呪里
2025-08-08 22:21:57
5594文字
Public Code_Abyss 本編
 

episode:3 第三幕 〈集う三傑〉



 「それで、飛華はどこに行ってきたの?」

 追加で注文した山盛りのフライドポテトを頬張ほおばりながら、呪里は飛華に問いかけた。

 「私?私はアメリカに行ってきたわ。知り合いが住んでるから、ホームステイしてたの」

 そう答えると、飛華はそばに置いてあった少し大きな袋を差し出した。

 「これは私からのお土産よ。食べ物じゃないから、安心して受け取ってちょうだい?」

 呪里は袋を受け取ると、飛華に少し疑うような視線を向ける。

 「吠舞羅みたいにもっとあったりする?実は」

 「ないわよ、大丈夫。あれはあいつがおかしいだけだから」

 「おい、おかしくないぞー」

 ワインを飲んでいた吠舞羅は、突然の自分への攻撃に思わず反論した。

 「はいはい。さっ呪里、中を見てみて?きっと呪里は気に入るから」

 飛華にうながされ、呪里は袋を開けて中をゴソゴソと漁ってみる。

 「あ、可愛いこれ」

 中に入っていたのは、マグカップやタオルケット、ミニトートなどといった雑貨類だった。

 「へぇ、しゃれてんじゃん」

 「どれも現地に行かないと手に入らないものばかりよ?喜んでもらえたなら良かったわ」

 そういうと、飛華は視線を吠舞羅の方へと向ける。

 「もちろん、吠舞羅の分もあるわよ?」

 「おっマジ?」

 「当たり前じゃない。はいこれ」

 飛華はもう一つの紙袋を吠舞羅に手渡した。

 「サンキュー飛華。俺も飛華用の土産ちゃんと用意してあるぜ?」

 「あら、そう?それはどこにあるの?」

 「飛華んに送ってある。数は違うけど、呪里に渡したのとほとんど変わんねぇから」

 「ありがとう吠舞羅。後で見てみるわね」

 二人のやり取りを見ながら、呪里はポテトを黙々と頬張っていた。

 (……この感じ、久しぶりだな)

 以前は月に一度は必ず集まっていたが、今回のように長期間会わなかったことははじめてで、呪里の心にはなにか違和感があった。

 しかし今日、久しぶりに飛華と吠舞羅の顔を見ると、その違和感の正体が分かったような気がした。

 「……飛華、吠舞羅」

 「ん?」

 「なぁに?呪里」

 呪里からの呼びかけに、二人はそれぞれ首を少し傾げながら反応した。

 「………今日、二人に会えてよかった」

 思いもよらない発言に、二人は目を丸くした。

 「どうしたのよ呪里。突然そんな事言って」

 「そうだよ、らしくないぜ?そんなしんみりした顔してさ」

 自分達が知らぬ間になにか良からぬ事があったのではないかと、そんな考えが二人の頭をよぎる。

 「ん?あぁ、悪い方向に考えさせるために言った訳じゃなくて」

 二人の反応を見て、呪里は少し焦った顔で答えた。

 「んー……。なんて言ったらいいかな……

 腕を組み、呪里はうーんと考えた。

 「……あの、さ。こうやって集まるの、久しぶりじゃん」

 「えぇ、そうね」

 「いつもは月一つきいちで会ってたけど、今回は三ヶ月ぶりじゃん」

 「そうだな」

 「それで……

 言いかけたところで、呪里は自身の視線を二人に向けた。

 「久しぶりに二人の顔を見たら安心しちゃって」

 呪里はふっと小さく微笑んだ。

 「この三ヶ月間、なんか物足りなくて、なんだろうなぁこれって、ずっと考えてたんだ」

 両腕を伸ばし、飛華と吠舞羅の服のそでをぎゅっとつかむ。

 「きっと……私は寂しかったんだ」

 眉を下げる呪里を見ると、二人は互いに目を合わせ、同時に呪里に抱きついた。

 「えっ、ちょっ、二人ともどうしたの……

 「んもーー!どうしてそんな可愛いこというのよー!」

 「ごめんなぁ。寂しい思いさせちまってよぉ?」

 飛華は呪里の頬を撫で、吠舞羅はよしよしと頭を撫でた。

 「そ、そんな一気に撫でないで……

 呪里はそう言ってはいるが、抵抗するような素振そぶりはなく、逆に嬉しそうに二人に体をゆだねている。

 (ふふっなんだかんだ言っても、嬉しいんじゃない?昔から撫でられるの大好きだったものねぇ)

 (いくら一人前になったとはいえ、まだ呪里は子供なんだ。いつでも会える奴がこう長い間いないと寂しくなって当然だよな

 互いに組織をもつまでの間、三人は家族のように共に生活していた。

 飛華と吠舞羅は、昔は呪里との距離感や接し方が分からずにいたが、今では本当の妹のように可愛がっている。

 そんな末っ子の妹に三ヶ月もの間街や仕事の事を任せっきりで、二人の心には罪悪感があった。

 「ねぇ呪里?」

 「ん?」

 「今度、三人でどこかへ出掛けない?積もる話もあるし、呪里も働きっぱなしで疲れているでしょう?一旦リフレッシュした方がいいと思うの」

 「おっ、いいなそれ」

 飛華からの提案に、吠舞羅はパッと笑顔になり賛成した。

 「それさ、三人じゃないとダメ?」

 「えっ、どうして?」

 「憐が、二人に会いたがってたから。二人が嫌じゃなかったら、一緒に行きたいなって」

 呪里からの問いかけに、飛華は笑顔で答えた。

 「嫌なわけないじゃない。ねぇ吠舞羅?」

 「あぁ。なんだったら狂牙きょうがも誘って、五人でどっか行くか!」

 吠舞羅の返答に、呪里は口角を上げて喜んだ。

 「本当?良かった

 呪里は安堵の表情を浮かべる。

 そこから三人は、日程や弟妹ていまいの予定を聞く前に、どこへ行こうか何をしようかと遅い時間まで語り合ったそうだ。