樹蜜夜皀莢│きみつやさいかち
2025-06-17 22:30:05
75033文字
Public 本編
 

天与✧星火−CELES✦ASTRA−[本編]

pixiv版天与✧星火−CELES✦ASTRA−の本編完成版。
誤字や一部表現の修正はしてある。
グロ、鬱要素注意!

もくじ
0 ✶一番星……01
1 ✧ 孤蝶の灯……02
2 ✧ 燈火……03
3 ✧ 迷蝶……04
4 ✧ CELES本部……05
5 ✧ 覚悟……06
6 ✧ 羽ばたく……07
7 ✧ 未知のⅡ地区……08
8 ✦ ASTRA突入……09
9 ✦ 交戦……10
10 ✦ 絡繰りの魂……11
11 ✦ 希望の路……12
12 ✦ 音と影の玉璧……13
13 ✦ 玉璧に響く波紋……14
14 ✦ 崩れゆく玉璧……15
15 ✦ 光の中……16
16 ✦ 攻奪の星……17
17 ✦ ロッシュ限界……18
18 ✦ 戻れない路……19
19 ✦ 黒き狂星……20
20 ✦ 壊れゆく……21
21 ✦ 崩星の夢……22
22 ✦ 瓦礫の先……23
23✦炬火の蛾……24
24 ✦ 遥か煌めくのは追憶彗星……25
25 ✦ 火の粉と炎翅の蝶……26
26 ✦ 孤灯一穂……27
27 ✦ 消燭……28
28 ✦ 天消星火……29
29 ✦ 届かない……30
30 ✧ 黒い夢と追憶……31
31 ✧ それでも……32
32 ✧ 天与星火……33


30 ✧ 黒い夢と追憶

 あの日のことは忘れもしない。あちこちに植わっている花木に、桜色やきはだ色の花が咲き始めた季節だった。大学の帰り道、エジカとジオマ、その恋人ローゼリの三人で話しながら川辺の道を歩いていた。ひらひらと花びらが舞っているのが綺麗だったのを憶えている。
 卒業間近だねという話でもしていたのか、花見の予定でも立てていたのかは思い出せない。でも何か他愛のない話をしていて、その時間が楽しくて、ずっと続けばいいなと思っていたことは確かだった。
 そんな願いは、すぐに砕け散ってしまったけれど。どうしてだろう、願えば願うほど叶わなくなる。すぐに打ち砕かれてしまう。
 悲鳴も、助けを求める間もなく、目の前でローゼリは拐われた。こちらに手を伸ばそうとした彼女の姿が今も目に焼き付いている。走り去った黒いバンにナンバープレートはなく、かわりにアスタリスクのような星型が描かれたプレートがつけられていた。
 ローゼリの両親が警察に届け出を出し、目撃者として私とジオマが呼ばれたが、その黒いバンのプレートの話をした途端に場の空気が凍りついた。そして、我々では対応できないと言われてしまったのだった。
 どうして対応できないのか、彼らは一切話してくれない。だから二人で――ローゼリの両親にも内緒で調べることにした。幸い、ジオマの超能力のロジック・マスターはそういうことに向いていた。誰にもバレずにハッキングを繰り返し、情報を漁ることも容易かった。
 アスタリスクのような星のマークは、STARスターという超能力者実験組織のマークだった。STARスターは、アンチ・サイという超能力を相殺する力を持つ人を集めて何か企んでいるようだった。
「どういうことなの?STARスターは全世界から超能力を無くそうとしてるってこと?」
 得た情報や考えたことを書き記した膨大な数のノートのページをパラパラとめくりながら、エジカは怪訝そうな顔をする。
「超能力があるとつらい思いをする人がいるから、それを無くしたいとかそういうのじゃないかな」
「みんながみんな超能力で苦しむ訳じゃないのにね……
 それを止めてローゼリを助け出したい。そう思ったのが全ての始まりだった。警察は超能力者相手には手も足も出ない。だったら超能力者に対抗できる組織を作るしかない。
 その思いでできたのが、CELESセレスだった。ローゼリが好きな美しい青い空が由来だ。ジオマの右目も同じ色だと、彼女が言っていたのを思い出す。
――星の明かりを覆い隠す、そんな意味もこもっていた。
 組織を立ち上げてからの活動は超能力者を保護したり、超能力者狩りを捕えて話を聞いたりなどが多かった。そのうち、ハッキングだけでは見落としていたより深い情報も手に入るようになった。
 地区の地下に秘密の施設があるらしいこと。ここ関係のデータは全て手書きで、ハッキングだけでは手に入らなかった情報の一つだった。その地下施設はとても大きく、長い廊下といくつもの部屋があるらしいこと。他にもそのいくつもの部屋の気味の悪い噂などの話はあった。
 活動を続け、十分に情報は集まりあとは戦力だけ、という状態になったある日、大きく状況が変わった。STARスター崩壊の報道だった。ASTRAアストラ、そう名乗る三人組の子供たちの手によって研究員をはじめとする職員が殲滅されたそうだ。しかし、捕われたアンチ・サイ能力者たちが解放されたという記録は一切なかった。
 もしまだアンチ・サイ能力者たちが解放されていなくて、助けなければならないとなるとビルを占拠しているASTRAアストラとの戦いを避けるのは難しく、より戦力を高めたほうがいいという考えに至った。三人で組織を潰す戦力。生半可な力ではどうにもならない。
 それでも、ローゼリを助けるために戦えるような力のある超能力者に声をかけたり、トレーニング場を整備したりと準備を進めていた。
 そんなある日、運が大きく変わる出来事があった。サングレイの加入だ。そこから、流れがこちらに向いた。
 ASTRAアストラ幹部の名やコードネーム、本部の場所、本部を隠す仕掛けと今まで手に入らなかった情報がこれでもかと入ってきた。そしてやっと、ASTRAアストラ突入に踏み切れた。幹部を退け、ASTRAアストラを率いているというブラック・ホールのもとにたどり着いたのに。やっとローゼリを見つけたのに。
 願いは叶えさせてもらえないのだろうか。ずっと、黒い夢と追憶の中にいるのだろうか。
 ねぇローゼリ、声は届いているんだよね?何度も言っているかもしれないけれど、ずっと君を捜していたんだよ。
 君の笑顔が好きだったから。君が紅茶シフォンケーキを美味しそうに食べるのが好きだったから。今度は絶対に守り抜くから、傍にいさせてよ。心から愛せるのは、君しかいない。
「諦められなかったんだよ、君が……大切な恋人だから、さ」

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