みたむら
2025-06-10 17:04:16
5061文字
Public 8/17「夏インテ」
 

「その席に、君はいなかった。」サンプル

呪術廻戦・五条×女夢主本5冊目です。


* * *中略 * * *

 とある部屋で俺と傑と硝子がゲームをして遊んでいる。
 そういえば、各部屋でゲームして遊ぶってのをやってた気がする。ある時は俺の部屋、傑の部屋、この時は確か……硝子の部屋だったか。

「私の勝ちだね、悟」
「くっそー! 傑、もう一回だ! 今度こそ俺が勝ってやる!」
「もう五回くらい二人でやってるよ? 硝子ずっと待ってる」
「別にいいよ。やるより見てる方が楽しいし――あっ宅急便来たわ。取りに行ってくる」
「行ってらっしゃい」

 確か硝子の実家から荷物届くのを待っていた。それが寮長から連絡が来たのか、受話器を取ると部屋を出て行った。留守を預かった俺と傑はレースゲームで奮闘していた。

「あーーーっ!! ずっりーぞ、傑!」
「はは、たまたま・・・・アイテムを持っててたまたま・・・・悟が前を走ってたからつい、ね」
「わざとだろ!」

 某レースゲームではアイテムを使って走者を邪魔することが出来る。俺は何とか傑の前に走ることが出来たが、背後から何かを投げられて見事にぶつかって、俺のキャラは倒れてしまう。そして、ビリ確定してしまった。
 横では一位を決めるために傑が必死にコントローラーを操作している。俺は横で見てたが、硝子から入れて貰ったソーダを一口飲んだら本棚に目がいった。
 本棚に本だけじゃない雑貨品が並んでいる。硝子は硝子なりに一応、女子らしいことはあるらしい。
 しかし、珍しいものがそこにあった。それは、写真立てだ。何故か写真が倒れていたのだ。

(硝子の奴、面倒くさがり屋だからなー)

 はー、めんどくさー、と影でたばこや甘酒を飲んで呟く彼女の顔を思い出しつつ、本棚に近づいて倒れていた写真立てを立ててやる。
 ついでに何の写真か見てやろう。あの硝子だ、家族か……付き合ったことがある奴とかだったら冷やかしてやろう。
 本当に、ちょっとした親切心と好奇心だった。写真立てをとって、写真を見る。
 それにはつい先日、夜蛾センに撮って貰った入学式の時の写真だった。
 俺と硝子と傑。それぞれ自由なポーズで撮ってるのが笑いを誘う。自由すぎるだろ、俺たち。
 しかし、違和感を覚えた。
 写真はおかしくない。入学式は確かに三人だった、だから三人で撮った。入学生もこの三人で間違いない。

(だけど、何かが足りない・・・・・・・

 そしてこの写真の配置。三人だけなのにこんなにスペースがいるか? もっと狭めてもよかったはずだ。
 まるで、もう一人分そこにいるかのような、ぽつんと空いた空間が気になった。

「よし! 私の圧勝だね」
「ちょっと五条ー、夏油ー。荷物持って上がるのに手伝ってくれるー?」
「おや、そんなたくさん送ってきたんだね……悟?」

 傑と硝子の声がほぼ同時に聞こえたと同時に、その写真立ては伏せた。そして、こちらを見ている傑に「何でもねぇ、仕方ねー手伝ってやるかー」とやる気ねー声で硝子の荷物を運ぶのを手伝った。
 思えば違和感の始まりはこの時だったかもしれない。
 しかし、違和感はそれ以降〝何もなかった〟。
 三人で高専を卒業して、俺と傑は高専の教師になって、俺は五条家当主、傑は俺の呪術界を改革するという考えに賛同してくれて協力者だった。硝子は医師免許を取るために一時的に高専を後にしたが、数年後医師として戻ってきた。
 あの頃は楽しかった。親友がいて仲間がいて、最終的に呪術界を変えることはできた。さすが俺、完璧でしょ。

(だけど、何かが足りないっていう感覚はずっと抱いていた)

 全うな人生を送ったと思う。俺にとって理想の人生だった。だから悔いはなかったはずだ。だけど何故だろう。
 魂は理想の人生だったということの答えが誤りだというように、違和感を示していた。

「何で? 理想の形で大団円で終わったじゃん。だけど、この違和感が何か分かんねー」

 理屈ではこれが最高の終わり方だ。だけど魂はそれは違うと否定する。何故?
 見た目は理想の終わり方。だけど俺の中では違和感だけは拭えなかった。そんな前世だ。
 まぁそれでも現実世界では満足していたし、これくらいが丁度いいのかもしれない。そう思って世を去った。そして今、こうして生まれて生きている。
 あの頃は三人でいた。だが、今世ではアイツが現れた。何でアイツがここにいるんだ? 違和感が拭えない。

(何で今、あの写真立てと前世とアイツが出てきた?)

 ただ出てきただけじゃないはずだ。きっと深い意味があるはずだ。

――まさか、お前がこの違和感・・・の正体を教えてくれるってわけ?」
 だったら、教えて貰おうじゃねーか。俺もこの違和感を抱いたままってのも胸くそ悪いしな。
 そう思いながら歩みを進める。


*製本版を購入の上、お楽しみください。*