バラ肉
2025-10-08 18:56:14
6532文字
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月見未満

十五夜ネタを書こうと意気込んでたらもう終わってた…

のでめちゃくちゃ中途半端だけど供養。
続きは求められたら書きます。

※みと🍖くんはみのりボイスで再生してください。

「満月には魔力が宿る」

そう言って己の唇に指を立てて笑う男から、スグルは目が離せなかった。




月夜に踊る



夕暮れの美波里公園にて。
おなじみの肉ハウスでは、キン肉マンことキン肉スグルが夕方のニュースをぼんやりと眺めていた。
もちろん、時事に興味があるわけでない。目当てはもうすぐ始まる歌番組だ。最近人気の女性アイドルを見逃したくない一心で、彼は一時間近く前からテレビの前を陣取っていた。
そんなやる気のない視聴者など気にせず、液晶の向こうでは愛らしい女子アナと中年の天気予報士が明日の天気について語っている。

「えー、低気圧が続いており、数日間は雨が続く予報です。ただ、十五夜の頃には晴れ空が見える可能性もあります』
「そうなんですね! よかったです。うちの実家では毎年おばあちゃんがお月見団子を作ってくれて』
「ほほお。おばあさま直々の月見団子とは風流ですね~」

わざとらしいほどほのぼのしたやりとりは、お茶の間の主婦が夕飯を片づける時間にはちょうどいい塩梅だ。
実際、スグルの後ろで食卓を拭いていたナチグロンも「へえ、手作りのお月見団子ですか〜」と感心している。
それに合わせ、食器を洗っていたミートも顔を上げた。
「僕はみたらし団子の方が好きだな~」
「ミートさんはみたらし派なんですね! ボクは……全部好きです!」
「もう、ナチグロンは本当に食いしん坊だな~」
「へへっ。あ、キン肉マンさんはどうなんですか?」
「十五夜、お団子……
「うん??? どうしました、キン肉マンさん」
話を振ってみるも、返ってきたのは謎のつぶやき。思わずナチグロンの頭上に疑問符が沸く。その間も、可愛い弟分を無視して顎を撫でて何かを考えているスグルに、ミートは何やら嫌な予感を感じた。
「王子、もしかして……
濡れた手を掛けタオルで拭きつつ、顔色を伺う。これはまさか……。杞憂であることを祈りながらナチグロンの横に立った、その瞬間。


「よーし!!決めたぞ!!」


いきなりその場に立ち上がったスグルに、ミートとナチグロンは揃って顔を見合わせた。
「き、キン肉マンさん!?」
「うわー、まぁた王子の思い付きが始まったよ」
驚きと呆れ。二人の顔色は見事に正反対だ。しかし、強引な男にそんなことなどお構いなし。
並び立つ彼らの肩を両側からグッと掴むと、大きな口でにんまりと微笑む。

「ミート! ナチグロン! 今年の十五夜は、みんなでお月見をやろうじゃないか!!」
堂々と言い放つ姿は、つい先ほどまでボリボリと呑気に尻を掻いていた男とは大違い。澄んだ碧眼は、キラキラと期待に満ちていた。
「ええ! でもキン肉マンさん
「十五夜まであと数日。こんな直前で来てくれる人なんていないでしょう?」
しかし、その一方で現実を生きる子供たちはいい顔をしなかった。
三人だけでやるならまだしも、他の面々……スグルの友人であるアイドル超人たちが無事に集まるだろうか。皆、祖国での活動で忙しいのは火を見るよりも明らかだ。
なのに当の本人は心配するミートたちの言葉に耳を貸す気がない。
「いいの! なんせ、この私が誘うんだ! 全員揃うに決まってるじゃろ! 黙って私の人望をみていなさい!」
フンッ!と鼻息荒く宣言する主人に、哀れな少年たちは大きなため息を吐くしかなかった。


そうして急遽開催が決まった【キン肉マン主催のお月見大会】は――

案の定、ミートたちの不安が見事に的中した。



『悪いがその日は牧場のみんなとハロウィンの打ち合わせがあってすまない』
「ええっ! そんな……、ちょ、ちょっとでもダメかの?」
『キン肉マン。お前も知っている通り、テリー牧場はいろんな人たちに助けられてる。そのお礼もかねてるんだ。優しいお前なら分かってくれるな?』
「ううっ、そういう事情なら……仕方ないのう」
『ああ。その代わりじゃないが、ユーも時間が合えば遊びに来てくれよ』

電話口で申し訳なさそうに断るテリーに対し、スグルは盛大にため息を吐いた。
まさかあの男に断られるなんて。絶対に参加すると高をくくっていた相手の答えに、ガックリと肩を落とす。
「ほうら」と見てくるミートの冷たい眼差しが胸に刺さる。
しかし、友人はなにもテリーだけじゃない!
グッと受話器を握り直すと、彼は次々と電話帳をめくって目当ての番号にかけまくった。

結果、

『ああ?月見? ……わりーけど今年はラーメンマンと組んで最恐のハロウィンにする予定なんだ。オレんとこの一族のガキは変に目が肥えてるから。……つーことで、またの機会に呼んでくれよ』

『行ってやりてえ気持ちは山々なんだが……今年は悪魔超人軍で、ニンジャお勧めの秘境に行って見ることになっててな……スマン』

『ああ、その日はテレビ番組のお月見企画で人気アイドルと料理対決することになってるぞ! 生放送で月見ちゃんこを作るんだ。ってことでしっかり観てくれよ! はっはっは!』

上から順にブロッケンJr.、バッファローマン、ウルフマンにすげなく拒否されたスグルは、もはや風前の灯火のように燃え尽きかけていた。

「み、ミートきゅん……
「だから言ったじゃないですか! いくらなんでも決めるのが急なんですよ!」

「ぐぬぬっ。な、ナチグロン〜」
「キン肉マンさん! 気を確かに! 僕らなら、キン肉マンさんの突拍子のない、人の予定なんでまるで無しの、とんでもない気まぐれにもちゃんと付き合いますから!!」

「うぐっ! ……もう、二人してズケズケ言い過ぎじゃない? 私はお前たちの保護者みたいなものなのに」

まさに泣きっ面に蜂。容赦のない子供達にスグルは半泣きになって、パンツから出したハンカチを噛んだ。

連絡は取っていないものの、先の彼らのやりとりでジェロニモとラーメンマンも望みは薄い。
ちなみにウォーズマンに関しては、本人が今月誕生日というこじつけで企画されたファンかつて戦った超人たちとのアメリカの西部ツアーに行っている真っ最中だ。
メンバーはステカセキング、ザ・マンリキ、という世にも不思議な組み合わせである。旅先から来る手紙には、そんな彼らに加えてやけにノリのいい機械超人が案内人をしているとのことも書かれていた。
なので一番参加してくれそうな男は最初から不参加が決まっていた。

「はあ、残るはあやつだけか」