せいたろ(sitr)
2025-08-05 13:15:05
20184文字
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禁断の果実

南蛮舶来のドライフルーツを偶然手に入れた仙蔵と伊作。効能を知らず食べてしまい、何も知らない文次郎もつまんでしまう。
「禁断の果実」と謂れたその効果が、知らなかった感情を際立ててゆく。

伊仙伊 文仙伊 成人向け

※6割濡れ場
※Wフェラ総当たり
※誰とも交際せず事が進みます
※未成年の飲酒は法律で禁止されています
※いちじくは地域により作中で指摘のある効果があるとされていますが、フィクションです。

「伊作!良いものをやろう。」
六年は組部屋の引き戸を開けっぱなしで、丁寧に草を挽く伊作へ声をかける。そろっと顔を上げた伊作は手を止めて、顔を向けてくる。なあに、と目で問うている。
「何か、貰い物?それともお土産?」
「福富家からしんべヱと学園宛に大量の寄贈があり、荷解きを手伝ったんだがな。」
ぼちぼちの興味を向けてくる伊作に布の包みを見せながら、かくかくしかじか説明する。干物だの野菜だの数多の食品を整理する中で、食堂のおばちゃんが『漢方のようねぇ』とハネたそれを、伊作ならば面白がるのではないかと回収してきたのだった。
布包みを開いて見せる。
「干し柿……?にしては、ヘタがないね。」
ころころと乾燥した、何かの実。柿か、枇杷か、けれど枇杷なんて種ばかりで美味しくないな。そう思ったが、一緒に荷解きをした長次がしげしげと眺めてきたのだ。
「長次が言うには、南蛮の神話で『知恵の実』とか『禁断の果実』と言われる果物に似ているのだと。」
「へぇ。横文字の本、版画がついてるのあったよね。僕はこの植物、見た事ないなぁ……。果物なのかな?」
「もし『知恵の実』であるのなら、唐ではテンセンカ、南蛮ではヒグ、と呼ばれているらしい。」
ふうん、と、伊作が一つ手に取って観察する。布包みの中には二十個はありそうだ。
ぐっと指に力を込めたようで、縦の筋に沿ってもろっと割れ目が入った。くんくん、嗅いでいる。中には芥子粒ほどの小さな種子らしき粒が見える。
その、種子何粒かを指でつまみ取って、伊作はそれを口に入れた。
「おい!……
何でも口に入れるなと文句を言おうとしたが、ぱっと伊作が顔を上げて私に目を合わせる。
「甘い……!」
感動した表情で、割った身をもっと解す。ねとっと餡のような、半生の質感。干し柿や干し芋に似ている。半分に割って、それごと口に含んでしまった。
……大丈夫なのか?」
「毒性があれば舌が痺れるから……大丈夫だと思う。でも不思議……カラカラじゃないのにカビついてないし、腐ってもない。舶来品なんだよね?」
確かに……と観察する。
知恵の実。
禁断の果実。
もち、ねち、と咀嚼の隙間に僅かな音が聞こえる。
「味は、どんな具合だ?」
「すごく甘い、干し柿……?プチプチしてるのも美味しいかも。食べる?」
割れた半分を差し出されて、正確な正体のわからないそれを受け取ってしまった。ただ、私の気持ちは明らかに興味に傾いていて、受け取った実のさらに半分を齧った。
……美味いな……
「でしょ?すごく甘い。調味料にできそう。」
もぐ、もぐ、と、咀嚼ごとに確かめる。
種子が潰れる感触。
ぷちぷち、はぜて、潰れる。魚卵とは違う、水分の少ない感じ。植物。あまみ。香ばしさがあるかもしれない。

「なんだぁ、お前ら。神妙な顔をして。」
「文次郎!見て見て、舶来品の干し柿。」
どこからか帰ってきた所のようで、所々に泥汚れのある文次郎が六は部屋に入ってきた。私の手のひらにある四分の一になった実を見て、へえ、と注視する。
「しんべヱのご実家からだって。」
「なら、良い物なんじゃないか?どれ。」
文次郎はそのかけらを、私の手のひらからつまみ取って食べてしまった。
「おお、小さいのに味が濃いな。甘い。」
「でしょ?半分くらいはお酒に漬けとこうかなぁ。長次に頼んで甘煮にしても良いかも。」
……ん?伊作ぅ、まだ隠し酒があるのか?」
良いことを聞いた、と顔に書いてあるような表情だ。少し前に伊作から分けられた、タソガレドキからの貢ぎ物が美酒揃いだったのを思い出したらしい。
文次郎がこのメンツで呑みたがるとは。
「美味かったな、あれは。また三人で呑むか?」
念の為、『三人』がいいのかを確認するつもりでふっかける。
以前に三人で飲んだ夜、遊びで服用した惚れ薬と、それが入った薬酒を試した日があった。酩酊も相まって、絡まっているうちに三人での閨となったのだった。
そろっと表情を観察するが、私に指摘された文次郎は硬直して、赤面しながら黙ってしまった。この男、酒と閨を完全に離して思い出したのか。
「あるよ。また貰って、ちょっと僕一人には多かったんだよね。また三人で呑もうか!」
……いや!俺は別に、三人でという訳では……
伊作と文次郎がすれ違っている。伊作はどう見ても、三人の閨は抜きにして呑み会を楽しみにしている様子だ。これがこの男の不運というか、不注意というか、間が悪いというか。
「ええっ、……僕だけ除け者って事?」
伊作の拗ね顔に、説明できず文次郎がしどろもどろしている。面白い。ただ酔うだけならば、文次郎が無闇に発情することは無かろう。ドギマギ困っている顔を肴にするのはオツかもしれない。
「可愛い伊作を除け者にするなんて、悪い男だ。折角隠し酒を出すというのだからもてなすぞ、文次郎。」
「仙蔵、お前……いや、なんでもない。ただの三人呑みだ。なら伊作、今夜俺たちの部屋に来い。つまみになるようなものを少し出しておく。」
取り繕うように文次郎が言って、わーっと嬉しそうに伊作がはしゃぐ。こっちはこれで、……本当にわかっていないのか?
少し怪しく思いながらも、急遽私たちはまた三人呑みをすることとなった。





