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万丈
2025-07-10 17:57:32
3169文字
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小説
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大元帥明王は心配性
【AI生成】【二次創作】【天空戦記シュラト】
ヴィシュヌ様とインドラ様が仲良くなった後、心配事が増えたアータバッカさんの話。
前の話→
朝焼けの吐息
次の話→
女官たちの秘密のお茶会
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2
アータバッカ視点
(
……
嘆かわしい)
大元帥明王アータバッカは、執務室で報告書の山に目を通しながら、内心で深い、深いため息をついた。
嘆かわしいのは、山積みの政務ではない。近頃の天空殿の主と、その懐刀である総司令官の、あまりにも初々しい恋模様についてである。
千年の記念祭以来、あの二人の空気は明らかに変わった。いや、変わったというより、今まで必死に隠してきたものが、堰を切ったように溢れ出している、と言うべきか。
特に、ヴィシュヌ様だ。わしが知る限り、あの方は常に慈愛と威厳に満ちた調和神であった。しかし、近頃のあの方はどうだ。インドラ様と二人きりになる機会を窺い、その度に少女のように瞳を輝かせている。
先日のことだ。わしがヴィシュヌ様の私室に報告へ向かうと、ちょうどインドラ様が部屋から出てくるところに出くわした。インドラ様の表情は、いつもの無表情。だが、その耳は、まるで熟した果実のように赤く染まっていた。
そして、その後ろで扉が閉まる寸前、ヴィシュヌ様の、楽しそうで、そして満ち足りた微笑みが、わしの目に映ってしまったのだ。
(あれは、恋する乙女の顔ではないか
……
!)
近侍の娘たちが「最近お二人のご様子が
……
」などと囁き合っているのも、無理はない。
千年も生きてきて、あれほどまでに分かりやすいとは。
嘆かわしい。実に嘆かわしい。そして、どこか微笑ましいと思ってしまう自分もまた、嘆かわしい。
だが、問題はインドラ様の方だ。あの男は、千年間、己を律し、心を殺すことでかろうじて均衡を保ってきた。それが、ヴィシュヌ様という絶対的な光を前にして、今、その均衡が崩れ始めている。
それは、彼にとって救いなのかもしれん。だが、あまりにも無防備だ。あの朴念仁が、恋に浮かれる女神の暴走(というほどではないが)を、果たして御しきれるのか。
(
……
いかん。わしが、釘を刺しておかねば)
もはや、これは軍の秩序というより、二人の保護者としての務めだ。わしは執務室でインドラ様を呼び止めた。
「インドラ様。近頃、近侍たちの間で妙な噂が立っているようですな」
そう切り出すと、案の定、あの鉄面皮が僅かに狼狽えた。面白い。この男の、こんな表情が見られる日が来ようとは。
「貴方も、あの方も、千年も生きてきて、恋も初めてと見える。その浮かれよう、あまりに無防備すぎる」
図星を突かれたインドラ様は、ぐっと言葉に詰まる。わしは、呆れ半分、親心半分で続けた。
「わしは、二人の仲をどうこう言うつもりはありませぬ。しかし、インドラ様。貴方は総司令官。そしてヴィシュヌ様は、この天空界の主。その立場を、ゆめゆめお忘れなさるな」
わしの言葉に、インドラ様の瞳に、はっと覚悟の色が戻った。そうだ、それでいい。わしは、最後の仕上げとばかりに告げた。
「あの方の無邪気さを受け止め、時には諫め、そしてお守りする。それが、傍らに立つことを選んだ男の、新たな『役目』ではないのですか」
「
……
っ」
「
……
肝に、銘じます」
深く、恭しく一礼するその姿に、ようやく安堵の息をつく。まあ、これで少しは落ち着くだろう。わしは「結構」とだけ言い、その場を後にした。
(やれやれ。お目付役というのも、骨が折れるわい)
報告書の山に再び目を落としながら、わしは苦笑した。だが、悪くない。あの凍てついた雷帝が、一人の女性に振り回され、慌てふためく。そんな光景が見られるのなら、この千年の平和も、決して無駄ではなかったということだ。
願わくば、あの二人の春が、永く続くことを。老将は、ただそれだけを、心から祈るのだった。
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