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保科
2025-09-07 21:17:32
2208文字
Public
スタレ
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酔いライアさん
現パロ サフェル高校生アグライア社会人くらいの想定、オンパロスの記憶アリの二人のやつです
好きなキャラの酔いシチュ大好き……♡
「ライアー?帰った、よ
……
」
リビングを開けた瞬間思わず口を止めたのは、空気中を漂う酒精の匂いがあまりにも強かったからだ。
原因と思われる部屋の主を探せば、それはすぐに見つかった。
「
……
ああ、おかえりなさい、セファリア。遅かったですね」
普段からは程遠いふやけた声。中央のソファーに腰掛け、顔を薄ら赤くしたアグライアは、カラカラとウイスキーグラスの中の氷を揺らしていた。意識はあるようだけれど、酔いはかなり深そうだ。
普段の節制ぶりとは随分異なる姿に、諌めるべきか暫し考えたけれど
――
短時間の思考では結論が出ないまま、鞄をダイニングテーブルに置いた。
「
……
ふーん?珍しいね、あんたがそんなに飲んでるの」
当たり障りのない質問に、顔を綻ばせたアグライアがニコニコ笑う。
「ええ、ええ。先方の頂き物ですが、非常においしくて。スティコシアのメーレにも劣らぬいっぴんです」
「へー」
気のない返事をしつつ、自棄酒とか、そういうネガティブな深酒ではなさそうなことに安堵する。かつての記憶として
――
オンパロスにおいて彼女が酒を煽る瞬間を、サフェルはあまり見たことがない。けれど、彼女がそうするのは、大体、元老院と長くやりあった後だったものだ。
「
……
セファリア?」
まあ、サフェルが気にかけるような事態でもなさそうだった。
それなら一先ず手を洗おう、と踵を返そうとして、名前を呼ばれる。
何事かと顔だけ向けると、アグライアは何故か、じいっとこちらを見つめていた。
「どこに行くのですか?」
「
……
洗面所だけど」
「なぜ?」
「は?いや、手とか洗ったりとか」
「なぜですか」
「
……
え。何、どうした?」
そして。
――
そういった時、記憶の中のアグライアは、しゃんとしていたはずだけれど。
なんというか随分、今の彼女は、腑抜けているような気がしてならない。
「なんですか、まぜかえして。どうもしません。
どこかへ行こうとしてるのは貴女でしょう?」
支離滅裂な回答。とろけたような瞳、わずかに回っていない呂律。ただ多く飲んでいるだけと見ていたけれど、これは、実のところそれだけではなく
――
「
……
ライア、なんか、めっちゃ酔ってない
……
?」
「
……
ハァ、なんと失礼な。
私の、どこが酔いが回っているというのです。こんなにしっかり
――
」
サフェルの指摘に顔を顰めつつ。アグライアはしっかり、と、口にしながら、ソファーに預けていた背をまっすぐ立たせ。「あれ」ゆらあり、緩慢な動きで横に倒れていく
――
「
――
っぶなぁい!」
慌てて駆け寄ったサフェルが、俊敏な動作で彼女の手元からグラスを強奪した。幸いにして中身の少なかったウイスキーがこぼれることはなかったけれど、アグライアはそのままあえなくソファに倒れ込む。ぽすり。
寝そべったまま、小さくつぶやく。
「
……
不思議です。世界が縦から横になりました」
「ハイ没収ー!終わり!水飲んで水!」
純然たる酔っ払いじゃんヤバすぎる。総毛立ったサフェルは大声で宣言すると、瓶も合わせて、手の届かない机の端にいったん遠ざけた。とてもじゃないがこれ以上は飲ませられない。
思えば、オンパロスで泥酔した彼女には覚えがない
――
が、半神とただの人間の体の作りが違うなら、耐性だって違うだろう事は想像がつく。
アグライアはああ、と寂しそうな声を上げた後、恨めしげにキビキビ動くサフェルを見上げる。
「
……
少々意地悪ではありませんか」
「いーや、温情だね!サフェル様に泣いて感謝するシーンだよこれは!
……
ってか、やっぱらしくないよ、ここまで飲むの。何かあった?」
「言ったでしょう、美味しかったからです
……
」
「
………
」
そう言う割には、重ねて強請るような様子もないのが引っかかった。多分、それも本当だろうけど、理由の一つでしかないと見た。
だから、サフェルが真意を確かめるように見下ろしていれば。数十秒ほどした後。そろ、と視線がそれて
……
だって、と、口が開く。
「
……
セファリアが、帰ってこないので」
広がった髪先をいじりながらの拗ねた呟きは、不覚にもサフェルの心を突いた。鼓動の早まりを抑えるように、あー
……
と無意味な声が出る。
「
――
や、でもさ?
遅くなるのは予め連絡したよ。既読ついてたし。
ほら、バイト先の遅番の人いなくて
……
」
「
……
帰ってきませんでした」
「
……
ゴネるじゃん
……
」
アグライアが要求を通す時は、美辞麗句に織り交ぜた婉曲な言葉が基本だ。本心は安直に見せず、本音は覆い隠して。日常では冗長とすら思える言葉は、彼女の政治交渉などで培った経験故で、今、この世界においてもその根幹は変わらない。だからこそ、
「今日の夕飯は、一緒が良かったんです
……
」
――
彼女の口からこんなストレートなワガママを聞くのは、かなり、その、
――
……
サフェルは咳払いを一つ、よどみだした思考を断ち切った。代わりとばかりに白旗を上げる。事実がどうであろうが、この場限りで全面的にあたしが悪い。
「
……
ごめんって。明日は早く帰るから、それで勘弁してよ。ね?」
「セファリア」
「分かった分かった、今度は何」
「
……
起き上がれません、引っ張ってください」
「
……………………
」
全部録音して明日の裁縫女に叩き付けたらどんな反応をしただろう。
サフェルは、動画を回していなかったことを、それはそれは深く後悔した。
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