それぞれ用事を済ませに向かい、夕食はばらけたようで会わなかった。私は読み物を進めるためにおむすびだけで済ませ、文次郎は後輩と食堂で早めに食べたようだ。伊作はしばらく部屋で草を挽いていたが、その後の足取りはわからなかった。
入浴を済ませておこう、と、読み物が一段落したところで風呂に向かう。
脱衣所の引き戸を開けると、伊作が髪を拭いているところだった。
「今出るところか?」
「そう……、って、仙蔵、平気?」
心配、を顔に書いたような表情で問われるが、体調を気遣われるような心当たりがない。
「何がだ?」
だって、と伊作は言いかけたが、眉を寄せてううん……と唸る。
「すまない、急に。平気ならいいんだ。」
伊作はそそくさと出ていってしまって、詳しくは確認できなかった。
何なんだ、と思いつつ着衣を脱ぎ、桶に入れた入浴道具一式を持って浴室へ入る。他には誰もいなかった。洗い場を見ると、小さな蓋付きの壺がある。手に収まる、調味料入れ程度の大きさ。
どこか見覚えがあり、そっと手に取って蓋を開けると、丁子油の香りがふわりと立つ。
伊作が忘れていったのか?
ここで使ったのだとすれば、今夜の三人呑みが閨になるかもと予感しているということか。準備が要るのはわかるが、なんとも複雑な気がしてくる。
あの慌てふためいた文次郎を見て、無邪気に喜んでいた。
可愛い顔をして、食えないところもあったものだ。
そう思いながら身繕いを始める。湯を浴びて、髪を濯いで、櫛を入れる。湯気で満ちた空間で、身体を丁寧に流す。湯船に浸かる。
読み物へ向けていた集中が解けてゆく。身体が、脳が、休息へ向かい出す。香草を布に包んだものが、湯面に浮いている。気分がほどけてゆく。
無心に、……
なる、つもりが、どうもあの油壺に意識が向く。
こんなものを忘れていくな、と、からかって渡せば良い。
そう、頭では思うのに、
それを渡した伊作は、どうなる?
赤くなって、わあわあ慌てて、私に言い訳をするだろうか。支度したか?と聞いたら、したと言うだろうか。
きゅう……と、脚の付け根、その間が、収縮する。
風呂で、誰か来るかもと思いながら、一人で捏ねたのか。
私は、……あの薬酒を交わした晩も、……見世に出て陰間のふりをしたあの日も、私は……

気が、閨に向く。
私はきっと興が乗ってしまう。

三人でなんて、と、思ったはずなのに、
文次郎が、当然のように私を貫くから
伊作が、文次郎を「仙蔵の」と言うから
私は恋仲でも無い、連れ合いでも無い男二人と、安心しきって交わってしまう。身を任せて、身体を開いてしまう。
寂しげな伊作が可愛くて仕方なくなってしまう。
少し妬いた瞳の文次郎を、知らんぷりで煽ってしまう。

私の男。
お前も、お前も。
三人だから、ゆるされる。

三人だから、甘えても、乱れても、私は「いやらしいことに興が乗っただけ」でいられる。

ずるい時間。無責任に愛し合える時間。なんの約束もせず「好き」を言い合える時間が、すぐそこに迫っているのかも、そういう期待がじくじくと胸を蝕む。きっと恥ずかしい、きっとはしたない、なのに、きっと、堪らなく心地良い。

湯船を出て、桶に1杯お湯を汲む。脱衣所に物音は無い。
私は伊作が忘れていった油壺から、匙ひとつほどの丁子油を手のひらに垂らして、しゃがんで後ろから手を沿わせる。尾骶骨の下から縦に、その奥へ塗りつけた。窄まりを潜って、浅く、ふちだけ。あまり奥には触らない。一応。念の為にしているだけだ。私から望んでことを進めたりはしない。
……知恵の実。
……禁断の果実。
なにを知るんだ。
なぜ、禁断なんだ。
あの実は、もしかすると、本当に……何か効果のある実なのではないだろうか。神話に取り上げられるほどのものだ。名は体を表す。知恵が付くならば、どんな知見が増えるのか。

ふつふつとした感触を胸に、湯を浴び直して浴室を出る。油壺は回収してやった。
そこから自室に戻るまでは、誰にも会わなかった。

・ ・ ・

六年長屋に戻ってくると、美味しそうな匂いがする。六い部屋の引き戸を開けて、文次郎が軒先で鶏肉の風干しを炙っていた。
「この間作っていた干物か。」
「良い酒を出してくれるのだし、それなりにつまめるものを置いておかんとな。」
炭火のいい匂い。良い炭を使っていると、匂いでわかる。七輪は小さめのものを出したようだが、つまみの干し肉にはこのくらいでちょうど良い。
「海苔も出そうかな。火を落とさないでおいてくれ。」
「良いな。炙って食べよう。」
すら、と引き戸が開いた気配がして、六は部屋から伊作が出てきた。五号ほどの大徳利を二つ持って、寝巻き姿だ。
「良い匂い!それ、おつまみ?」
「ああ。伊作は、何か炙りたいものはあるか?」
裸足でこちらに歩いてくる伊作に、いつもと特段変わって見えるところは無い。
「僕はおつまみの持ち合わせ無いなぁ。食べ物の差し入れはお団子やお煎餅が多いから、すぐ食べちゃうんだ。」
「タソガレドキ忍軍の貢ぎ物か……
「団子も煎餅も、一味違うのだろうな。」
い組で揶揄うように続けると、伊作は苦笑して軽く否定する。
「貢ぎ物じゃないよ、お裾分け。」
「とはいえ、あの組頭……雑渡昆奈門は、伊作に会いに来ているだろう?」
文次郎からその指摘が出ると思わず、私は言葉を続けられないで顔を上げた。
「近くに来たとか、保健委員に何かくれるとか、そういうのばっかりだよ。僕に会いにってことは……
「あるんじゃないか?俺たちは今年度で卒業だし、伊作が目当てじゃなくとも、あの人は『忍軍の組頭』だろう。若手の採用も視野に入れていたっておかしくない。」
どうしてか面白くない。私たちは今年度で卒業する。同級生の内定は喜ばしいことだ。引き合いがあるのなら繋ぐべきだし、力ある忍軍への就職経路ができるのは後輩たちからしても喜ばしいことだ。それでも……
「あの戦好きの……黄昏甚兵衛の城に就く?命がいくつあっても足らん。まして伊作は……
すらすら、否定する言葉が出てしまった。その途中で、伊作と目が合う。きゅっと眉を寄せて、不満げな瞳をしている。
……不運じゃ、……好戦的なお城に就くのは良くないって言う?」
言葉に詰まる。確かに言おうとした。けれど、そんな顔をすると思わなかった。
伊作は、あの男についていく気なのか?
そこに私が水を差したのか。
むずむずと、上手くまとまらない気持ちで心が乱れる。
「これ、部屋に入れておいて。もう一つあるんだ、大徳利。持ってくるよ。」
取り繕った笑顔で、持ってきた二つの大徳利を六い組の部屋の前に置いて、伊作は自室へ引っ込んで行った。

「お前の言うのも一理あるが……
文次郎がゆっくり立ち上がる。伊作が置いて行った大徳利を部屋に入れる。
「皆、卒業と将来には真剣だ。俺もお前もそうじゃないか、伊作だってただ流されているんじゃあないだろう。たまには聞いてやったっていいと思うぞ。」
宥めるように優しく言いながら、文次郎は炭火が弱まりつつある七輪も部屋に入れた。部屋の奥、物入れから酒器を出すのが見える。未来に水を差すな、尤もだ。そんなことはわかっている。

