Kaori
2025-08-02 21:24:33
2356文字
Public ウルトラマンアーク
 

君のそばに行きたい!

君のそばに 』の後日談



◇◇◇ 宇宙科学局 同僚の場合 ◇◇◇

「へー、石堂もそういうの持ち歩くんだな」
「え?」
「ぬいぐるみ、最近の流行りだよな」

同僚が指差した先にあるのは、シュウの銀色のアタッシェケースに並んでいる黒とグレーのふわふわした手のひらサイズのフォルム。大きな赤い目がシュウたちを見上げている。

……!? いや、これは、その……っ」
「いいんじゃない? 石堂にも意外な一面があるってことでさ」

ひらりと手を振って同僚が去っていくのを見送り、執務室に自分ひとりになったのを確認してからシュウは慌ててその黒いふわふわを手のひらにすくい上げた。

「ふわギル! いつの間に!? まさか朝から鞄に潜り込んでいた……?」
《ギヨワ!》
「とりあえず、仕事が終わるまで静かに待っててくださいね」

そっと机の上にふわギルを下ろすと、シュウは大急ぎで仕事を片付け始めた。



◇◇◇ 竹田副班長の場合 ◇◇◇

その日、執務室にはもうシュウしか残っていなかった。報告書をまとめ終えて、時間を確認しようと顔を上げたとき。
ヴオン……っという音とともに、きらきらした光の粒の円形が視線の先に現れた。

……!?」

手指を広げたほどの円は闘いの場で見てきたものよりもずいぶんと小さい。
そしてその光の粒の中から、黒とグレーのふわふわしたものが滑り降りてくる。

「ふわギル!? というか、それはギャラクシーの……! もしかして先日もそうやって……!?」
《ギヨワっ》

空中に飛び出したふわギルを慌てて受け止めている間に、光の円は消えていた。

「いつの間にこんなことができるようになっていたのですか……!」
……石堂……?」

背後から急に掛けられた声に、シュウはびくり、と肩を揺らす。黒いふわふわを乗せた両手ごと机の下に隠して振り返った。

「た、竹田副班長! お、お帰りになったのでは……?」
「ちょっと忘れ物をな…………石堂こそ、疲れてるなら早めに帰れ」
「いえ、私は別に疲れては」
「他に誰もいないからといって、職場でぬいぐるみに話しかけるくらいだから、だいぶ疲れてるんじゃないか……?」
「これはそういうわけでは」
「とりあえず、今日はもう帰れ」

どうやらふわギルが現れたところは竹田副班長には見られていなかったようだ。内心で安堵して、シュウは荷物を片付け始めた。



◇◇◇ 丹生谷班長の場合 ◇◇◇

「班長から指摘いただいた計画ですが」
「ああ、君の修正案は確認した。そのまま進行して……

班長室でシュウが報告をしていたときだった。
ヴオン……っという音とともに、きらきらした光の粒の円形がシュウと丹生谷班長の間に浮かびあがる。

……!!」

シュウが行動に移るよりも先に、光の粒の中から黒とグレーのふわふわが転がり出てきて、班長机の上で立ち上がった。

《ギヨワっ!》

ふわふわは少し首を傾げて、赤い大きな目で丹生谷班長を見上げる。
その間に光の円は消えていた。

…………
「は、班長……! これは、その……!!」

机の上にいるふわギルを、眼鏡の奥の目を常になく大きく開いて凝視している丹生谷班長。シュウは誤魔化すための言葉を必死に探すが何も出てこない。

「あ、あの……
……時と場所を選ぶように、教えておくんだな」
……え?」

眼鏡のブリッジを押し上げながらそれだけ言って、丹生谷班長はふわギルから視線を逸らす。

「先ほど言ったように、修正済みの君の計画案で問題ない。速やかに進めるように」
「し、承知しました。では、失礼します……!」

シュウは頭を下げると、ふわギルを攫うように持ち上げて即座に班長室から退出した。
起こった事象を丹生谷班長がどう捉えたのか確かめる勇気は、シュウにはなかった。



◇◇◇ ユウマの場合 ◇◇◇

……ということがあったんです」
「それはお疲れ様でした……

宇宙科学局での出来事を項垂れながら話すシュウに、ユウマは苦笑いを返す。

「それくらい、ふわギルはシュウさんのそばに行きたかったんですね」

ユウマとシュウの前で仲良く並んで座っているふわアークとふわギルは、自分たちのことを話されているとわかったのか、黄色と赤の大きな目を向けてきた。

「その気持ちは嬉しいのですが、時と場所は選んでいただけると」
《ギヨワっ!》

ふわギルが立ち上がって、てとてとっとシュウに近付いてくる。シュウの指に腕を掛けて訴えるように鳴く。

……『あの人なら大丈夫だと思った』んですか? ……確かに班長はいろいろ察してくれていそうですが、とはいえ立場というものが……

頭を抱えるシュウを横目に、ユウマはふわアークを手の上に乗せて首を傾げた。

「ふわギルが小さなギャラクシーの力で移動できるということは、ふわアークもできるのかな?」
《イヨワっ!》

ユウマの手のひらに立ち上がったふわアークが、自信ありげに胸をそらす。
そしてヴオン……っという音がして。

「わあ……っっ!」
「ユウマくん!? ふわアーク!?」
「わかったよ、ふわアーク! できることはわかったから!」
《イヨワ?》
《ギヨワ?》
「ふわギルまで、真似しなくていいです!」
「ふわアーク! 今はやらなくていいから!!」


ふわアークとふわギルがいる賑やかな日々は、相変わらず続いているのだった。








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ちなみに、丹生谷班長や竹田副班長たち宇宙科学局メンバーが出てくるお話もあります。
(ふわふわは出てきません)
https://privatter.me/page/67ed63fd66560