河童の皿箱
2025-08-03 08:16:23
1486文字
Public 遊戯王:短め(2025年度)
 

あめふり

娑楽斎とファイアがセアミンとGボーイを迎えに行くだけ。

 あめあめふれふれ、もっとふれ。口ずさみながら行くは、青き髪の浮世絵師。その足が揺らす水たまりと、ぱっと開いた水模様の雨傘が、ざんざんぶりの雨を切り裂いていく。
 そんな足跡をうんざり顔で追いかけるのは、赤い髪の戯画であった。本から飛び出した炎のヒトガタは真っ赤な傘を差しながら、ぐしょぐしょに濡れたスニーカーと、靴下の惨状に眉を顰め、それでもなお先ゆく絵師を追いかける。
 梅雨時、紫陽花、通り雨。幸い傘は持っていたものの、落ち合う駅を出た途端にこれ。鞄を頭にのせて街路樹の脇を急ぐ学生、時計に追われる社会人、そんな流れに逆らって、ただ悠々と往く絵師を、戯画は追いかけ続けていた。
 「どうしてお前はそんなに機嫌良いんだよ」。なんとか追いついた戯画が絵師に尋ねれば、絵師は答えた。「雨が好きなだけだぜ?」、と。まあ、なんとなくそんな気はしていたが。炎の戯画は、どうにもこの時期がダメだった。じめじめしてるし、雨ばかりだし。とはいえ、戯画はさらなる疑問をぶつけるでもなく、自らたちを待っている子供たちのもとへと急ぐ。

 耳を塞ぐほどの大雨の、煙って霞む世界に咲いた、花、花。その側を、その陰で、ふたりの男は速足で歩いていく。ひとりは濡れるのを気にしながら。ひとりは濡れることすら喜びながら。
 チッピチッピ、チャップチャップ。童謡に乗せて跳ねる足。その飛沫に当たらぬよう、赤は少しだけ離れて歩いた。