ただ、嫌なんだ。

あんなところに、あんな男にやりたくない。

学園でだって、忍務だって、『命に関わるかも』と思ったことはある。死ぬかもしれない。さっと怖気の走る、『肝が冷えた』と言える瞬間。
そして本当に死ぬことは、ある。同級生は、私を含む六人のほか、もっと居た。郷に帰った者や退学した者もいたが、それだけではない。行方不明になったり死んだりしたのだ。死んだ生徒を回収できた場合、損傷は保健委員会で整えるが、弔うための死化粧は作法委員会が担う。
死んだ身体。
事切れた肉体の、『器』へ成り下がったさま。
命が抜け出た途端、血は活性を失って腐敗に向かい、肉は脱力したり硬直したりする。
わかっている。死化粧だって湯灌だってしてきた。死んだ人間の処理は別に怖いことではない。汚れや粗相を払い、尊厳を整える行為だ。黄泉の旅路への支度を手伝うだけのこと。
でも、今日まで生き抜いたんだ。
あんな戦好きの城に就くのか。
生と死が同価値みたいな軍だ。
嫌だ。
今残った同級生は、一人だって居なくなられては困る。
私より一秒も先に死なないでほしい。
魂の抜けたお前たちの身体に対面したとき、私は何を思う?

私の愛しい男たち。

「仙蔵。」
伊作の声に、振り向いた。
目が合うと、伊作は驚いた顔をして、近くまで歩いてくる。
優しく笑う。
「部屋に入って呑もう。」
私の心のざわめきを、傷として読み取っている。普段はぽうっとしているのに、痛みを読み取ることだけは誰よりも早い。
私の手に触れて、引いてくれる。
子供扱いのようで私の気持ちは晴れなかったが、されるまま連れられて、部屋に入った。
文次郎と目が合う。私の顔を見るなり、眉尻を下げて笑った。
「おひいさんは御機嫌がよろしくないようで。」
「うるさい。」
私の気持ちが拗ねている。いやいやをしている。腰を下ろして、隣に座った伊作にくっつく。六い部屋は、文次郎の手で呑みの支度ができていた。小さい七輪、炙った鶏肉、海苔、塩、鉄瓶、焼き物のお猪口。
「文次郎、白湯も持ってきてくれたんだ。」
「酒ばかりではすぐ回るからな。」
伊作が大徳利から一合徳利に酒を移している。
文次郎がお猪口を持たせてくれる。これは、気に入って買ったものだ。いつだったか出先で、立ち寄った店の軒先で、釉薬でふちが白く艶めいているのを私が、ざらざらして黒みが濃いのを文次郎が買った。
二人で出掛けた、なんでもない日だった。
ひとつひとつが、際立っている。感情が波立つ。普段は湧かない感傷が滔々と湧いて、おさまらない。
呑んだら、おさまるか?
伊作が私と文次郎に酒を注いだ。文次郎が伊作に酒を注いでやった。各々三人の手の中に、お猪口が酒を満たしている。
「かんぱーい。」
ふわふわ優しい伊作の声で呑み会が始まった。きゅっと飲み干す。相変わらず、貢ぎ物の酒は美味かった。
……美味い。」
「流石だな、組頭ともなると。」
「雑渡さん自身の趣味も、きっと良いんだよ。」
……べた褒めだ。しかしそうだ。趣味がいい。高品質だ。顔に出さないようにして、注がれるまま酒を飲んだ。

・・・

何を話そうか、とか、やらしい展開だとかをモヤモヤと抱えていたが、頭のいい文次郎と優しい伊作の組み合わせでは全くつつがない進行で酒が進んだ。当然と言えば当然だ。私が初手でぐずったためか進路の話にもならないで、だんだんと酔いが深まってきた。
炙った鶏も塩加減が良くて美味しい。
楽しい。
離れたくない。
酒がなくなってきて、胸がぎゅっとする。
「もう無くなるな。」
「まだ、あるかも。もっと飲む?」
伊作の言葉に、ぱっと顔を上げた。
「飲む。」
「じゃあ、取ってくるよ。」
微笑んで伊作は立ち上がり、六い部屋を出ていく。
……飲み過ぎじゃないか?赤いぞ。」
文次郎が湯呑みに白湯を注いでくれる。
ふいっと顔を逸らした。
「仙蔵。」
「お前の口でくれたら飲む。」
からかったつもりだった。
さっと文次郎は湯呑みを煽り、すぐに私の顎を掴んで唇を合わせてきた。赤面してバカタレと文句を言う想像は立ち消え、されるまま唇を開いて白湯を飲んだ。
すっかり冷めていて、妙に美味しくて、目が熱くなった。
そろっと唇が離れて、文次郎と目が合う。
「こんなこと、言いたくない。ただの我儘だ。みな高め合っていると知っているし、ずっと前からわかりきっていることなのに、嫌なんだ。」
すぐに察してくれた。
「進路か?」
「あんな男にやりたくない。」
はっきりと言葉にしてしまって、そこそこ大きい声が出て驚いた。でも、止められなかった。
「なぜ留三郎じゃないんだ。どうしてポッと出の、あんな、何でも持ってる男が、伊作だって留三郎と同室で何年もうまくやってきたじゃないか。そういう、……違う、……医者を、やるとか、……私は」
どうして。どうして。どうしてだ。ぐるぐる巡る。駄々っ子のそれだとわかる。一番言いたいことはなんだ。取られたくないとか、そんな甘ったれたことではない。目が熱い。泣きたくない。
文次郎はじっと私の瞳を見つめて、言い終わるのを待ってくれた。
「私は……、もう、一人も喪いたくないよ……
俯いて、肩を抱かれる。減ってしまった学園の者の、白い手が、私の手の中にあるようだった。文次郎の胸に額を押し付ける。
ぎっ、と、床板が軋んだ。
気が散漫で気付かなかったが、伊作は戻ってきていたようだ。聞かれたことはわかったが、口から出た言葉は引っ込められない。
開けっぱなしだった引き戸から、伊作が六い部屋に入ってくる。情けない。悲しい。居た堪れない。
恥ずかしい。
「行かないよ。」
引き戸が閉まる。ゴト、と、きっと酒瓶を床に置いた音がした。俯いたまま顔を上げられない私の背中に、伊作がぺたんと胸を合わせてくる。首筋に伊作のあたたかな頬がつけられる。腹に腕が回される。
「しばらく、医療者として修行するんだ。師事する人も、新野先生のお知り合いで」
ぐず、と鼻をすする。伊作の手に触れる。
「ちゃんと決まったら、改めて言うよ。」
頷いた。
……こんな独占欲みたいなこと、言うんだね。」
「確かに珍しい。何もかも当たり前に我が物顔をするが、執着しないからな。」
ふ、と苦笑してしまう。
「知恵の実のせいかなぁ。」
私を挟んで、文次郎が伊作を見る。
「知恵の実?」
「昼間の干し柿だよ。南蛮でそう呼ばれてるって言ってたからあのあと長次に聞いてきたんだ。」
それでいなかったのか、と、のろのろ顔を上げる。涙に濡れた頬を、伊作が隣に来て指で拭ってくれる。
「知恵の実を食べた結果、恥じらいと欲を得て、楽園から追い出されちゃうんだって。謂わゆる神話って感じだったけど……
優しく笑って、私の瞳を見る。
「さっきの実で仙蔵は、『さみしさ』を得てしまったんだ。」
「なるほどな……
しみじみと文次郎が言う。
「『さみしさ』を、知らなかったか。」
「寂しいなんて、思った事は無い。」
ふいっと顔を背ける。二人が笑う。
「文次郎は何か得られた?」
「俺かぁ……。あれを食べたあとに考えた事だろう?」
うーん、と遡って、文次郎はかーっと真っ赤に茹だった色になった。本当に、耳なんか火傷したのかと思うほど赤くなってしまった。
……いや、……この流れで本当にすまん。薬酒を飲んでベロベロになった晩を思い出していた。」
「三人でまぐわったこと?」
スゥ……と息を吸って、真っ赤なまま、やるせない表情の文次郎が観念する。あまりにも普通に言い出した伊作に、私は何も言わなかった。
「そうだ。」
「僕も思ったよ。」
今度は伊作が言う。
「そういう反応が、試食の後あって……。長次に訊きに行って、そのまま図鑑を見て調べたんだ。媚薬とかそういう効果のあるものじゃあないかって。」
「おお。どうだったんだ?」
顔を上げる。その結果には興味がある。
「強精、受胎、安産、乳汁の安定分泌……

