瞑想を終えた後、すぐにホームへ戻る気にもなれず。
書庫へ続く長い回廊を歩きながら、ガーベラは大精霊の言葉を反芻していた。
他者に害成し、恐怖を振り撒く、悪しき星の子。
幸いにも、ガーベラはそのような存在に出会ったことはない。ネモフィラも、“交信”能力が暴走していた頃は他の星の子達に避けられた事があったが、直接危害を加えてくる奴には会わなかったと言っていた。
手持ちの“旧き星の子達の文書群”でも悪しき星の子の事は言及されていない。寧ろ、何らかの知識を得て失踪した者を数える方が簡単だ。
しかし、『王』について調べている友人達の一部は、伝承の断片から《ある時点から王が悪しき存在へと堕落し、王国の滅びを招いてしまった》という仮説を立てている。
「『王』と星の子に関する私の仮説と、『堕落した王』の仮説が本当だったら
……私達も王のように堕落するかもしれないって事だよね
……」
大精霊達は、星の子達の堕落を気に掛け、堕落した者は容赦せず罰するという。だが、そう語ってみせた捨てられた地の大精霊の願望は、如何なるものだろう。
星の子が
――例えば自分やネモが堕落し悪事を成したなら、何を思いながら罰を下すのか。
「本当、夕闇みたいに得体の知れない御方ね
……」
あの荒れ地に散らばる無数の謎と同じ位、判然としない。
「あの目の輝きは
……とても楽しそうに
……試してるような感じがする」と呟いた時、ガーベラは書庫の玄関口に辿り着いていた。
大鳴きを聞いて昇降機のある広間へ駆けつけると、念動力を使う仕掛け扉の協力者を求め、3人の影の子
――ガーベラと火を灯し合っていない星の子が鳴き続けている。
「私も、ネモも
……自分の為に誰かを傷付けたりはしない
……しないように、しなきゃ」
そう声に出して言い聞かせながら、ガーベラは蝶ケープを羽ばたかせる。
困っている同胞を、助ける為に。
《了》
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.