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usagipai
2025-06-10 15:10:54
3319文字
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まとめ
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2人だけの夏祭り
初夏の夜空を覆うように、重い雨雲が広がっていた。
楽しみにしていた夏祭りは、まさかの雨によって中止となり、心をわくわくと躍らせていた愛莉さんの表情には、ぽつりと寂しさが浮かんでいた。
「ラトルさん
……
」
彼女は静かな声で呟いた。
「雨で中止になるなんて
…………
」
その瞳は、淡い光を失いかけていた。
冥界の間で生まれ育った愛莉さんにとって、現世の季節の移ろいは、どこか夢のようなものだった。
花や風、祭りのざわめき、そのすべてが彼女の心に新しい色を差していた。
そんな愛莉さんの微かな落胆を感じ取り、ラトルはゆっくりと微笑みながら言葉を紡いだ。
「愛莉さん、そんなに落ち込まないでください。僕が今夜だけのために、ここで小さなお祭りを用意いたします。」
彼はそう言うと、店の奥から慎重に抱えて持ってきたのは、小さなホットプレートとカセットコンロ。
その脇には、たこ焼きの粉、リンゴ飴の棒、チョコバナナの材料が丁寧に並べられていた。
「ラトルさん
……
そんなことを
……
」
愛莉さんは驚きと戸惑いが入り混じった声で尋ねた。
「はい、愛莉さん。雨が降っていても、ここなら屋根があるので大丈夫です。二人だけの夏祭りを楽しみましょう。」
その言葉に、彼女の目に再び光が宿り始める。
ラトルは慣れた手つきでたこ焼きを作り始めた。
じゅうっと油が跳ねる音、ぷつぷつと生地が膨らむ音が、静かな夜の中に響く。
そして、甘いチョコバナナの香りがふんわりと漂い、リンゴ飴の鮮やかな赤が小さな灯りのように輝いた。
愛莉さんは、ゆっくりとリンゴ飴を手に取り、その温もりを感じながら呟いた。
「!
…
すごいです。」
彼女の頬に、ほんのりと赤みが差す。
ラトルは、そんな彼女を優しく見つめて言った。
「はは
…
貴方の笑顔が見れてよかった、
雨なんて関係ありませんよ。大切なのは、こうして一緒にいられることですから。」
二人の間に、静かな温かさが流れた。
外の雨は窓を叩き、時折風が吹き込んでくる。
しかし、裏庭の小さな屋根の下では、二人だけの世界が広がっていた。
互いに手を伸ばし、たこ焼きをつまみ、チョコバナナを分け合い、リンゴ飴の甘さに笑顔がこぼれる。
季節の風物詩が、こうして静かに二人の胸に刻まれていった。
それはどこか懐かしく、どこか新しい、初夏の夜の小さな奇跡だった。
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