山城まつり
2025-07-13 02:25:56
7195文字
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【リレー小説】劇場版名探偵コナン〈紅炎の幻想(ファンタズム)〉Ep.0

「馬子軸とコナンのクロスオーバー、見たいよね~~~!」という話になり、プロローグのバトンを頂きましたので稚拙ながらちょっと考えてみました。脳みそ働いていないので、文章がめちゃくちゃ下手です……。それでもいいよ!という心の広さがアンドロメダ銀河の方のみご覧ください

※アスナショウコ様宅より四宮椿さん、市ノ瀬咲良さん、大河カレンさん Littorio様宅より戸張征芽さん、しろみさん宅より弓削雪さんをちょっぴりとお借りしております。
※キャラクター増やすのは大歓迎です。どうぞ、煮るなり焼くなり……。
※一応ふわっとネタバレ考えておりますので、必要な場合は呼びつけてください。勿論変えていただいても構いません!


青空の下、白く聳え立つその建物は──病院というより、まるで城だった。
いとしま医学特区、その中央区に構えるのが、日本の医療技術の最先端を誇る東都医科大学付属病院である。

「へぇ……テレビで見たのと全然違うわね。実物は、もっと無機質で無慈悲って感じね」

園子が肩をすくめながら呟く。隣で蘭は、感心したように天を仰いでいた。

「でも、本当にここでがんも再生できる治療とか、脳を補助するAIとかが使われていくなんて……。すごいよね、夢みたい」




「夢なんかじゃ、済まないと思うんだよねぇ」




刹那、明るい男性の声がした。一同は驚いて背後を振り返る。そこに居るのは、燃えるような髪を緩く束ね、季節感の無いカーディガンを羽織った細身の男性。彼はにっこり……とはお世辞にも言い難い、にんまりとした顔をして此方に歩み寄る。

「この島には、拭い去れない夜があるって、知ってる? そんな島の上にぽつんと病院を置いたところでさぁ、悲劇しか起きないのは目に見えてるよねぇ。まぁ、だからこそ俺は此処に勤める訳だけどぉ」
……拭い去れない夜?」

思わず、そう問い返す。けれどそれに対して彼は、変わらず不敵な笑みを浮かべた後──ゆっくりとかぶりを振る。

……んー、そういう事はさ、俺より沖田ちゃんに聞くのが鉄石だと思うんだよねぇ~。俺はぁ、ただの通りすがりの一般人だからぁ」
「沖田ちゃんって、誰なんだよ。てか誰なんだアンタ一体!」

今まで空気と化していた小五郎のおっちゃん──毛利小五郎が眉間にしわを寄せる。男は「うわぁ! こわぁい♡」と微塵もそう思っていない顔で返し、言葉を継いだ。

「逢えば分かるよ。……最もその時、誰も死んでない保障は出来ないけどねぇ」

この男に、警戒心が解く事ができない。コナンが生唾を飲み込んだとき、彼はひらひらと手を振って先に病院の自動ドアへと足を進めた。

「ま、頑張ってよ。そしてせいぜい、かっこよく足掻いてみなって。俺、そういうの大好きだからぁ」

彼を見送った一同の間に、風が吹き抜ける。
それは風というにはあまりに熱く、波動というにはあまりに不穏だった。

──この島には、拭い去れない夜があるって、知ってる?

その声が、脳から離れない。拭い去れない夜って、なんだ。悲劇しか起きないって、どういう事だ。ささくれ立つ嫌な予感に背筋を冷やす思いを抱きながらも、コナンは自動ドアをくぐった。先程居た彼に、全てを問い質そうとして。


***

俺は高校生探偵、工藤新一。

幼馴染で同級生の毛利蘭と遊園地に遊びに行って、黒ずくめの男の怪しげな取引現場を目撃した。

取引を見るのに夢中になっていた俺は、背後から近付いてくるもう一人の仲間に気付かなかった!

俺はその男に毒薬を飲まされ、目が覚めたら──

──身体が縮んでしまっていた!

工藤新一が生きていると奴等にバレたら、また命を狙われ周りの人間にも危害が及ぶ。
阿笠博士の助言で正体を隠す事にした俺は蘭に名前を聞かれ、咄嗟に『江戸川コナン』と名乗り、奴等の情報を掴むために父親が探偵をやっている蘭の家に転がり込んだ。

そんな俺が今回出会うのは、医学における万能の天才と名高い──

「四宮椿だ。ちなみに、面白コンテンツとして市ノ瀬咲良、大河カレンも居るぞ」
「うわァ椿、酷いなァ~~~~」
「誰が面白コンテンツや! このニワトリ頭! ハゲ茶瓶! 逆ダチョウ!」
「誰がニワトリでハゲでダチョウだ! 私は医学における万能の天才なのだぞ!?」

