ジルク
2025-09-13 21:38:35
2014文字
Public 白鳥自カプ
 

ギルバート・セシルの前日譚

CoC「白鳥の歌を謡うとき」NPC名前記述あり。シナリオ本編の情報なし。CSに書いたエピソード。

【前日譚その1】

「ごめんね」という言葉が嫌いだ。
もちろん、謝罪が必要なときはある。それはわかっているから、この感情を直接吐露したことはない。他人の表現手段は、俺が一々口を出すことではない。

『ごめんね。ごめんね、ギルバート』

ああ、またこの夢か。
耳にこびり付く女の声。彼女は俺を抱きしめて、すすり泣きながら何度もその言葉を繰り返す。
もうあれから何年も経っているのに夢の中の俺はまだ幼いガキで、目の前の女を小さな手で抱きしめかえす。

『泣かないで、お母さん』

俺の意思とは関係なしに発される言葉。昔の出来事がただ再生されるだけの夢。
そして俺の言葉を聞いていたのかいなかったのか、女は「ごめんね」を繰り返して泣き続ける。

ああ、こんな夢、早く醒めてほしい。

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「ねえお母さん、ぼくのお父さんはどこにいるの?」
いつも何でもすぐに答えてくれるお母さんが、変な顔で口を閉ざした。
……どうして、急に聞きたくなったの?」
「ローレンスに聞かれたんだ、ギルのお父さんとお母さんはどんな人?って。ローレンスのうちはね、お父さんとお母さんとローレンスと他にも人がいて、でも家族はお父さんとお母さんとローレンスの3人なんだって! それで、どうしてぼくのうちはお母さんとぼくの2人なんだろうねって話になって……
一生懸命に昼間のことを思い出しながら話していたら、ふいに抱きしめられた。
……お母さん?」
顔は見えないけれど、抱きしめられたその身体がわずかに震えていることがわかった。
「ごめんね。ごめんね、ギルバート」
泣き声混じりのその声に、なんだか取り返しの付かないことをしてしまったのではないかと、恐ろしくなった。