いを
2025-09-10 17:56:11
2584文字
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刀神
それぞれフォロワーさんのお子さんお借りしています。


 ひとというものは恋に落ちるものらしい。――と、弟の桂木が神妙な顔でいっていた。お前、恋に落ちたのか、とこちらも神妙にたずねると、いいやと首を振った。なんだお前、びっくりさせやがってと小突く。どうやら恋愛小説を読んでいたらしい。刀のくせにへんにこだわっているものだから、なんだかその姿が弟ながらに面白い生物だと思った。
「俺の手は冷たいのか」
 祭にとうと、困ったように彼は眉根をさげた。
「ああ、いやいや。責めてるわけじゃないんだ。桂木。前に会っただろ? 弟にな、〝手が冷たいのはこころがあたたかいからなんだぜ〟って妙にロマンチックなこといってたから」
「ロマンチック……。月草様でもそういうこと仰るんですね」
 くすりと彼は笑った。
 祭のほおはすこしやわらかかった。やわこい。そうだ。人間の皮膚はやわこいから、うまく触れなければいけない。自分の片方しかない手で、ちゃんと思うように動けていたら僥倖だ。祭は片腕しかない手を、さも大事そうに扱うものだから心地がよい。道具は、大切にされれば嬉しいのだ。