【#深淵覗きの断章】深淵を覗く子よ

深淵覗きガーベラの、始まりの物語。

⚠原作の諸要素に対する独自解釈・捏造・オリジナル設定あり⚠
※本シリーズオリジナルの怪物(?)が登場します。
※戦闘・流血描写を含みます。

Fanmade by チーバオ(QiBao)
#sky創作 #sky二次創作


 あの時、リトルの姿の私は、夏灯りの催し物で手に入れたランタンを片手に、捨てられた地の戦場跡の外れを探索していた。
 暗黒竜でも闇の蟹でもない、“未知の化け物”が出るって噂を確かめる為に。
 ランタンの輝きを受けて煌めく砂や、朽ちゆく武器と防具の数々を眺めて、曇天の下の夕闇を夢中で歩き続けてたら……
 突然、何かを繰り返し突き刺す音と、無数の甲高い咆哮が聞こえたの。

 驚いて振り返ったら、誰がいたと思う?
 夕闇の地の巨躯の勇者捨てられた地の大精霊様が、真っ黒な液体……多分化け物の血であろうものを全身に浴びて立ってたの。
 化け物は、大精霊様に踏みつけられた状態で死んでいた。でもその姿はね……
 えーっと、ぼんやり覚えてはいるんだけど、アレの姿をパッと上手く言い表せる言葉が見つからないし、大精霊様が守りのおまじないを掛けてくださったから、詳しく覚えていないの。
 全身は暗黒竜と同じ真っ黒で、大きさはその倍あって……沢山の赤く光るポツポツと、先端が幾つか分かれた、黒くて細いものに覆われてて……ごめん、やっぱりこれ以上は思い出せないや。

 捨てられた地の大精霊様は、化け物に突き刺してた槍を引き抜き、私を見下ろしてこう仰った。
「星の子……確か今の名はガーベラと言ったな? やんちゃで怖いもの好きなお前の噂は……ふふ、他の大精霊から聞いているぞ」
 重く低い、揶揄いを滲ませた声を聞いて、思わず放心してしまった。
 恥ずかしさが一気に湧いてきたし、瞑想時の不思議な場所や天空でしか会えないはずの大精霊様が、なぜ私の真後ろに現れたのかも気になった。
「助けてくれて、本当にありがとうございます。でも、どうして此処に?」
「例の『化け物』の噂話を、大長老殿や大賢者殿から聞いたものでな。警備の為、特別に『現界』して我が領土を巡回していた。そして、お前の背後を狙っていたコイツを見つけて仕留めたわけだ」
「目の前の景色に夢中で、全く気づかなかった……
「私は問題無いが、精霊や星の子が『生きてるアレ』を直で見ていれば、その姿の悍ましさと呪いで正気を無くしただろう。お前にもおまじないを掛けてやらんとな」
 大精霊様は私を肩に乗せて、神殿の中まで連れていってくださった。

「良いかガーベラ。底無しの謎や未知に挑む勇気、困難に耐える不屈の心、飽くなき探究心と好奇心は褒めてやる。闇を照らすそのランタンこそ、お前に相応しかろう」
 大精霊様は、私が捧げた蝋燭の火で黒い血を祓い清めながら、そう仰った。
 私は嬉しくなって、自分のランタンを抱きしめた。
「お前はこれから、多くの謎に触れ、多くの事を知るだろう。だが気を抜くな。覚悟を決め、引き際を弁えておけ」
「覚悟と、引き際……
「そうだ。知られざる領域へ足を踏み入れる時。相容れぬモノと対峙し戦う時。或いは、灯火を手に深淵を覗き込む時。そうせねば、取り返しのつかん事になる。先人達のように、飲み込まれてはならんぞ」
 一瞬、私を見下ろす大精霊様の目が、暗黒竜みたいに赤く光った気がして……余りの怖さに背筋がヒヤリとしたなあ。多分、気のせいかもしれないけど。
 大精霊様は私を大きな左手に乗せると、大きな右手の指先に火花を瞬かせて、優しく私の頭を撫でた。
「記憶よ、霧を纏え。かの魔物の姿を詳らかに思い出さぬように」
 おまじないを終えた後、捨てられた地の大精霊様は綺羅星の姿となって、天に昇った。
 その時、豪快に笑ってこう仰ったの!
「また今回の様に助けてやれる保証は無いからな。くれぐれも気をつける事だ、『深淵覗き』め」