ひと呼吸、間が空いた。
「伊作。」
顔を見る。そういう表情だ。伊作は風呂で仕込んできている筈だ。私と同じように。
懐から、伊作が忘れていった小壺を出す。
……少し、もらった。風呂に置いていったろう。」
伊作も、文次郎も、それを見る。
「もらったって、あっ、僕それ……
うずつく。
ひとことも、誰も、言い出していない。
けれど絶対に一つのことを考えている。
……さ、んにん、 で、 ……寝よぅ……
振り絞るように言った。声量はかなり小さかったと思う。伊作が返事に詰まっている。文次郎が立ち上がり、部屋の奥側へ布団を敷き始めた。
「ね、寝るって……
「仙蔵のそれは、交合の意味だ。」
文次郎が衝立を動かしながらそう言って、伊作は赤くなってギクシャクしている。そろっと顔を寄せる。唇で、伊作の頬に触れる。伊作が私の手をなぞるが、ふやふやの指先には力が入っていない。口付ける。
交わりたい。
知恵の実のせいだ。
いやらしいことを三人揃って想像したのは、知恵の実のせい。
持たなかった感情を与えて、男と女を受胎に向かわせる南蛮の果実。

私の胎が、ややが成ると勘違いして、

男に胤を注がれるのを、きゅうきゅう待っている。

伊作の唇を舌先でなぞる。つっと舌を差し込む。抵抗無く迎えられて、舌が絡む。気持ちいい。濡れて擦れる、少し厚めの伊作の舌。
「敷いたぞ、布団。」
文次郎に言われて、伊作から唇を離した。伊作の左手を掴んで立ち上がる。くんと引いて、よろよろ伊作が立ち上がる。小さく息を乱している。
部屋の奥、衝立の向こう、文次郎が二つ並んだ布団の一組に腰を下ろすのが見えた。私と文次郎の布団が二つくっついて並んでいる。話し明かしたいときとまぐわう時だけ、私たちは衝立を間に置かない。
引き戸と布団の間を、衝立で遮った、その陰に進む。私の布団。隣にくっついた、文次郎の布団。
伊作の腰紐を解く。ぱらっと落ちて、寝巻きの前が緩む。ゆるく頭を擡げて揺れる伊作の亀頭がすぐに現れて、私はその足元に膝をついて、唇で触れる。私の口腔が伊作の魔羅を咥え込むのを、文次郎が見ている。
「ぁっ、あのね」
私の口の中でぷっくり雁首を膨らせている伊作が、短く息をしながら、私の瞳を見つめている。
「ぼ、くも……、したくて、……それで、油……
潤んだ瞳。
もう勃ちきった魔羅。
可愛い顔をして、性欲に飲まれてむっちり勃起して、恥ずかしさにうまく話せない伊作の辿々しい言葉。いじらしくて甘くて、堪らなく胸が鳴る。腹が疼く。私の寝巻きの前が、持ち上がっている。
「仕込んできたか?」
うん、と、か細く喉で返事をした。
「私も。」
唇をもごもごさせて、困った顔で、伊作が私を見つめる。
「私も、油を馴染ませてきた。伊作の忘れていった、閨で使う油。……丁子の他にも、何か調合しただろう。」
うん、と、頷く。
「交代でしよう。想像していた事は全部。」
「全部?」
驚いた伊作に、私も文次郎も笑ってしまった。
「どれだけ助平な想像をしてきたんだ。」
少し躊躇った後、伊作は俯いてぽしょぽしょ言った。
「口も、下も、……挿れ、 る……やつ……
「いいよ。なあ、もんじ?」
「なんちゅう振り方だ、バカタレ。」
「可愛い伊作のおねだりを叶えてやらんのか?」
今度は伊作がぷはっと笑う。
ツボに入った様子の伊作に目をやると、伊作はつっと手を伸ばして文次郎のまたぐらに触れた。胡座をかいてうまいこと目立たなくしていたが、伊作の手に優しく払われた寝巻きの下では越中褌の前タレが浮くほど、がっちり上向きに勃起していた。
「文次郎も、想像したんだ?」
ぐ、と、詰まる。可愛い男に微笑まれてタジタジで可笑しい。
「もんじ、私たちをまとめてオカズにしたことがあるな?」
「ばっ」
「わぁ……助平♡」
二人で文次郎をからかいがてら押し倒す。抵抗できるはずだが、もふっと布団に倒れ込んだ。
「私と伊作の閨を見てギンギンに腫らしていたからな。そも、この男は伊作も可愛いと思ってるんだ。」
「仙蔵と僕って真逆じゃない?」
話しながら文次郎の腰紐をほどき、越中褌も取っ払う。文次郎の胸元を指先でくすぐりながら、睾丸を優しく泳がせる。
「好きになってしまえば、見た目も性格も些末なことだ。」
「そっかぁ……。文次郎、仙蔵と僕のこと、好き?」
「バカタレぇ、なんの質問だ。」
あらわにした魔羅ごしに伊作と顔を寄せる。鼻先で竿をつつき、陰毛を嗅ぐ。ぴく、と竿が揺れる。
「好きじゃない人間におっ勃てる人種じゃあないんじゃないか?」
「確かに……
文次郎はグッと詰まって、文句を言えないようだった。
むちゅ、ちゅぷ、と、伊作の唇から濡れた音が経つ。少し顔を上げて、文次郎の雁首ごしに伊作の唇を舐めた。
少し身を乗り出してきた伊作と口付ける。鈴口に唇で触れながら、伊作と深く舌を絡ませ合う。二人の舌で文次郎の先端をくすぐる。
「ん……♡ギンギン♡」
くふ、と、くすぐったそうに伊作が笑う。
「文次郎は二人がかりの口淫がお好みらしい♡」
はっ、はっ、と短く息をする気配。
私たちの顔を見せてやろうと、目いっぱいに舌を使って竿全体を舐め回しながら視線を向ける。文次郎は何も言えず唇を結んで、私たちを見つめている。つろっと糸を引く、うすしょっぱい汁が湧いてくる。
血管が竿表面に浮いて、つるんとした舌触りの皮膚が張り詰めている。太くて、少し扁平なかたち。つられてふくふく動く睾丸もさっきより膨れている。
「そんなに言うなら、されてみろ。二人がかり。」
少し不満げな表情で、文次郎が身を起こす。私の肋骨を両手で起こして膝立ちに引き上げた、かと思えば、腰と膝裏が掬われて、仰向けに転がされてしまった。
文次郎が唇を重ねてきて、首筋に腕を絡めた。口付け合って舌が差し込まれて、私も応えるように絡める。そうしている間に、私の寝巻きは伊作に腰紐を外され、ねろっと咥え込まれる。私の魔羅が深く伊作に吸われて、じゅぷちゅぽ唇に扱かれる。ぴったりと貼り付くような密着感で、伊作の舌が私の魔羅を愛でている。
「ゔ、……っん♡んゔ…… ぅ う」
ぴちゃぴちゃした濡れ音と私の呻きが弱く漂う。
「ぷぁ、……仙ぞぉ、ぴきぴき……
「見ろ、同じようなものじゃあないか。どれ。」
嬉々として文次郎が、私の内腿を撫でた。ひくんと体が震えて、私の身体はその気であるとわからせられる。もふっと寝かされて、文次郎が私の下腹へ身を乗り出す。