それから……

「うわぁ~、沖田ちゃん、自分のいいように捉えたらいいのに最悪の捉え方して自爆してる~!」
「アンタはいい加減、人の神経を逆撫でするンやめたらどうっすか」
「やぁだね! あ、俺の他にもいろいろ居るかもよ~? この映画、ここで止めるのはもったいないと思うなぁ~?」

それ……

「椿、嘴馬が呼んでいたぞ。あと昼食を食べていないそうだな。私が折角作ってやったというのに、何が気に食わなかった……?」
「クレマリー。何度でも言うぞ、私は赤子じゃない。十倍がゆを作る労力があるならせめて普通の米にしてくれ。おかずは要らん、鯖缶がある」
「ふ・た・り・と・も、食生活をちゃんとしてくださいっていつも言ってますよね!?」
「私はちゃんと食べているぞ。栄養学的には」
「右に同意だ」
「ちゃんと出来てないから言ってるんですッ!!」

……

……あー、ごめんね、コナン君。いとしま医学特区、特に湾岸部は危ないから、気をつけてね」

……あ、ああ……ありがとう……

コホン。

小さくなっても頭脳は同じ。
迷宮なしの名探偵。

真実は、いつも一つ!

***


──いとしま医学特区 東都医科大学付属病院 エントランスホール

正面のホールでは、既に開院記念セレモニーが始まっていた。あの赤毛の男に全てを問おうとしてホールに足を踏み入れたのだが──彼の姿はこつぜんと消えていた。まるで、煙に巻かれたみたいに。

「──本日、我々が成し遂げたのは、未来医学への大きな一歩であります」

園子が「早くこっちに!」と小声で囁いている。……あんまり目立つ行動をしちゃまずいよな。そう思い、しずしずと椅子に腰を埋めた。

壇上に立つ男性を、コナンも知っていた。パンフレットによれば、彼は綾島悟。この東都医科大学付属病院の副院長だ。そんな彼の演説に、職員達は涙ながらに頷き──

……という訳では無かった。

何故かは知らないが、誰も彼もがまるで「めんどくさいなぁ」とでも言いたげな顔色を貼り付けていたのだ。まるで、「またコイツが何か言ってるよ」と言いたそうな顔。

(この副院長、人気ないのか……?)

そう、訝しむ。表面上はちょっと厳しそうだが倫理観のある一般人、というような気もするが。まぁ、コナンには特に関係がない話だろう。自分はこの病院を管理する立場でも評価する立場でもなく、ただの来賓の一人なのだから。

……そのような訳で、わたくしはひとえに、この病院の開院を心から祝っております」

彼のスピーチは、そのような当たり障りのない結びで〆られた。ぽつぽつと、拍手が起こり始める。それは水面に雫を落としたように広がり、会場が静かな拍手の波に包まれようとして──。

そのとき。


ボッ!!


異様な音が響いた。
小さな、何かが破裂したような、或いは炎が噴き出すような音だった。

……どうした?」

綾島副院長が、マイクを持ったまま檀上から降りる。

……何か、臭くない……?」

園子が鼻をひくつかせる。隣で蘭も、不安げに周りを見渡していた。
──その、刹那だった。

「────ぇ、」

最前列に居た、職員のひとり。
若く、瑞々しい肌をした白衣の女性。
彼女の身体が、叫ぶ間もなく──炎に包まれた。

「火ッ!?」

喉元から、悲痛な声が絞り出される。
彼女に中心部に咲いた炎の華は瞬く間に全身に飛び火し……いや違う、全身を火種に変えながら小爆発を従えて広がっていく。
炎の渦が、肌を黒く焦がしていく。血が滲み、服が燃え、顔の肉が落ちて!

「きゃああああああああああッ!!」

悲鳴と混乱。誰も近付けない絶望の渦中で、彼女の喚く声が反響する。

「あついのッ! あつい、あついあついあつい!! いや、いやぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

誰も助けてなどやれなかった。
そして、逃げる事もまた、出来なかった。
まるで、舞台の真ん中で火葬されるような、異様な炎。

「わたしは、わたしはただ……ッ。あぁ、あ────」

その声は徐々に生気を失い、獣の咆哮へと転じていく。
肌の白が、黒に置き換わっていく。
そして、最後の最期の瞬間。

彼女は、小さく、こう呟いた。

「この炎は、だって──」

そうで、しょう?
しのみや、つばきせんせい。

彼女は燃え尽きる最後の瞬間まで、何かを言おうとしていた。誰かを見ていた。
その視線を追って、コナンは〝彼女〟へ目を向ける。

──そこに居たのは、緋色の髪をした、白衣の女性。

まるで、この惨劇を予見していたように。
その女は黙って炎を見つめていた。

……成る程。実に面白い」

その唇から綴られた台詞を聞いて、コナンの背筋に寒いものが走る。
彼女は炎が落ち着いた事を悟ると、ゆっくり、ゆっくりと辺りを見渡し──そして、誰より早く指示を飛ばした。

