分付き合ったはずだが」
対峙する三日月宗近は、上品に着物の袖を口に当てながら聞いてくる。
「ふむ、お前たちは相手をしてくれないのか?」
「残念だけど、僕たちにはそんな暇はないよ」
「俺たちの姫の帰りを望む者が、帰還を急かしているしな」
膝丸は、帰りを望む者というところを妙に含みを込めた言い方をした。
…
多分、うちの三日月さんのことを言っているのだろう。直感で思う。
その意図を読んだのか、ただ興味が尽きたのか三日月宗近は、
「そうか。では今回は
逃
のが
してやろう」
にがす、ではなく、のがす。
見逃してやろう、と笑う。
「姫よ」
唐突に神は、私を呼んだ。
「へ
…
、」
驚いてまもとに声が出なかったが、相手は気にしなかったらしい。
目が合った瞬間、ふわっと体が浮く感覚。
何が起きたのか理解できないうちに、私たちは目映い光に包まれた。
「
――
っ!??」
反射的に声を発しようとした私の頭に直接、さっきまで目の前にいた三日月宗近の声が響いた。
「其方の力、気を付けるがいい」
――
?
何だろう、意味を考えようと頭を動かした瞬間、浮遊感が増して眩暈に襲われる。
―
っ、
頭がぐわんぐわんと回る感覚に耐えられず、私は意識を手放した。
「ん
…
」
次に目を覚ましたのは、いつもの部屋。
本丸の自室だった。
いつも使っている布団が敷かれ、その上に寝かされている。
はぁ
…
。
深いため息が勝手に出る。
これは、安堵の一息。
ここはいつもの、私たちの本丸。
肌に触れる空気も、この布団の匂いも、何もかもがそう告げている。
良かった
…
、戻ってきたんだ。
自然と顔が緩んだとき、閉まっていた戸の外から声がかかる。
「主、起きたのか?」
「ん
…
、膝丸?うん、今起きたよ」
私の返答に膝丸は、
「待っててくれ、兄者を連れてくる」
と短く答えて、足早に部屋から離れていった。
言葉通り髭切を連れてくるのだろう。
えっと
…
、きっと話をするのだろうから、布団から出た方がいいのかな
…
などと考えていると、バタバタと廊下から足音が聞こえてきた。
えっ、膝丸が行ったのって、ついさっきじゃなかったっけ。
その早さに驚きながらも、入るよという髭切の声に、居ずまいを整えてから部屋に入れる。
入った早々、髭切は私の前に座り、両肩を掴んで顔を覗き込んできた。
「主、どこも変わったとこない?」
「
…
、ん?うん、平気だよ、大丈夫。何も変わってないし、どこも痛くない」
「本当に?」
「??、うん」
心配するのは当然なのかもしれないが、それにしても念が入りすぎてないか
…
?
そう思った私の端で、膝丸が少し落ち着けと兄を宥めた。
「兄者。ここに着いてすぐに薬研に診てもらったが、特に変わった様子もなく怪我もないのであとは目を覚ますのを待つだけだと言っていただろう」
「うん、まぁそうなんだけど」
薬研が診てくれたという説明のあとにも、髭切は落ち着かない様子だった。
それを見かねたのか膝丸が、
「印もないと、言っていたではないか」
声を潜めて呟いた。
印
…
?何のこと?
…
と、聞きたかったのだが、それを是とはしない雰囲気が漂っていた。
数秒経って髭切がその空気を壊すように、
「主が無事に戻ってきてくれて良かったよ」
とびきりの笑顔で私に抱き着いた。
「わっ
…
!?ひ、髭切!??」
さっきの雰囲気は何だったのか聞きたかったのに、私はその勢いのいい行動にびっくりして腕を回されながら固まってしまった。
腕の中で固まる私に構わず髭切は、
「心配かけたんだからこれくらい許してね」
耳元で有無を言わさぬ低い声で囁いた。
低い声は心臓に悪いのだけど、言い方で咄嗟にその意味は二つだと悟る。
さっきの話を私に話す気はないことと、今こうしているのを了承して欲しい、というかしろよ、ということらしい。
それはまぁ、鶴丸に毎回驚かされているので構わないけど。
「そのまま聞いて。主も知ってるかもしれないけど、というか知ってたから抜けてこれたんだと思うけど。
あれは神隠しと呼ばれるものだ。
…
でも、あれが本物だったらまず出てくるのは不可能だった」
「
…
?本物だったら?」
「あぁ。あれは、あそこにいた三日月も言っていた通り、あいつの遊びだ」
あいつの遊びだ。
低く呟いたその言葉には、明らかに殺意が込められていた。
その説明の続きを、いつの間にか隣に来て腰を下ろしていた膝丸が引き継ぐ。
「本物の神隠し、というか、本当にあいつが最初から本気で仕掛けていたら、主の声が俺たちに届くことも、主が希望を捨てずに色々考えたであろうこともなかったんだ」
「どうして
…
それを」
私があれこれ考えていたことを、どうしてこの子たちが知っているのか。
「俺たちがあそこに行けたのは、一つに錬度と刀そのものの位が高かったからだ。
だがそれだけでは足りない。何より必要だったのは、主の声」
「君が戻りたいと。もう一度会いたいと願ったから。だから僕たちはあそこに行けた」