「あっ、や、 もん……
はむはむ私の魔羅を弄ぶ伊作に構わず、文次郎はべろっとそこを舐めた。少し厚くて幅のある文次郎の舌が、伊作の口許すぐそばで私の雁首をなぞる。ゾクゾク腰が引けて、不安と興奮がないまぜになる。可愛い、瞳の大きい、甘えた伊作の顔。くまが染み付いて色っぽい目元の、文次郎の顔。
好き。
私の愛しい男たちが、欲望でみっともなく腫らした私の魔羅を愛おしそうに舐め回す。ぺちゃぺちゃ唾液が垂れて、いやらしい。
「良い、だろう?」
どこか得意げな文次郎に問われる。んふ、と伊作が笑う。
「仙蔵は、文次郎のことも僕のことも好きだよね。」
どうしてか堪らなくなって、私は文次郎の鼻をきゅっと摘んだ。
「つ、 ぎ、いさくも。」
「ぼく……?」
文次郎は、そうか、と納得したように顔を上げる。
ほっと息を吐いて、起き上がる。
「なんか、不思議っていうか……
特段の抵抗をせず、伊作が膝立ちで性器をさらける。半勃ちの魔羅がふらっと揺れる。
「文次郎に舐められる未来、あると思わなかったなあ……
「俺だって思わん。真面目にやって卒業して嫁を迎えるもんだと、三年生くらいまでは素直に思っていたしな。」
「健康な商人みたい。」
「そんなところだ。家は他のものが見るし、じゃあ学ぼうとなった時に、なんでも覚えられるからと忍の道に興味を持った。」
話しながら、文次郎は人差し指と親指を輪にして、伊作の魔羅をゆるゆる扱く。そこに顔を寄せて、かぽっと口に含む。体勢を低くした文次郎が顔を寄せてくる。ゆるく何往復かすると口内で伊作はいっぱいになり、口を外すと上反りのものがゆさっと現れた。私の唾液にまみれたそれを、文次郎がねろっと舐め上げる。
「すっごい光景……
「だろう。」
伊作の雁首に口付ける。文次郎の唇を亀頭越しに舌先でくすぐる。伊作の丸い指が、両手が、私たちの顎を、頬を、こちょこちょ撫でる。
「眉目秀麗の、い組が……
ぽつりと言った伊作に、ぷっと文次郎が笑う。
「阿呆のは組の竿に群がるのは、絶景だろう。」
低学年の頃の、学園伝統の悪口が、妙に可笑しい。伊作も笑ってしまっている。
「ふふ……♡そうだね、美形の舌が二枚、贅沢……
小さく息を乱す伊作に撫でられる。耳を、こめかみを、首筋を。
伊作の鈴口の上で、文次郎と舌を絡め合う。酷い痴態だ。そう思いながら、やめたいとはどうしてか思わなかった。
ぷく、と汁が鈴口に膨れ上がる。
ひくんと揺れる。
「も……ダメ……かも……、ぺろぺろ 気持ち、良くて……♡」
蕩けた伊作の声に、腰が痺れる。
耐えかねて私は自分の臍をなぞる。膨れた伊作の魔羅。文次郎のにおい。伊作の我慢汁の味。文次郎のつるんとした目玉。非日常と日常が眼前にあり、知恵の実で熱を持った胎が、私の理性をわからなくさせてゆく。
「出すなよ……?このあと、……っ♡……交わ る、のだから……
我慢、できない。自分で、自分の魔羅をくすぐる。裏筋をなぞって、つうっと下へ指先を進める。会陰が蠢いているのが手に伝わる。前後に撫でる。ぞくっ、ぞくっと耳裏が痺れる。はふ、と、細く息を吐く。
伊作の撫でる手が止まる。
「口も下もというのは、される方?それとも、する方だったか?」
文次郎が口淫をやめて、身を起こしながら問う。伊作に私の肩が掴まれる。仰向けに誘導されて、導かれるまま、布団に尻をつく。
「両方だよ。」
どくんと心臓が跳ねる。
くれる。
伊作がぴったりと嵌めてくれるのを想像する。
そうしたら、文次郎の魔羅を咥えたい。
「仙蔵も、お風呂で仕込んだんだっけ?」
……っ♡そう、だ。浅いところだけ、……中指と、薬指で……♡」
右足を担がれて、松葉崩しで伊作が私を組み敷く。ぷく、ぷくっと鈴口から透明な汁が湧いて、糸を引いて私の太腿に垂れ落ちる。伊作の、ぬるぬるの我慢汁。ぷっくり膨れた、優しい杏色の亀頭。
ぴとっと、私の窄まりにあてがわれた。
「可愛い、色……
感心したような口調で、伊作がぽつりと言う。
……俺も、そう思う。」
「可愛いし、……やらしくて、すき……♡」
ぬる、と、亀頭がおさまる。浅く揺らしてくれる。私の背中が、ぶるっ、と震える。ほしい。おく。じっと見つめてしまう。伊作の柔らかな肌。なだらかな隆起の腹。薄くてまばらな恥毛。もっと奥に欲しくて、右脚を自ら胸に引き付ける。文次郎が私と伊作の接合部を見ている。
「ぅ♡ぅすき♡はやく♡おく ぅ♡」
喉が鳴く。
早くまぐわいたいと、甘くねだってしまう。
「白くて、うすい、さくらいろ……♡つぼんだところが急に熟れて、もも、……みたい……♡」
ぬー……っと、挿入った。ぴったり、根元までおさまった。伊作の左腿が、私の尻の谷間にはまる。鼠蹊部を私の会陰に押し当てて、伊作は甘く安心した瞳で私を見つめている。
ひ、ふ、と、短く息をした。
ずきずき腫れた私の魔羅は、下腹にぴったり貼り付いたように反り返っている。
「舐めて……♡」
まじないのようだ。
その三音で、何をどう舐めるべきかがわかる。吸い寄せられるように私の視線は文次郎の躰へ向く。文次郎の手に触れる。寝巻きの衿下を掴んで引き寄せる。
左肘を布団について、あっと口を開けて見せた。
文次郎は膝で歩いて、私の顔に腰を寄せてくれた。ゆさっと糸に吊られたように揺れる魔羅を唇に向けてくれる。はむ、と咥えて、根本を右手で扱く。
膝が、内腿が震える。
私の胎をむっちりと埋める、伊作のかたち。
嵌めただけだ。それでもう、脚が震えるほど良かった。きゅーっと、ひくっ、ひくっと、会陰が収縮する。括約筋が締まる。ちゅぽちゅぽしゃぶる。口も下も男を咥え込んで、私の胎がきゅんきゅん悦んでいる。
胤。
子種。
精子。
精液。
欲しい。
頭を前後に動かして、根本を唾液まみれにして扱いて、文次郎の魔羅を吸った。ちゅ、ぢゅぽ、ぢゅっ、なるべく深く咥えて、浅く引いて、貪った。
「せ、んぞう、待て」
「らせ。」
出せ。
私は待たず、びくつく文次郎の竿を離さず、口淫を繰り返す。
伊作が腰を少し引いて、また深く嵌めなおした。
それだけで、ぞくん、ぞくっと背が震える。伊作はトントン短く抽送し始める。
「ん♡ゔ♡う♡う♡う♡う♡う♡」
ぷあっと唇がおざなりになってしまう。私の魔羅がぴたぴた揺れる。文次郎が、私のからだを見ている。太い指で、私の胸をなぞる。乳首を掠められて、びくんと痙攣してしまう。
