【可惜夜廻*爾】其の弐-1

『「すみません、よくわかりません。」』
現行未通過×
※夜廻パロ



「カンジが倒れてから、もう一年が経っているんだ」


 朧月の下、ソウゲツと二人で話す。繋いだ手は固く、振り払うのは難しいだろう。未だ混乱する頭で、カンジは彼の作った粥を傍にぼうっとしていた。

 曰く。一年ほど前、自分は町の入口で意識を失っていた。アサヒが見つけ医者に診せた結果、深い昏睡に陥っている状態。原因を探りつつ点滴などで延命していた中、先程ようやく目を覚ました……らしい。


「もう遅い、医者に見せるのは明日にしよう。
 今日はそれを食べてから寝るんだぞ」

……ソージ」

「なんだ?」


 オレは死んだ筈だ、という言葉を飲み込んだ。心から安堵している彼に、この質問を投げつけるのは気が引ける。それに死んでいたとして、最初に見つけたのは彼ではなくアサヒらしい。真相が欠片も掴めない中、不用意に聞き回るのは得策ではないだろう。


「ありがとぉな」

……いいんだ、カンジ。オマエが生きているなら、それで」


 絞り出した感謝の言葉に、ソウゲツは痛々しい程の幸福を伝えてくる。騙すような真似に罪悪感がないと言えば嘘になるが、それ以上に今の自分は動揺と困惑で満ちていた。握られた片手から、彼の柔らかな温度が自分に滲む。自分の温度も、彼に混じっているのだろう。きっと。