保科
2025-08-16 01:14:51
1005文字
Public スタレ
 

言う必要ありませんでしたから

現パロ 短い 学校で出会ったヒアンシーが記憶ないんだな〜と思いつつ相手してあげてたサフェルと、健気でかわいい後輩のヒアンシーの話

「サフェル先輩、お願いします。
どうか、手伝って下さい……!」
「嫌、あたしに何のメリットもないし、そんな義理もない。
それ位、ヒアンシーが人集めて片付けなよ――周りのウケいいみたいだし、そのうちどうにかなるでしょ」
制服の袖を退屈につまみながら、サフェルは気のない返事で一蹴した。
いくらサフェルがお人好しだったとしても、これ以上は付き合っていられない。そもそも、単なる先輩後輩と言うだけで、ここまで手伝ってやっただけでも十分だろう。
勝手にやってくれれば良い。そう思いつつ、気怠げに手を振れば。正面、誠実に頭を下げていたヒアンシーの肩が、ピクリと震えた。
……そうですか……
ため息をこぼすような声。顔を上げたサフェルの視線の先、こちらを伺うようにゆるりと上がった顔の、前髪の下の瞳が昏々と揺らめくのに、言いようのない悪寒を覚えて背筋が粟立った。
今。何か、肝心なものをかけちがえたような。
ぽつり、ヒアンシーが呟いた。
――どうしても、ですか?
サフェル様
ありえない何かを耳にした。思考が空白に染まる。
……は?待った、あんた」
「私は、それが目的のために必要であるのなら、どんな手を使ってでも調達する覚悟があります――かつて、誰の教員助手をしていたか。ご存じないとは、言わせませんよ」
……お嬢、ちゃん……?」
「はい」
嘘だ、だって彼女は何も知らないはずで――正面、にこりと朗らかに微笑む彼女は。いつも通りの、一学年下のリボンを結んだ、サフェルの後輩で。でも、それだけではないのだと、今、懇々と語るその口調は、あまりにも。
「サフェル様。
かつて天空エーグルの半神だった私から、詭術ザグレウスの半神であった貴女へ、正式に協力を要請します。
――であるならば、義理込みで受けていただけますか?」
「なんっ……
絶句。聞きたいこと、問いただしたいこと、脳内に溢れかえったさまざまな言葉から、結局サフェルが拾い上げたのは。
――あんた、猫被ってたの!?」
「いえいえ。……というか、サフェル先輩にだけは言われたくありません!」
にゃん、と両手を猫耳のように頭に乗せて揶揄う後輩の――同輩の図太さに戦慄する。元とはいえ詭術の半神を騙し通す胆力と、自身の記憶すらも交渉の手札に使う抜け目なさ。
……もしかしてこの子、詭術の適性もあったのではないかと、サフェルは思わず冷や汗をたらした。