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万丈
2025-07-10 17:57:32
3169文字
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小説
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大元帥明王は心配性
【AI生成】【二次創作】【天空戦記シュラト】
ヴィシュヌ様とインドラ様が仲良くなった後、心配事が増えたアータバッカさんの話。
前の話→
朝焼けの吐息
次の話→
女官たちの秘密のお茶会
1
2
千年の記念祭から数週間。天空殿の日常は、表向き、何も変わらないように見えた。
デーヴァ神軍総司令官インドラは、変わらず完璧に職務をこなし、その威厳は揺るぎない。調和神ヴィシュヌもまた、慈愛に満ちた微笑みで世界を見守っている。だが、ごく一部の者だけが、二人の間に流れる空気の微細な、しかし決定的な変化に気づき始めていた。
その日の夕刻、インドラは政務の報告を終え、ヴィシュヌの私室から退出しようとしていた。室内に他の近侍がいないことを確かめたヴィシュヌが、静かに彼を呼び止める。
「インドラ」
その声には、公の場で聞かせるものとは違う、柔らかな響きが宿っていた。インドラが振り返ると、ヴィシュヌは玉座から立ち上がり、彼の元へと歩み寄ってきた。そして、ごく自然な仕草で、彼の袖をそっと指でつまんだ。
「
……
今夜も、お茶を淹れてはくれませんか?」
少女のような上目遣い。千年もの間、決して見せることのなかった無防備な表情。その破壊力に、インドラの鉄の仮面がわずかに揺らぐ。
「
……
御心のままに、ヴィシュヌ様」
そう答えるのが精一杯だった。彼女の指が触れた袖口から、熱が伝わってくるようだ。心臓が、持ち主の意思に反して早鐘を打ち始める。
ちょうどその時、扉の外から近侍の気配がした。
「失礼いたします、ヴィシュヌ様。お夕食の
……
」
扉が開かれる寸前、ヴィシュヌはパッとインドラから離れ、何事もなかったかのように淑やかな表情に戻る。インドラもまた、瞬時に無表情の仮面を被り直し、近侍に一瞥もくれずに部屋を辞去した。
しかし、インドラの耳が微かに赤く染まっていたこと、そしてヴィシュヌの口元に楽しそうな笑みが浮かんでいたことに、聡い近侍たちは気づき始めていた。
(最近、ヴィシュヌ様は総司令官様と二人きりになられることが多いわね
……
)
(総司令官様の、あのようなお顔、初めて見た
……
)
そんな囁きが、近侍たちの間で交わされるようになるまで、時間はかからなかった。
そして、その変化は、大元帥明王アータバッカの耳にも当然のように届いていた。ある日、アータバッカは執務室でインドラを呼び止めた。
「インドラ様。近頃、近侍たちの間で妙な噂が立っているようですな」
「
……
何のことでしょうか、アータバッカ殿」
とぼけるインドラに、アータバッカは大きなため息をついた。
「貴方も、あの方も、千年も生きてきて、恋も初めてと見える。その浮かれよう、あまりに無防備すぎる」
「う
……
」
図星を突かれ、インドラは言葉に詰まる。アータバッカは、呆れたように、しかしどこか楽しむような目で続けた。
「わしは、二人の仲をどうこう言うつもりはありせぬ。しかし、インドラ様。貴方は総司令官。そしてヴィシュヌ様は、この天空界の主。その立場を、ゆめゆめお忘れなさるな」
釘を刺すような言葉。だが、その声には不思議と温かみがあった。
「あの方の無邪気さを受け止め、時には諫め、そしてお守りする。それが、傍らに立つことを選んだ男の、新たな『役目』ではないのですか」
「
……
っ」
それは、叱責でありながら、二人の関係を認める言葉でもあった。インドラは、この老将の深い洞察力と温情に、ただ頭を下げることしかできない。
「
……
肝に、銘じます」
深く、恭しく一礼するインドラの姿に、アータバッカは「結構」とだけ言うと、満足げに頷いた。
その夜、インドラが淹れた茶を飲みながら、ヴィシュヌが楽しそうにその日の出来事を話す。
「ふふ、アータバッカに叱られてしまったわ。でも、あなたのあんなに慌てた顔、初めて見た。とても、愛らしかったですよ」
「どうか、お戯れは
……
」
本気で困惑し、顔を赤らめるインドラの抗議の声は、しかし、どこまでも幸せそうなヴィシュヌの笑顔の中に、優しく溶けていくのだった。雷帝が、慈愛の女神に振り回される日々は、どうやら始まったばかりのようである。
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