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かいえ
2025-08-21 18:51:00
11130文字
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【蘭武】Once Upon a Time in Tokyo ⑤
謎軸設定
11,130文字
武道が戻って来た未来は、武道以外がみんな幸せ(最終軸の職業についている)で、26歳の武道と仲良くしている人はいない世界だった
Twitterに載せたお話に加筆修正したもの
※このお話の前までをまとめたものを通販中です
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「オレだけど」
自宅に戻って、遅い夕食のカップラーメンを食べ終わった頃、突然かかってきた電話に出たのだが、その相手の最初の一言目がそれだった。
まるで、オレオレ詐欺のような電話に、武道は面食らうしかない。
「え? あの? どちらさまですか?」
誰だか分からなくて聞いたのに、スマホのスピーカーからは「チッ」という不機嫌そうな舌打ちが聞こえてきたから武道は怖くなった。
「オレだって、一虎。羽宮一虎。おまえなー、同中の先輩の声を忘れんなよ」
信じられないと言わんばかりの声は、確かに一虎のものだった。驚きと懐かしさもあったが、一虎が自分に電話を掛けてきた意図が分からず、武道は戸惑ってしまった。
「か、一虎君なんですか?」
「そうだって言ってんだろ?」
「ス
…
スミマセン!」
武道は中学時代のように、スマホの前で頭を下げていた。一虎は身内に優しいところもあるけれど、機嫌を害すと平気で腹心の部下の足を折るくらいの事はする、とても怖い先輩でもあった。
「あのさ、おまえ、何で千冬なんかに電話してんの? こういう時、頼るなら絶対オレだろ?」
武道は一虎の勢いに圧倒され「あ
…
はぁ?」と、弱々しく返事をするのが精一杯だった。どうやら、武道から電話があった事を千冬から聞いて、拗ねて電話を掛けてきたようだった。随分久しぶりに話をしているというのに、その話し方はいかにも一虎らしくて、怒られているというのに、懐かしさともう一度話をしている嬉しさから、笑みが込み上げてきて困ってしまった。今笑ったら余計に怒られると、武道は必死で笑いを噛み殺した。
「まぁ、いいや。ところで、灰谷兄弟の事が知りたいんだって?」
そこで初めて、千冬が言っていた「知っていそうな奴」というのが、一虎を指していた事を知った。
この世界の一虎は、マイキーの兄である佐野真一郎の店に侵入してバイクを盗もうとして、気づいた真一郎を襲いはしたが、殺しはしなかった。真一郎は殴られたものの死ぬ事は無かったのだ。一虎のした行為は許されるものでは無いが、自身の弟の為に起こした行為である事を知った真一郎は、叱るだけで一虎の罪を許したのだ。
「はい、知りたいです! 教えて下さい!」
「天竺が東卍の傘下に入った後、灰谷兄弟だけが東卍に入らなかったのは覚えてるよな?」
「あ、えっと
…
そうでしたっけ?」
正直その辺りの武道の記憶はあやふやで、あまり詳しく覚えていなかった。そんな武道に、一虎は「そこからかよ」と、呆れた声を出した。
「スミマセン
…
」
「まぁ、いいや。あのな、まず、灰谷兄弟は元々つるむのを良しとしないんだ。最初こそ、六本木を仕切っていた族の狂極に所属していたけどな」
「その頃って、灰谷兄弟は子供だったんですよね?」
「ああ、狂極に入った時は二人共小学生だった」
小学生で族に? とは思うが、マイキー達が東卍を結成したのだって小学生だった事を思えば、所属するくらいおかしくないかと思い直した。
「そのガキ二人が、灰狂戦争で狂極の総長と副総長を倒しちまった。灰谷蘭が十三歳で、灰谷竜胆が十二歳の時の事だ。相手は高校生だったけど開始早々瞬殺して、たった一夜で六本木の不良の歴史を塗り替えたんだ」
「すげぇ
…
」
