真九龍
2025-10-09 19:50:46
5362文字
Public 小説
 

君ト秋月ヲ見ユ Three years later...

中秋の名月を初めて見た日から、三年後のお話。
【君ト秋月ヲ見ユ】の後日談です。
【大正】の鳴海×ライドウと【昭倭】のナルミ×雷堂、二つのお話が有ります。
物語の展開と内容は一緒ですが、ニュアンスが少し異なります。
注1:ライドウremaster版をプレイ済み及びクリア済み。
注2:捏造多発注意報が出ています、ご注意下さい。


【君ト秋月ヲ見ユThree years later...─Another Narumi×Another Raidou Ver.─】



昭倭某年から三年後、某月某日の秋月夜。
黄白色に輝く丸い月が、夜空に浮かんでいる。此の月は中秋の名月と呼ばれ、悪魔が活性化することもなく、百鬼夜行も発生しない不思議な期間となる。
静かで優しき月光下に照らされた天楼閣は屋上で、ナルミと雷堂は月見酒を堪能していた。

「二十歳になった雷堂と月見酒を楽しめる日が来るなんてなぁホンットに夢のようだぜイチチチチッ!ちょっとぉ急にほっぺた抓るなんて酷過ぎじゃね?」
「ナルミ、此れは夢では無くて現実だ。俺とナルミは今、あの時の約束を果たしているのだぞ」
そうだな色々と遭ったけど、ライドウが俺の傍にいて、月見酒をする正に、現実なんだよなぁ

雷堂が【十四代目葛葉雷堂】を襲名し、帝都に赴任してから三年。彼は愛しき想い人こと、ナルミの傍らに居た。三年前、中秋の名月というものをナルミから教わり、お月見を初めて経験したあの日、ナルミは雷堂に願望を語っていた。

─この先も、一年後も、三年後も、傍に居てほしい。─

雷堂の立場上、鳴海の願いは不透明且つ不明瞭で、叶ぬ可能性は極めて低いに等しいものだった。だが、自身もナルミの傍に居たいと切望し、奔走する。帝都の守護者として努力を怠らず、結果を出し続け、其の功績をヤタガラスから認められた雷堂は、望むものは何かと問われる。

雷堂が望むものは唯一つ、鳴海探偵社の所長である鳴海の助手となって、帝都の守護を継続する事。

ヤタガラス側に、鳴海との関係は筒抜けだろう。私情があまりにも絡み過ぎる己の要望は、通らないかもしれない。もし通らかった場合、どうするか。其の時は其の時で、ナルミと共に時間を掛けながら彼是模索するのも悪くない。要望を出して数日後、超國家機関は雷堂の望みを容認した。功績の大きさ故か、其れとも、類まれなる逸材の機嫌を損ねる訳にはいかない故か。向こうに様々な思惑が有るにしても、自身が望んだものは無事叶った。ナルミの助手として此処─鳴海探偵社─への滞在延長許可が判明した瞬間、歓喜乱舞したナルミが雷堂を抱擁しようと駆け付けた。が、喜びよりも抱擁される恥ずかしさの方が勝った雷堂に因って、容赦なく突き飛ばされたのは言うまでもない。
あれから月日が流れ、雷堂は二十歳を迎えた。ナルミの部屋で彼が手配した酒を一緒に飲み、ほろ酔いになった日は、雷堂にとって一生忘れる事の無い大切な思い出となった。因みにナルミが手配した酒だが、アルコール度数が低く、甘味があって飲みやすい銘柄だった。初めて飲酒する雷堂に合う酒を選んだ、ナルミの優しさと思いやりが窺える。
本日、中秋の名月に用意された酒は、勿論ナルミが手配したものだ。初めて飲んだ銘柄に比べると、度数は少しだけ上がっておりやや辛味が含まれるも、初めて飲酒した酒と同様、飲みやすい味と口当たりだった。

「おぉ?なぁ雷堂、盃を見てみな」
「盃?」

酒の影響で頬が紅くなったナルミは、上機嫌な様子で雷堂を促す。雷堂は鳴海に言われたとおり、盃に視線を送ると、盃に注がれた酒が、夜空に浮かぶ中秋の名月を映し出していた。月を直接視ずとも月が見える艶麗な光景に、雷堂は堪らず溜息を漏らす。其の溜息に因って、盃の酒に浮かぶ月がゆらりと揺れる。波紋で揺れた月は流麗で、趣のあるものだった。

綺麗だな
「な、綺麗だろ?見方をちょっと変えて月を眺めるのも、月見の一つだからな」

一つの月が様々な姿に変化し、雷堂の瞳に映す。
初めての月見酒を心行くまで楽しむ雷堂の姿を見て、ナルミは益々気分が良くなり、益々酒が進んでいく。

おい、飲み過ぎると身体に毒だぞ」
「大丈夫大丈夫羽目を外さないよう、量はちゃんと決めてるからさ。万が一飲み過ぎて明日調子が悪くなっても、お前に看病されるのも悪くは無いと思て俺の酒ぇーっ!!」
酔い潰れたお前の看病など、俺は絶対に御免だ!」

ナルミの台詞を冗談ではなく本気と捉え、何故か赤面した雷堂によって酒を没収されてしまうナルミであった。一応捕捉しておくと、酒の飲み過ぎは良くない、という、雷堂なりの心遣いだ。
そして、雷堂は何故赤面したのか。其れは、べろべろに酔ったナルミが愛の言葉を此れでもかと沢山漏らすからだ。愛しき想い人同士になった以降、鳴海の言葉は全て本心だと分かる為、傾聴する側の雷堂は大変恥ずかしいのである。