呪里
2025-08-08 22:21:57
5594文字
Public Code_Abyss 本編
 

episode:3 第三幕 〈集う三傑〉




〈三傑〉

 それは、国で最も実力のある者三名に与えられる特別な称号。

 先代に認められ、その座を継承する事を許される事で、三傑を名乗ることが出来る。

 今宵、三ヶ月ぶりに今代こんだいの三傑が集う-----

























 〈泡沫の夢〉のVIPルーム内では、三人の男女が賑やかな食事会を開いていた。

 「やっぱ日本食を口にすると帰ってきた!って感じがするんだよなー。うまっ」

 カカシに頼んで作ってもらった味噌汁を口にしながら、吠舞羅ほむらはそう呟いた。

 彼は《三傑》の一人であり、万事屋よろずや災の眼さいのめ〉を束ねる首領である。

 災の眼は表向きは〈殺人・薬物関連〉以外の仕事をっており、大金を支払えば、裏社会にとって重要な闇ルートに関係する仕事を引き受けてくれる。

 呪里や飛華あすかの組織とは違い、所属する組員の八割から九割が男性で構成されていることが特徴だ。

 「前に、私のところの子も海外旅行から帰ってきた時、味噌汁飲んで感動してたけど、そういうもんなの?」

 海外に行った経験のない呪里は、不思議そうに問いかけた。

 「舌に染み付いた味っていうのは、久しぶりに口にすると今までより美味しく感じるそうよ?まぁ、私は日本で生まれ育ったんじゃないけどねぇ」

 生ハムの盛り合わせをつまみながら、飛華は答えた。

 彼女もまた《三傑》の一人であり、日本政府直属の機関〈Virtueヴァーチェ〉の最高責任者マスターである。

 主な仕事は警察同様、刑事事件などを請け負っているが、警察と違う点は、〈犯人が魔法を扱う者か否か〉である。

 事件が発生した際に、〈扱う者〉であればVirtueへ、〈扱わぬ者〉であれば警察へ捜査に関する全ての権限が渡されるそうだ。

 「おふくろの味みたいな感じってことかな」

 「そうね。そうとらえるのが一番近いんじゃないかしら」

 「まっ、俺ら全員おふくろいねぇんだけどなっ」

 呪里と飛華の会話に、吠舞羅は重たい一言を加える。

 しかし、二人は怒ることなどせずにうんうんとうなずいていた。

 「それで、外国はどんなとこ行ったの?」

 呪里が問いかけると、二人は互いにめを合わせたのちに、笑みを見せながら答えた。

 「俺はベルギーに行ってきた。今まで行った国と比べると、結構治安のいい所だったぜ?」

 ほら、と吠舞羅は呪里に紙袋を差し出す。

 「……これなに?」

 「なにって、お土産だよ。中身見てみ?」

 袋を受け取り中を覗いてみると、甘い香りと共に、複数の箱が見えた。

 「すごくいい匂い。これ、もしかしてチョコ?」

 「正解。なんでも王室御用達ごようたしとかで、向こうじゃけっこう有名な店のなんだと」

 「へぇ。ありがとう吠舞羅、後で憐と一緒に食べるね」

 呪里が少し嬉しそうな表情をしながらお礼を伝えると、吠舞羅は一瞬きょとんとした顔になった。

 「ん?別に二人で分けなくても、まだあるからそれは呪里が食べればいいよ」

 「まだあるっていっても、吠舞羅もうなんも持ってないじゃん」

 すると

 ピコン

 呪里のスマホから音が鳴った。

 手に取ってみると、憐から写真が送られてきている。

 確認してみると、山積みになっている様々な大きさの箱と、困った表情の憐の自撮りだった。

 「……吠舞羅」

 「ん〜?なぁに〜?」

 ふと吠舞羅を見ると、今にも吹き出しそうな顔で呪里のことを見ていた。

 呪里は写真が写っている画面を吠舞羅に向けて差し出す。

 「なに、この量」

 「見りゃわかんだろ?ぜーんぶ二人のために買ったんだぜ?」

 「こんなにたくさんもらっても消費しきれないよ……

 想像以上のお土産の量に困っていると

 「じゃあ、食べきれない分は呪里のところの子供たちにでも分けてあげなさいな」

 飛華からの一声が入った。

 「それもそうだね。うん、そうしよう」

 「はぁ?呪里達以外の奴らのために買ってきた訳じゃねぇんだけど?」

 吠舞羅はあからさまに不機嫌な表情になる。

 「でも、二人で食べきれなくて、後々腐らせちゃうよりかはいいでしょ?」

 吠舞羅を極力刺激しないように、飛華は優しく語りかける。

 「……ねぇ、吠舞羅」

 先程まで黙っていた呪里が口を開いた。

 「ん?なに?」

 吠舞羅の視線が呪里に向けられる。

 呪里は眺めていたスマホの画面から目を離し、じっと吠舞羅を見つめた。

 「……これ、うちの子達にも分けてあげたい。美味しいものって、分け合ったらもっと美味しいから。…………だめ?」

 呪里が首をかしげて問いかけると、吠舞羅は小さくため息をついた。

 「はぁー………。わかったよ」

 「やった。家帰ったら仕分けよう……

 喜ぶ呪里を横目に、飛華はそっと吠舞羅に耳打ちする。

 「相変わらず呪里には甘いのねぇ〜?これも愛の力なのかしらねぇ?」

 「うっせ」

 吠舞羅は少し耳を赤くしながら、無愛想に言い返した。