部屋を出て共有ルームへ行くとソファの背もたれから茶色の髪が覗き見えた。チョコレートかキャラメルか、お菓子のような髪色をしている人物に心当たりは一人しかいなかったが、彼が一人でグラビの階にいるのは珍しい。そう思って声をかけてみたのだが反応がなかったので不思議に思い近付いてみれば、茶髪の持ち主……郁は膝に雑誌を広げたままソファのアームの部分に頬杖をついて寝息を立てていた。
自分との約束はなかった筈なので、他の誰かと待ち合わせをしているのだろう。と、そう考えていると膝の上の雑誌がずり落ちかけているのに気が付いてそっと手を伸ばす。
「いくー、ちょっとごめんね」
落ちてページが変に折れてしまう前に回収してしまおうと、本に添えられていた郁の手をどかそうと手首を持った時だった。
「ん……」
掴んだ郁の手がするりと抜け出して手の甲がこちらの手にすり、とくっついた。驚いて固まっているうちにその手は甘えるように優しく何度か往復して、やがてこちらの手を覆うように重ねてくる。
(わ、わ、わ……!)
予想外の出来事に衝撃をうけて思わずその手を見つめていると、重ねられた指が付け根の辺りからだんだん滑らせて、絡めようとーーーー
「わーーー!!郁!起きてーーーー!!」
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