「仙ぞぉ、ゆるめて……♡締めすぎっ……♡」
「ぅ♡ しめ て、っない♡」
ゾクッゾクッと迫り上がる。
抜けて、挿入って、繰り返されて、伊作の魔羅に擦られる感触、これの想像をしていた、ほしくて、ほしくて、頭の片隅にずうっとあった。気持ちいい。我慢なんか、もう、できない。ぴゅうっと射精した。
「きもちぃ♡でた♡でたぁいさ♡わた あ♡あ♡」
「せん、ぞぉ……♡くち♡もんじろぉの、のむでしょ……?♡」
トントントントン奥を突きながら甘えた声で言われて、またはぷっと咥える。突かれ続けて、喉が鳴くのを我慢できない。歯が当たらないようにと思えはするが、上手く吸えない。それでも文次郎の魔羅はむちむちに膨れて反応している。
「ん♡んゔ♡ん♡もん♡すき♡……せー しぃ♡」
扱く手の中がビクビク跳ねる。
「出る、こら、仙 蔵」
文次郎に腰を引かれるが、扱く手を離さない。
びゅく、びゅうっと勢いよく放たれて、吐息混じりの文次郎の呻きが聞こえて、胸がぎゅっとする。んく、んく、と飲み下す。伊作が抽送を止めてくれて、竿に残る汁を啜る。ちゅうっと吸って一度離す。裏筋をべろんと舐め上げる。
「飲めた……?♡」
呼吸で胸が、肩が上下する。ふー、ふーと息を乱しながら、文次郎が乱れた前髪を指先で撫で付けてくれる。ぴちゃぴちゃ雁首を舐めながら、うん、と喉で応えると、伊作がまた腰を振り始めた。
「い さっ♡でたばっ かり♡だからっ♡う う♡あ」
文次郎はまずまずの量を出したのに、みっちり勃起したままで私をぼうっと見つめている。文次郎の両手に、指を絡め取られる。
「もうちょっとだから……♡がんばって♡僕も、出そぉ
ずぽずぽ胎を掻かれる感触に喘ぎながら、伊作の言葉に意識を奪われる。
この快感に蕩けた胎に子種を注がれると聞いて、きゅうっと疼く。
「っ?♡出る? でるっ のか?♡」
「ん……♡出ちゃう……
とんとんとんとん突いてくれる。
「きもちぃ♡なか、ほしっ♡」
う、ゔ、と、いつもふわふわしている伊作が、切羽詰まった雄の音で、喉を鳴らして息を深く吐く。
擦れて、擦れて、伊作の膨れた雁首、濡れた肉、我慢汁、いっぱい、ぬちゃぬちゃ、とんとんとんとん、いい、気持ちいい、すき
「すき、あっ♡なか♡なかだぞ?♡奥っ♡びゅっ♡ほし♡いさぁ♡」
「かわい……♡仙ぞぉ、ほしいね、子種♡」
「んっ♡なかぁ♡こわ れるぅ、はや ぐ、う♡う♡う♡ううう♡」
「ん、もぉ……♡出る、なか、出す、ねっ♡」
ぞぐんと痙攣した。
私は堪えず絶頂して、直腸で伊作が跳ねるのも感じて、びゅー……っと一息に注がれる感触をひくひく震えながら追った。
……っん♡んう♡あつ……出てる ぅ♡」
甘く呻く伊作が顔を伏せる。びくっ、びくっと、私も伊作も腰が跳ねる。抱えられていた右脚が降ろされる。
伊作が腰を引いて私たちの身体が離れて、ふーっと脱力した。文次郎も、つられて息を吐く。私の頬に触れて、もやもやと堪らなそうな表情で私を見つめる。耳をくすぐる。わずかな刺激にも性感を得てしまって、私はされるまま、ふるっと震える。
気怠げな顔で、伊作が私の体に屈む。私が飛ばして腹に引っかかった汁を、ぺろんと舐めとる。
「おんなじ体位、したいなぁ……♡いい?」
くたくたの自分と比べて、ふ、と、笑ってしまった。
……相変わらず、腎張だな……。」
「出すのと挿れてもらうのは別だよ。」
ぽふっと隣に寝転がって、伊作は私の横顔に鼻をつけてきた。仔犬のようだとよく感じるが、そも犬科の仕草をしているとも思う。じゃれるように触れてきて、言葉に出さず甘えてくる。
……欲しいか?」
優しく囁く。大きな犬耳がついていたら、きっとぺたんこに伏している。照れたような恥ずかしそうな顔で、伊作は小さく頷いた。
のろっと半身を起こす。仰向けで、伊作が腹をさらける。
「いっぱい気持ち良さそうだったから……
先刻私の中にあんなに出したのに、伊作のそこは膨れたままで、重力にぽよんと反り返っている。
「僕も、欲しい、すき、おなか……
「中に出されたいか?」
小さく頷く。
「繋がって、ずぽずぽ、擦って……びゅーって、欲しい……
私ともあろうものが、所詮男ということか、伊作にそう言われるとどうにもたまらなく可愛く見えてしまう。似たようなことを言った気もするから、こういう口上が好きなのかもしれない。
馬鹿馬鹿しいが、二回達したばかりのはずなのに、私の体はせっせと血を下半身に集めてくる。
「もんじろぉ……
伊作が、あっと口を開けて見せる。
文次郎は難しい顔をしたが、薬酒を交わした夜のように、寝転んだ伊作の口に自分の魔羅を含めさせてやった。さっき二人で舐めまわした魔羅を、今度は伊作が咥え込む。
「はぷ、……ふと ぉ、……もん、ち……
うっとり、とろんと瞼を重くしてしゃぶる。ちゅぽちゅぽ前後に頭を揺らして、愛おしそうに。そうしながら、私が組み敷こうと伊作の右脚に手を添えると、誘導する程度で持ち上がる。脚が開く。伊作の左脚を跨いで松葉崩しに姿勢を整える。
ふー、ふー、と、伊作は明らかに興奮していて、さっき達した時よりも頬を紅潮させて、横目に私を見る。伊作の会陰を魔羅で擦ってやる。ぽんぽんに腫れた睾丸も、亀頭でうにうに弄ってやる。前後に腰を揺らして、行為が始まっているように振る舞う。伊作の腰がぞくぞく震える。
むにゅっと押し付ける。伊作の真ん中。伊作の窄まり。体毛が薄くて、竿の上にまばらに散っているくらいだ。鼠蹊部の柔らかな隆起が妙に色っぽく見える。ぐっと腰を進めて、伊作の直腸に亀頭を埋める。なめらかで、温かい。
「ぁ♡ぁ、くる♡せん♡んぷ ぅ♡」
ずるんと伊作は文次郎を深く咥え込んだ。根本まで深々と、喉のくびれに届いているはずのところまで。んぐ、んぐ、とくぐもった音が漏れる。
同じようにしなくては。どうしてかそう思った。ぬーっと沈める。伊作の中に進む。ゆっくり進むほどに伊作の腰が痙攣して、その振動ごとに括約筋がびびっと締まった。
「ん♡んゔ♡ ♡ぃっ♡……♡、っ、……あ゙ぐっ……♡」
びくん!と腰が跳ねて、伊作は達してしまった。ぴゅっぴゅと吐精して、ぷはっと口を開けて、口に文次郎を引っ掛けたまま荒く呼吸をする。
可愛い。胎が弱い。繋がるだけでこれだ。あんなに私を責め立てた男が、根元まで嵌めるととろとろに蕩けてしまう。