「その願いと諦めない気持ち。それが、それだけがあの箱庭の淀んだ空気を動かした」
「主の姿の消し方はほぼほぼそれのやり方だったからね。僕たちは君が消えてから、空気の流れをずっと辿っていたんだ」
「神隠しなんてものは、二人で望むか、闇に落ちた片方が望むかどちらかでしか存在しない。二人で望んでないとすれば、あの陰険な空気の流れを掴むまでだ」
「あいつ気配殺すのが上手くてさぁ。遅くなってごめんね」
「本当は索敵という意味では薬研と鯰尾の方が向いていたのだが、悔しいが刀のランクはあんたたちの方が上だからと、捜索は我々が請け負った」
「その間彼らはあの赤い子
…
」
「加州だ、兄者」
「そうそう、その子たちに知らせたり、もし君が落ちてた場合に備えて<水>を用意したり、色々走り回ってくれてたみたいだよ」
「それも、主がこうして何事もなく帰ってきたので無駄になったがな」
二人は笑って顔を見合わせた。
何が起きていたのかを交互に語ってくれた兄弟は、本当に安堵した表情をしていた。
こんなに
…
。違う、今の話を聞いたあとでどれだけ私が危険だったのか、行く前の清光はこんな最悪まで懸念してこの子たちを付けてくれたのか。至らなくて申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「ごめんね
…
みんな」
一人言のように呟いてから、
「ごめんね、二人も。
…
ありがとう」
助けに来てくれたときからずっと隣にいてくれた兄弟に、精一杯笑うよう心がけた。
「清光にも薬研にもずおちゃんにも、みんなにも。謝らなきゃなあ」
そう言って笑おうとした私を、二人が笑って制する。
「主?あれは、君の責任じゃないよ」
「主が責任を感じるなら、俺たちがその倍は感じていることになる」
「四人の真ん中にいた主をあんなに簡単に拐われるなんて、僕たちが無能と言われているようなものだ」
そんな髭切の自嘲も含まれたであろう悔いた言葉に、咄嗟に私の口は動いていた。
「違う!あれはみんなのせいじゃない!私が、私がもっと気
…
」
「違うよ」
伝えようとした言葉、気を付けていればの台詞は最後まで言わせてもらえず、髭切は強い口調で否定を被せた。
「あれは主がいくら気を付けたところで、防げるものじゃない」
続いて膝丸も同意する。
「そうだ。大体あれは、相手があれだったから出来たこと」
あれだったから
…
?
「どういうこと
…
?」
「あれは、あの三日月宗近は恐らくどこの刀でもない。何が起きてそうなっているのかは分からないが、恐らく野良のような状態なのだろう」
「本来なら僕たちは喚ばれて君たちのところに現れるはずだから、そんな存在があること自体よく分からないけどね」
「しかし在ったものは在った。そしてそれは我々に害を為した」
あくまでも推測の域の話だが、二人の考えはきっと間違ってない。そんな予感が私にもした。
テンポよく聞かせてくれた二人は、声も声色も合わせて呟く。
『
…
許さない』
鋭く、鈍い光を放つ瞳の先は、間違いなく先程の三日月宗近を見ていた。
「
…
まぁとりあえず、主にはしばらくここ(本丸)から離れないようにしてもらうね」
「いつ狙われるか分からないからな。あと、行動するときは必ず二人以上近くに置いてくれ」
「あれじゃなければ近侍で十分だけど、対処できないからね」
「付く者はこちらで順番に回すから心配するな」
「それと、何が起きても自分のせいだなんて思わないこと」
「いいね?」
「いいな?」
最後に同じように念を押され、
「
…
うん、ありがとう」
不甲斐なさを痛感しつつ心の底から感謝を込めた。
それに微笑んで答えてくれた二人は、じゃあ業務連絡はここまで、と伸びをして
「じゃあ主、おいで?」
髭切が両手を広げる。
「
…
?なに?」
不思議に思って見返すと、
「怖くないわけがないでしょ」
呆れたような、でも優しい声。
続いて、
「主は強がりすぎだ」
こちらも呆れたような、でも気遣う声。
「こんなものは弱さとは言わないよ」
「涙を止める理由にはならない」
だから、泣いていいんだよ。
直接言われなくても、もう言われているも同然だった。
――
っ、
「ごめんね
…
」
抑えているつもりはなかったけど、この状況で今まで流れなかった、流せなかったということは、やっぱり二人の言う通りだったんだろう。
「ありがとう
…
!」
微笑んで、そのまま。
安心と恐怖と不安と後悔と申し訳なさと、感謝と。
色んな思いが入り交じって、一度タガが外れた気持ちは溢れて頬を濡らす。
両手で顔を覆って泣き出した私を、髭切はそっと抱き締めて頭を撫でてくれた。
膝丸は流れる涙を指で拭って、背中を優しく擦ってくれた。
二人が優しくて、また涙は止まらなくなる。
「ありがとう」
最後にもう一度この言葉を伝えて、三人で笑った。
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