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usagipai
2025-06-10 15:10:54
3319文字
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まとめ
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3
チョコレートボムハプニング
「では、愛莉さん
……
チョコの球体を接着するには、ここで少し温めたチョコを
――
そう、そのように
……
上手いですよ」
「こ、こう
……
? ん、でも、うまく
……
あっ
……
」
チョコボムの上下を接着しようとした愛莉さんの手元がふるりと震えた瞬間。
球体がするりと滑って、ラトルの手の中に落ちてきた。チョコの端が彼の手の甲に触れ、ほんのりと溶けた感触が残る。
「失礼いたしましたっ
……
! 手が
……
」
「いえ、大丈夫です、焦らずゆっくりと。
……
チョコがちょっと、溶けてしまいましたね」
ふっと笑うラトルの声は穏やかで、愛莉さんの緊張もすこしだけほぐれる。
「
……
なかなかうまく出来ませんね」
「そんなことありませんよ。むしろ、愛莉さんはとても丁寧です。僕なんか、最初はチョコの温度すら間違えて何度も割ってしまったくらいで
……
」
ふたりの笑い声が、静かなショコラ店の厨房にふんわりと溶け込んだ。
そして
――
「では、次はこの中にマシュマロとココアパウダーを入れましょう。ゆっくり
……
」
ラトルが渡そうとした小さなボウルが、愛莉さんの袖に引っかかった瞬間
――
ぱしゃっ、と軽やかな音。中にあった細かいココアパウダーが宙に舞い、愛莉さんの頬にふわりと付着した。
「
……
あっ」
ラトルが思わず目を見張った。
愛莉さんの白い頬に、ほんのりと茶色のココアの点が浮かぶ。彼女もすぐに気づき、手でぬぐおうとしたが
――
「失礼いたします、ついてしまって
……
」
そう言って、ラトルが指先でそっと拭った。
一瞬の沈黙。指先が肌に触れた温度が、互いの鼓動にじんわりと響いた。
「
……
あ、ありがとうございます
………
」
「いえ
……
あの、すみません、僕の手
……
冷たかったでしょうか
……
」
「いえ
……
あの、あったかいです
……
」
言葉の熱が思わず跳ねる。
まるでチョコレートのように甘くて、とろけるような、柔らかい沈黙。
やがて、ふたりは目を合わせて、ちょっとだけ照れたように笑った。
「
……
このショコラボム、今日中に完成させましょうね。雨がやんだら、一緒にお客様に届けに行きたいですから」
「はい。
……
ふたりで作ったものですからね」
初夏の雨はまだ降り続いていたが、厨房にはもう、晴れ間のような光がさしていた。
溶けかけのチョコの香りと、まだ言葉にならない感情が、ふたりの手の間にそっと宿っていた。
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