保科
2025-10-09 00:51:54
1115文字
Public スタレ
 

いちごホイップカスタード

「アイスは乗せなくて良いのですか?」「……おい、あまり惑わせてくれるな。アイスは不要だ――もし入れるならばその場合カスタードは抜くべきだろう。冷たさで味が濁る」「成程、貴方なりのこだわりがあるのですね」

現パロ アグライア(社会人)とモーディス(高校生)が出会ったら

……モーディス?」
クレープ屋のワゴンの前。
腕を組み、黒板のメニュー表と真剣に向き合っていた男子高校生が、その小さな呟きに顔を上げる。そうして、驚愕に目を見張った――視線の先には、公園を通りすがったアグライアがあった。アグライアもまた、足を止め、その姿を凝視する。
着崩した制服や精悍な顔立ちははどことなく粗野な雰囲気を纏い、特徴的な長い金の髪は一つにまとめられている。かつて目立った赤の入れ墨はなく、また、アグライアが知る姿よりも幾分幼いものの――しかし、その顔を見間違えることはない。
「貴方――
……久しいな、アグライア。まさかこのような所でお前と巡り合うとは」
アグライアの元へと歩み寄った少年が、彼女を見下ろしながら徐に口を開く。その年嵩に合わない威厳のある言葉の響きが、当然のように口にした名が、彼もまた、かつての記憶を保持していることを伺わせた。
「名乗りが遅れた。モーディス、またの名をメデイモス。――肩書を持たぬ学生の身の上で失礼する」
そう言うと、彼は制服の胸元に手を当て、流れるように頭を垂れた。アグライアはそれがクレムノス人が敬意を表す時に行う儀礼であることを思い出す。オクヘイマにて幾度となく目にした懐かしい光景に、郷愁に浸りかけた思考を慌てて引き戻した。
……どうか畏まらないでください、モーディス。貴方が一介の学生に過ぎぬよう、私もまた、服飾を生業とするただの人でしかありません。敬意は不要です。
ですが――こうして言葉をかわすことができたことは望外の喜び。まずはどうか、それを分かち合わせて下さい」
「フ。了解した。確かにそうだな……全く、何が起こるか分からんものだ」
顔を上げたモーディスは、腕を組むと小さく微笑んだ。心なしか、アグライアの記憶にある彼よりも柔和に思える表情は、今暮らしている穏やかな空間がそうさせるのか――。ますます、アグライアはここで別れてしまうのは惜しいと感じた。今の彼について、より深く知っておきたい。
「時間はありますか、モーディス」
「無論、如何様にも」
「であれば。軽食など嗜みながら会話を交わすのは如何でしょう」
口にしながら、改めて視線を送ったクレープ屋のワゴンは営業中だ。同じように目を向けたモーディスはその提案に深く頷いた。
「ああ、良い意見だ。――だが、注文は今暫く待ってくれるか。
まだメニューを決めかねているのでな」
「ええ、勿論です。時間はありますので。私も考えるとしましょう」
頷くアグライアに、モーディスは看板に視線を戻す――さながら、王命を思案する姿を思わせるほど真剣な横顔を、アグライアは新鮮な気持ちで眺めることにした。