ずきずきするくらいに勃起してしまう。
私の左腿を伊作の尻に押し当てて、腰を使う。ずっぽり奧まで埋めて、ぐりぐり揺らす。かふ、はひ、と掠れた息が伊作の喉から漏れる。それでも伊作は、文次郎の太腿に縋った。覚束なくて、口から魔羅がこぼれる。ゆさっと揺れる文次郎のそれを、つい見てしまう。
んぞぉ……?」
はっとして伊作を見ると、蕩けた微笑みで伊作はこちらを見ていた。
「もんじろぉの……みてた……
「っ……あんな、ギンギンでは、見てしまうだろう。」
「ほしぃ?」
どっ と心臓が跳ねた。
動揺した私の表情は二人にしっかり見られてしまったようで、びっくりした文次郎が私と伊作を交互に見ている。
伊作の両腕が私に伸ばされる。脇腹に触れ、引き寄せられる。腰に伊作の左脚が絡む。そのまま抱き寄せられて、私と伊作がぴったりと密着する。
寝巻きの背中が内側から掴まれて、手繰られる。裾が上がってゆく。
「もんじろぉ」
蕩けた伊作の声。
「ここ……みて
私も文次郎も固まってしまう。少しの間動けずにいると、伊作は私の尻を揉みしだいた。私の窄まりが、ふちが引き延ばされて、ぬちぬち鳴った。
「や、馬鹿、おま……
恥ずかしさにカーッと耳が熱くなる。さっきまで伊作に貫かれていた私の直腸が、胎が、きゅうっ……と反応する。ぷちゅ、と、伊作に注いでもらった子種が降りてくる。
ふらっと立ち上がった文次郎は私の背後にきて、屈んだ。
「ゆび、挿れて。」
「はっ?!や、何を
反論する間もなく、文次郎は伊作に言われるまま私の直腸に指を埋めた。
「せんぞぉの、おなか側の、浅いとこ、つーって、して。」
ぬーっと入ってくる。文次郎のまるくて太い指が、私の中を探る。
「や  あ♡も ♡もんじ 」
思い出してしまう。
三人の閨で、前回も、その前も、最後には三人で繋がったのを思い出してしまう。前も後ろもきゅうきゅう痺れて堪らなかったことが呼び起こされる。
「まら、の、根本の、筋肉と……おしっこ、入ってるとこの、あいだ……
文次郎の指が、私の中を探る。会陰が引き攣れるように動く。文次郎の指の形がわかる。ぷちゅ、と、濡れた音が鳴る。にゅるっとなめらかに動かされて、ある場所でびびっと身体が竦んだ。
「あ♡ ゔ♡?」
「そこ」
我慢しようとか、気持ちいいとか、そういうことを考えるに至る前に、私は伊作の中に出した。
「っ♡あ、せん ぞぉ、出ちゃったね……♡」
ぶるっ、ぶるっと震えて耐えられず射精した。伊作の指が、手が、私の尻たぶを左右に開く。はふ、と甘い息を吐いている。
「もんじろぉ♡仙蔵の、そこ、こすってぇ……?♡」
囁くような伊作の指示に、きゅ〜……っと直腸が縮む。文次郎の指が往復する。伊作に指示された、私が抗えず絶頂したツボをぬちぬち擦る。
「♡? ♡ぉっ♡……♡?っ、…………♡」
びくっ、びくんと腰が跳ねる。また伊作の中に出してしまう。わからない。睾丸が引き上がる。
「あっ♡あ♡びゅっびゅ♡せん ♡でちゃってるぅ♡」
「どう……なってる……?」
文次郎が訝しげに問う。確かめるように中を押す。その、ほんの少しの仕草にもひくんと背が痙攣する。えへへ、と甘く笑って、私を抱いた伊作が腰をくねらせる。魔羅が搾られる。
「ここ……男の子の良いとこだから……今度は……
膝が震える。腿が震える。布団に肘をついて身体を支えているつもりだが、伊作に身体を預けてしまっている。伊作に尻たぶを揉まれる。私の、下の入り口と、文次郎の指が、伊作の精液に塗れてぬちゃぬちゃ鳴る。
「もんじろぉので……ここ、擦って……♡」
ぬちゅ、と指が抜けて、文次郎の亀頭が私の入り口にあてがわれる。
「せんぞぉ……、息、はいて、ふーっ……
そんなことを言われても、何もできない。ひっ、ひっ、と乱れた息で伊作に縋る。ぬるる、と、文次郎が侵入ってくる。
「あ゙っ ♡ い、 らめ」
文次郎の亀頭がそこを擦る。浅く角度をつけて、文次郎は根元に手を添えていて、良い角度でそこを擦ってくる。伊作の子種が絡んでぷちゅぷちゅ鳴る。
「お゙♡っ ぅゔ!!♡♡♡」
ぴちぴちに押し拡げられて、私のひだが伸びきって文次郎に絡む。瞼の裏にちかちか閃光が飛ぶ。びくっ、びくっと腰が跳ねる。伊作に縋る。伊作が幸福そうに私に頬擦りをする。
「ぁ♡仙ぞぉ、おっき……また出た♡」
伊作が腰を振る。前が搾られる。前からも後ろからも快感が打ち寄せる。
「仙ぞぉ、ね、ぼくとすると、褒めてくれるんだ……、いっぱい吸ってじょうず、かたち好き、良い子、気持ちよくなって、いっぱい出てえらいって……
「仙蔵が、……伊作を、可愛がってるのか……?」
ぬこぬこ腰を揺すりながら文次郎が問う。盛りのついた猫みたいに背を反らせる。ぴゅぷ、と汁が出る感触、竿を、裏筋を、睾丸をきゅっと引き上げて、直腸の腹側へ的確に施される抽送に何も言えない。今日の私の喘ぐ声は濁音ばかりで、可愛げがない。
「いいでしょ。」
ずるんと奥を穿たれた。
「ゔ? っ ? ♡♡……
ひっ、ふっ、と、弱く息をする。伊作に縋る腕も震えてきて、涙が出る。何の話をしているのか、入ってこない。
「あ゙っ、 や♡らめ おかし くっ♡なるっ♡」
「大丈夫だよ。」
優しく囁かれて、ひっひっと息が過剰で、それを伊作は口付けで妨げてくれる。文次郎が、とちゅとちゅ突いてくれる。止まらない。口も、魔羅も、胎も、ぬるぬる擦れて、往復して、抜き挿し、ぬぽぬぽ、止まらない、気持ちいい
きもち いい?
こわい
こんなふうに
達し て、 つづい て
「とっ……♡?とま っ、
 もぉ ♡お゙♡こゎ ぃ♡ とまっ」
「怖くないよ……
 大丈夫♡僕が、 だっこ、してる♡
 もんじろぉの魔羅だよ♡
 大丈夫♡
 ぜったい、だいじょうぶだよ♡
 いっぱい出すの、良いことだよね?♡」
ぞくっ
文次郎の 荒い 息
ぞくっ
ぞくっ
文次郎が 達する時の、雄の音 のど 息
乱暴に打ち付けられている
ぱちゅぱちゅ打たれて 奥の奥 突き上げられて、
ぞくっ
「す、き、 せ、んぞ ぉっ」
文次郎が耳元で名を呼んで、びゅぶっと射精した。
ぞくん、と、一際強く、私の背が硬直する。
「すごい♡びゅっ♡びゅっ♡出てる……♡がんばったね♡」
そこから、声が聞こえなくなって
みえなく なった。




