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eclipsis
3386文字
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ミホペロ
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夢幻の夏氷
学パロ。かき氷を食べる
1
2
――
暑さで気の迷い、あるいは緩みが生じたとしか思えない。
部活後の帰り道。先を歩いている後輩たちが吸い込まれるように駄菓子屋へ入っていった。下校時といっても日はまだ暮れそうになく、蒸し暑い空気が肌にまとわりつく。その熱気による猛攻から奴らが逃げるようでもあって、思わず目で追った。群れを成す後頭部の中に見慣れた緑色も居たのが余計にそうさせたのかもしれない。自分の足も店へと向かっていった。
開け放した路面店で大して涼しくはないが、扇風機が回っているので目につく。
生温い風でも惹かれてしまったか、その流れのまま店内へと進んだ。すると自然に後輩たちが集うカウンターの前へ来た。
どうやら今の状況で我らの足を
誘
いざな
い動かすものは一緒のようだ。
カウンターには手書きのメニューが貼られていて色とりどりの字が踊っている。それらに負けず劣らず鮮やかなのは、一緒に貼られているかき氷の写真だった。後輩たちは写真を見つつメニューを指さしたりして注文していく。あの目立つ緑の頭はすでに居なかった。もう注文して離れて行ったらしい。
後輩たちから一歩ひいて様子を眺めた。皆が夢中になっているかき氷。青、緑、紫、黄、オレンジ、そして赤。じつに目が覚める色ばかりだ。しかしこれと言って食欲は湧かない。最後に目に留まった赤いかき氷の写真を何の気なしに見つめた。白い氷の山の頂点から赤色が広がり、徐々に白色に負けて濃いピンク色に変わっている。食欲は俄然として湧かないが、目は離せなくなっていた。
削られた氷が織りなす層に透かされて、煌めいているような濃淡のピンク色。
「後ろのアナタはいちごだね」
注文を取っていた店主が少し声を張ってそう告げた。確信めいた声色はおれに向けられていて、不覚にも上の空になっていた頭が急速に冴えていく。そして後輩たちが振り返り、目を丸くしておれの返答を待っているようだった。このまま無言だと空気がのしかかり質量を帯び始める。
注文を否定する事は出来なかった。覚醒したばかりの頭はただ無力だ。
※
不本意にも手に入れたかき氷を携え店先へ出た。店内の飲食スペースは限られている。正直中も外も暑さには大差ないので、この際だと広々とした外の方を選ぶ。だが立ち食いする気分にはなれず、店の軒下に置いてあるベンチへ向かった。
「え、かき氷
…
、その味を選ぶのか」
ベンチの丁度そばに立っていたロロノアが、おれの事を見るや否や口走った。それに対して返すのは一瞥のみにして、ベンチに脚を組んで座った。奴の持つかき氷は絵の具のような青色で、それこそ"その味を選ぶのか"と思った。
赤い山をプラスチックのストローで崩し、お情け程度に平たくなっているそれの先端で掬う。口に運ぶとひんやりした氷が舌の上で溶け、甘味が追いかけるようにして口内へ広がり喉へ落ちていった。
ハッキリ言うと嫌いな類に価する味だった。苺と名付けられているくせに、感じるのは人工的な菓子みたいな風味だ。そばに立つロロノアは"苺"よりも人工的な色味をシャクシャクと食べていた。上下する喉元は心地良さそうである。
止まりかけた食指を再び動かし、溶け始めて濃いピンクになった山を一口、二口と食べた。喉を通る涼感は心地良い。染みるようにゆっくり瞬きをすると、甘ったるい苺モドキの味が空かさず追随してきた。
頭の中には小さいあの果実の姿は浮かばない。そもそも、最初からそれを思い浮かべなかったのだ。おれが何よりも先に感じたのは、鮮やかなピンクで、くるくるとしていて、波打つ二つの長い束で
――
。
無意識にシャクシャクと氷を掬い食べていた。溶けゆくかき氷に合わせて薄く目を閉じる。その刹那に苺の存在は確かに消え、瞼の裏に煌めくピンクが浮かんだ。一瞬の夢幻は喉元を過ぎれば居なくなった。ただ残ったのは好ましい甘さばかり。
「
……
美味い」
思わず言葉が零れた。おれの声に反応してこちらを見たロロノアが、驚いたような顔をしていた。
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