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3386文字
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ミホペロ
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夢幻の夏氷
学パロ。かき氷を食べる
1
2
珍しく部活が無い放課後だった。水泳部だと今の季節は休む暇など無く、少し離れたこの歩道でも水飛沫の音が聞こえる。
風がカルキを含んだ水の香りを運ぶ。それを鼻孔から吸い込むと暑さがほんの少し薄れ、爽やかな心地になった。そして隣を歩くゴースト娘も似たような事をしていた。ただし、おれとは違い小さな鼻を上向きにして吸い込んで、大げさにハァと気持ち良さげに息を吐いた。そのまま弾むような勢いで、丸い瞳をこちらに向ける。
「昨日の夜ロロノアとコンビニで会ってさ、お前の話がちょっと出たんだよ。かき氷食っててそれがまさかのイチゴ味でビックリしたーって言ってたぞ」
「
…
ほぅ」
ゴースト娘とロロノアは同級生で家が近所だ。そうすると最寄りのコンビニで出くわすのは珍しいことではない。
示し合わせた訳でもない、ほんの偶然だろう。取るに足らないことだが、おれの奥歯は僅かにギリと鳴った。ゴースト娘は何にも気付かず軽やかに歩く。反しておれの歩みは重たげな緩慢さを現した。半歩先を進み出したゴースト娘が徐に手持ちファンを取り出して起動させ、ふわりと風が舞った。
二つに結んだ長い髪が微弱な風になびき、あの苺の香りを漂わせて来た。人工的な、香水のそれ。そして揺れているピンクと眩しい白色のブラウス。その光景が
齎
もたら
すものは強いデジャヴのような感覚。おれの指を動かして、ゴースト娘の髪を掬いとろうとする。
「??なに?」
「
……
いや」
実際には指は動かず、ゴースト娘が振り返っただけだった。こちらに向けた丸い目を更につぶらに動かすとまた話し始める。
「ま、ともかくさ!私はそれから舌がかき氷なんだよ。食べたくって仕方ない!前だったら誘えなかったけど、鷹の目がかき氷食えるんなら一緒に食いに行けるじゃん!こんな事なら早く言ってほしかったぞ♪」
「...おれは甘いものは食わんぞ」
「はぁ~?今さら嘘つくなって!あ、ほらっ。着いたぞ!」
ゴースト娘が高くはしゃいだ声を出すと、例の駄菓子屋へ向かって駆けて行った。
※
それぞれ注文を終えてかき氷を持つと、以前のように軒下のベンチへ座った。おれはレモン味を頼んだ。今回は何かに気を取られることは無く、黄色が一番甘くなさそうに見えたから選んだまでだった。隣に座るゴースト娘はウキウキと上機嫌で苺味に練乳を追加して頼んでいた。
すぐそばの視界はピンクに
塗
まみ
れている。ただ座っていても、くるくるしていて何だか喧しく明るいピンクと、その手元で涼やかに光る甘ったるいピンク。
――
嗚呼、美味そうだ。勝手に喉が引き上がった。今食べているレモンモドキとは決して違う味だと思った。
おれの身体は知らずゴースト娘に近づいた。お互いの肩が触れ合い、かき氷に夢中になっていたゴースト娘がこちらを見上げる。
真ん丸な目がきょとんとして、その中におれを映す。自然に視線が下がるとまた新しいピンクを見つけた。氷を食べたせいか、そのピンクは少し水気を帯び光っていた。何か言いたげに小さく開く。嗚呼、美味そうだ。きっと美味い。おれも開きかける
――
。
「
……
ん、」
「やっぱ甘いの好きなんじゃん」
スプーンに乗ったかき氷がおれの口に押し当てられていた。ついさっきの雰囲気をゴースト娘は無言の催促と勘違いしたらしい。ピンクの唇を少し尖らせて、するりと気軽な手つきでおれの口へかき氷を渡す。ご丁寧に練乳も混じえたものだった。
舌が焼けそうな甘さにおれは思わず顔をしかめた。それを見てゴースト娘はホロホロと屈託なく笑う。そしてこちらへ向けていた顔を元へ戻すと、シャクリとかき氷を一口掬い食べた。溶けて光る小さじのピンクが柔らかそうなピンクの中に消えていく。一連の仕草を見たらおれも視線を戻し、かき氷を食べた。何故かは知らないが急に日が更に暑く感じる。
手中の氷が日差しのせいでチカ、チカと光る。その刹那に頭へ浮かぶのは、やはりあのピンクと甘さだった。次はいつ食べられるのかは分からない。
その夢のような幻の味を、おれは少し恨んだ。
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