ぽうっと、目が開いた。
「! 仙蔵、起きた?」
白んだ、朝だ。伊作はそろっと立ち上がり、衝立の向こうに歩いて行った。すぐに鉄瓶と湯呑みを持ってきて、注ぎながら戻ってくる。喉が渇いて、もらいたい気持ちはあるが、力が入らない。
ふぐ、といびきが聞こえて、横を見ると文次郎が眠っている。
くったり寝たままの私のそばに伊作が膝をつく。くっと湯呑みを煽って、口移しで水をくれた。されるままもらう。飲み下す。
寝巻きも、布団の掛け布も、新しいものに替えられたようで渇いた感触だ。さらっと暖かくて、髪も頭上に流してあって、快適に整っている。
……動かれん……
声に出してみた文句は、がさがさに枯れていた。
「あは……声枯れ、すごいね。」
「あほたれ……お前、なんだ、あの指示は……
伊作はぎくりとした顔をして、笑って誤魔化した。
じとっと文句を視線で送る。
「えっと……自分で試したツボが……仙蔵にもあるかなぁって……
「同じ人類なんだから、あるだろうな。」
頭が回ってくると文句がどんどん湧いてくる。伊作はもう一度湯呑みを煽って、また口移しで水をくれる。喉の渇きがひどくて、それはされるまま飲んだ。
ぱふっと隣に添い寝してきて、くっついた。私の手に触れて、指を絡めてくる。さらさら、渇いてあたたかい、伊作のゆび。
「怒ってる?」
ぽしょっと聞かれて、言葉に詰まる。
……痛かった?どこか具合悪い?」
……いや、そういう不具合はない。無いが、やり過ぎだろう。」
きゅう……と、甘えん坊の大型犬みたいな気配だ。はあ、とため息をついた。
「禁断の果実、ひどい効用だ。」
ぱちっと瞬いた伊作が、真剣な顔になる。
「確かに……?ツボは押したけど、あんなにいっぱい絶頂って普段しないよね?何回出たっけ。」
「バカタレ!」
うう〜ん……、と、寝ぼけた文次郎がこちらに寝返りをうつ。太い筋肉質な文次郎の腕が私の腹に回される。のしっと寄りかかられる。
「重い!」
ふがっといびきで答えられて、伊作はくふくふ笑い出す。
「今日って、何かある?」
「無いよ。こうなるんじゃないかと思っていた。」
ぷんと答える。
……ふぅ〜ん?」
少し間が開いた。
「僕も……何にもないから、このまま二度寝したいな。」

……いいよ。」
……また、する?」
……、と、言葉に詰まった。とんでもない閨ではあったし、疲れ果てた。思い返して、耳が熱い。何を言ったか、自信がない。
「今度は……、加減しろ。あんな閨ばかりでは本当に枯れる。」
ぱっと嬉しい気配に変わった伊作にくっつかれて、こそばゆい。少し大袈裟にため息をついておいた。
可愛くて、いじらしくて、好奇心にまみれた閨。
あの実がこの身体をそうしたのなら、今度は使わない方が良さそうだ。
両側の甘えた気配にのしかかられながら、気怠さと、幸福感を胎に抱えて、
二度寝のために瞼を閉じた。