「その後は、族を作らず、あいつらは兄弟だけで六本木を仕切った。それなのに、天竺に所属したのは、イザナの力に屈したからに過ぎない。少年院で出会ったS62世代の他の奴ら共々な」
昔の話の中の蘭は、武道の知っている蘭と印象がまるで違っていた。時折、蘭から強い圧を感じる時はあったけれど、蘭は概ね穏やかだった。それなのに、一虎の話の中の蘭は、かなり尖っている感じがした。けれども、武道から見た蘭は、いつも飄々として掴みどころのない人物だった。
「けど、生来あいつらはつるまないんだ。だから、天竺が無くなって東卍に合流した時、つまり、イザナが総長でなくなったのを機に、灰谷兄弟だけ抜けたんだよ。こっちとしては、相当ムカついたけどな。マイキーの下にはつけないって言われたようなもんだろ? でも、それをイザナも認めたし、マイキーも許したから、仕方が無いって事になったんだ」
「そんな歴史があったんっスね」
もし、そこで灰谷兄弟が東京卍會に所属していたら、自分も灰谷兄弟と仲間同士になっていた可能性があったのかと、武道は不思議な気持ちになった。過去、何度か近い位置にいてすれ違っていたのに、結局一言も話す事は無かった関係が、ここにきて急速に交わった事を感慨深く思ってしまう。
「ああ。で、それから今日まで、灰谷兄弟が六本木を仕切ってきたんだ。でも、六本木はヤバイ街過ぎて、綺麗ごとだけでは済まされない場所だ。そこを支配するという事は、どうしたって、に手を染めなくてはいけなくなる。時が経つにつれ、やる事がヤクザ顔負けになっていったんだ。最近では、風俗経営、違法賭博、人身売買、詐欺行為や薬にまで手を出していて、昔の六星コミュニティと変わらなくなったって話だった。もう族とかそんな可愛らしいもんじゃなくて、灰谷兄弟は反社そのものなんだよ。六本木の利権にどっぷり頭の天辺まで浸かっている本物の巨悪だ」
「反社
…
」
「しかも、弟の竜胆は、去年の夏に殺されていた」
一虎の言葉に武道はドキリとする、もちろん、殺されたのだろうと聞いていたけれど、本当にそうだと断定されると恐ろしくなったのだ。
「
…
」
「なんだ、知ってたのかよ?」
武道の反応に、一虎は直ぐにその事に気が付いてしまった。
「死んだというのは
…
い
…
灰谷さんから聞きました
…
」
「知っていて灰谷蘭と繋がってんの? おまえ、ヤバいんじゃない? 竜胆は撃たれて死んだんだぜ? ほら、六本木の映画館で発砲事件というのがあっただろ? アレの被害者が竜胆で、即死だったらしい」
竜胆は映画好きだと、蘭から聞いて知っていた。けれども、まさか映画を観ている時に殺されたとは知らなくて、自分にも馴染みがある場所だけに、よりリアルに感じて背筋がゾッとしてしまう。
「ちなみに、犯人は捕まっていない。そこら中から恨まれていて、犯人に目星が付けらない状態だって話だぞ? マジで大丈夫かよ?」
大丈夫かと聞かれて、大丈夫ではないと思った。何故なら、どれだけ恐ろしい話を聞いても、それでもまだ、蘭に会いたいと武道は思っていたからだ。
「S62世代は、漏れなく全員が相当のワルだけどさ、その中でも、灰谷蘭は一つだけ他のヤツらと違うところがある。灰狂戦争で狂極の総長を殺しているという点だ。傷害では無く、殺人を起こしているというところが違う。ただ、その時は、灰谷蘭は未成年で少年法に守られて、少年院に行くだけで済んで、前科も付かなかったけどな。だからさ、悪い事は言わねぇ。もう、灰谷蘭を探すのは止めろ。あいつとおまえでは、生きている世界が違い過ぎるんだよ。友人だと思っているみたいだけど、一般人がどうにかできる相手じゃない。あの灰谷蘭が音信不通で行方不明というなら、尚更詮索もするべきじゃない。危険な状態になっているに決まってる。今すぐ距離を置いて、全部忘れるのが身の為だって」
一虎の言う事はもっともだと、頭では分かっていた。殺人という罪の重さも理解出来ている。弟の竜胆の殺され方がひどいと知っても、そこら中から恨みをかっていると説明されても、それでも尚、あの印象的なラベンダーの瞳を、武道は忘れる事が出来なかった。
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