「これは事件だ。警察、参加者の移動を制限。誰も出入りさせるな」

沈着で鋭い、切り裂くような声だった。

「そこ、消火用泡剤を! 今から火傷の確認をする、クレマリー!」

そう声を上げれば、背後に控えていた白い長髪の異国人が表情一つ変えずに「勿論だ」と頷いて犠牲者の傍に駆け寄った。それを確認した緋色の女は、ふと口角を持ち上げる。

「初歩だ。私の目の前で事件を起こすなど、余程背骨を暴かれたいらしいな。覚悟しておけ。次、そこ──」

まるで、「この状況に慣れている」かのように。
コナンは息を呑む。指示は迅速で的確、全く迷いがない。混乱するスタッフ達を捌き、周囲を一瞥しただけで導線と必要人数を把握していく。

「重度火傷、気道損傷の恐れあり。……助からない可能性もある」
「クレマリー、直ぐに処置を頼めるか」
「ああ、任された。……運ぶぞ」

病院スタッフ達が慌ただしく動き回り、やがて混乱は彼女の〝命令系統〟へと吸収されていく。

……ただの医者じゃ、ねぇよな」

ぼそりとそう落とす。
まるで火災現場の指揮官。いや、それ以上に──あれには何か、裏の顔がある。

やがて女性は一通り指示を飛ばし終えると、コナン達の傍に近付いてきた。その髪から、ふわりと煙草の匂いがする。

……怖がらせてしまったな。だが、必ずこの事件は解決する。慰めにもならないだろうが、どうか──」

そこで彼女と目が合った。何かを見透かしているような瞳。その瞳に、ぶわ、と冷や汗が生まれる感覚を覚える。
……気付かれた? いや、まさか。

……すまない、凝視してしまった」
「あ、あは、は……大丈夫だよお姉さん」

ぎくしゃくとしながらも、そう返しておく。へまをやらかさなかっただろうか。訝しまれなかったろうか。

「お姉さん、これ、やっぱり事件なの……?」

歩美が不安げにそう問いかけた。それに対し緋色の女は「そうだな」と呟くと瞳を一度閉ざす。

……事件、だろうな。十中八九」
「それならボク達の出番ですね!」

光彦が自信満々にそう笑う。「ボク達も協力しますから、何でも頼ってください!」と胸を張る彼は強いのか、ただ無鉄砲なだけか。

……協力する、というと?」

彼女は首を傾げる。それに対して元太と歩美が光彦に並んで胸を張った。

「俺達、少年探偵団なんだぜ!」
「今までだってたくさんの事件に挑んできたんだから!」
「そして今のところ迷宮なし! です!」

それを聞いて、緋色の女が目を見開く。そこには煌々と、好奇心の星が瞬いていた。

「ほう、探偵? お前達が? ……ははは、面白い!」
……ま、間違った事は言ってないわ」

灰原がさりげなく背中を押す。「いや、実に面白いな」と好奇心に満ちた表情で告げる女は、次いで「名前を聞いておこう。小さな探偵諸君」と瞳を細めた。

「吉田歩美!」
「小嶋元太だぜ!」
「円谷光彦と言います!」
……灰原哀」
「ふむ、記憶しておこう。……それで、お前は?」

彼女は顔の角度を変えず、ぐるりと眼睛だけを動かして此方を見た。それにひゅ、と喉が鳴る感覚を覚えながら、コナンは警戒を孕ませて──けれど努めて明るく、名を示した。

「江戸川コナン! よろしくね、お姉さん」
「江戸川、コナン……? 江戸川乱歩とアーサー・コナン・ドイルから取ったような名前だな」

ぎく。瞳に射抜かれ、名前の由来もまた射抜かれ、身体がびくんと跳ねる。冷静、冷静、冷静……。そう思いながら、コナンは苦笑を浮かべて答える。

「え、えぇと……お父さんがね、推理小説が好きで……
「ふむ、それは野暮な事を聞いたな」

彼女のペースに巻き込まれては良い事が一つもない。コナンは大きく息を吸って、ペースを此方側に戻そうと言葉を選んでいく。……そう、まずは尋ねてみるべきだ。彼女の正体を、真正面から。

……ところで、お姉さん、だあれ?」
「私? 私か?」

彼女は不敵に笑った。
左右で色の違う双眸が、細く笑っている。

これは、とある探偵と探偵が出会う、ひとつのIFの物語。
そう──運命はこのように扉を叩く。

「四宮椿、医学における万能の天才だ」

オッドアイが、此方を見据える。

「光栄に思うがいい──その大脳新皮質へ私の蹄跡を刻みつけ、未来永劫語る権利を得たのだから」


────────続く?