保科
2025-10-04 21:57:03
1631文字
Public スタレ
 

そこにいること

星なの 再会直後、キュレネ合流前 おかえり〜〜〜〜🥹🥹🥹🥹

星と丹恒は、ウチが泣き止むまで見守ってくれた。すっかり腫らした両目から涙がやっとこぼれなくなったのを確認したあと、丹恒がゆるりと立ち上がる。
「丹恒?」
見上げるウチのまなざしに、彼は安心させるように口元を緩めると、
「辺りを確認してくる。少し待っていろ」
そう言うと、桟橋を後にした。
……なんか、丹恒が前より優しい気がするのは絶対気のせいじゃない、と、思う……けど。
話を聞く限り、誰も彼も、オンパロスで過ごした時間の長さが大きく違っているっぽかった。そのせいで、なんというか、ピノコニーから出発する直後と今では……皆の態度がちょっとずつ違うって感じる。
丹恒も、きっとウチも例外じゃなくて。そして――
「なの」
正面の星も、同じ。
「どうしたの、星――
呼びかけに、丹恒の背を見送っていた顔を声の方へと向けて。
――むに。と、無造作に伸ばされた星の両の手が、ウチのほっぺをつかんだ。理解できずに、瞬く。
「ぅえ?」
……………
「ひょ、ひょっろ、へい……?」
問いかけに返事はないまま――むにむにむにむに。パンとかこねるみたいに、上へ下へとこねくりまわされるほっぺは早々に限界を迎えた――痛いってば!
「めゃう!」
しゃ、と吠えると、星がびくりと手を止める。まん丸の目がウチをまじまじと見る。どういうつもり、と顔をしかめたウチは、手を勢いよく払い除けた。
………えっ」
「え、じゃない!
ちょっと、なんでアンタが驚いてるの!?まず手を離して今の蛮行を謝ってよ!」
――その。なのだなって、思って、つい……
「は?そりゃ、ウチはウチだけど……
口にしながら、さっきまで長夜月だったウチが言っても説得力ないかも、とは思った。洋服も、丹恒いわく目の色のそのままだし。現状、ウチがウチじゃないことがある人筆頭代表だ。
「うん……そうだよね。そう……
でも、それにツッコミとか、いらないボケをするでもなく。曖昧な声の相槌は、いつも適当なことをそれらしく喋る彼女らしくない。
それがなんとなく不安になって、どうしたの、と問いかけようとしたウチの言葉は、
……ごめん」
掠れた声にに遮られる。――反射的に、口が開く。
……泣いてる?星」
「え?いや……別に泣いてない、けど」
戸惑ったように、頬をこすって答える星の瞳は、涙とは縁遠そうにからからだ。
そんなの見ればわかるのに、なんでかウチにはそう思えた。
そして、この直感はきっと合っている、とも。理由はなくて、なんとなく。でも、結構長く一緒にいる彼女のことは、見誤らないくらいには仲が良いつもりだもん。――まったく、オンパロスでどれだけ頑張ったって、結局手のかかるウチの後輩はことは変わらないよね。肩をすくめてやる。
「もー、そういやアンタってば素直に泣けない子だっけ。仕方ないな。
いいよ、ウチのほっぺもちもちしたいんでしょ。
でーも!乙女の柔肌を触るならもっと優しくね?」
はい、と彼女の両の手に、ウチの手を添えて、ほっぺにくっつけてあげる。けど、なぜか星は身動き一つしない――ぼーっとしてる。
…………
「ちょ、ちょっと?黙ってないでよ……
思わず、不安に声を揺らすウチを見て。
……うん――ごめん、なの」
伸ばされた腕の距離の先、ふにゃ、と、星が笑う。――その、幸せを溶かしたようにゆるく細められた眼差しが、ウチのことをまっすぐ射抜いてきらめいた。
「今、アンタにようやく会えたんだなって。
改めて思えたから」
……そっ、か?」
「ん、嬉しい」
さっきまでとは違う、加減した手つきで、むに、とほっぺが押される。そうされても、言葉一つなくされるがままなウチを、星は不思議そうにのぞき込む。
………
「なの?
……あ、ほっぺ熱い」
……もう、気づいてもそういうのは言わないの!」
ごめん、と笑う声がすっかりいつも通りの響きなのに、また泣きそうになっちゃったのは内緒にする。