万年青
2025-10-11 07:24:58
1030文字
Public ポケ擬
 

フィルラン(ゲリラ豪雨)

うちよそ


ヒールの音が濡れた舗道に響き、
傘の下から金髪が揺れる。
「ランカサン ムカエニ キマシタ。」
その声は、機械的でありながら、
どこか優しさを含んでいた。
「フィルムさん?」
顔を上げたランカの瞳は、
雨に濡れて潤んでいた。
頬に張り付いた髪をフィルムさんが、
そっと払う。
「ココハ ヌレマス。ワタシノ カサニ
 ハイッテクダサイ。」
フィルムさんは傘を少し傾け、
ランカの頭上に差し出した。
ランカは一瞬ためらったが、
震える体を引きずるようにして立ち上がり、
フィルムさんの傘の中に入った。

2人の距離は、肩が触れるほど近い。
「ごめんなさい。迷惑かけちゃって
「ランカサンハ ワタシノ タイセツナ
 ヒトデス。メイワクデハ アリマセン。」
その言葉に、ランカは思わず
笑みをこぼした。
「ありがとう、フィルムさん。
 本当に、助かったよ。」
「イエ。コノアトハ ワタシノイエニ
 キテクダサイ。カラダヲアタタメル
 ヒツヨウガアリマス。」
「えっ、でも……。」
「エンリョシナイデ クダサイ。」

軒下から歩き出すふたりの背中に、
雨粒が静かに降り注ぐ。
その音は、まるでふたりの鼓動を
包み込むように、優しく響いていた。