【私は真の竜を知らぬ】
深淵覗きガーベラの収集物の一つであり、旧き星の子“白雪のアルハ”が遺した文書群。
アルハが書き綴り、後に散逸した暗黒竜の研究書『黒き竜の書』の僅かな断片を含んでいる。
星の子でありながら暗黒竜を恐れず、その習性に魅了された変わり者のアルハは、ある時語り部の星の子“群青の波のルプス”と出会い、
外つ
国の竜伝承を聞かされる。
「外つ国竜こそ真の竜種であり、私たちの知る暗黒竜とは姿かたちが違っているのだ」と。
真の竜は、光と火の力に属する気高く力強い生き物だという。
体は堅いうろこに覆われていて、口から火を吐くことが出来る。
二本脚と被膜付きの翼をもつもの、四つ脚と被膜付きの翼を持つもの、翼なしで滑らかに空を飛ぶもの等がいるのだそうだ。
アルハとルプスは友となり、互いにとって唯一の理解者となった。だが、平穏な日々は続かなかった。
星の子の務めの一つ、転生。
ルプスはそれを繰り返すうちに、己が語る物語と現実の区別がつかなくなっていった。
遂には「アルハの為に、真の竜を探しに外つ国へ行く」と言い残し、二度と姿を現さなかった。
友が真の竜探しの旅を辞めて戻ってくることを望んでいたアルハは、ひたすら暗黒竜の研究に没頭した。
そして、捨てられた地の神殿や書庫に通ずる『隠された建物』を訪れ、とある事柄を知り、「この世の全てに絶望した」という。
アルハは自身の手でほとんどの文書を焼き払い、失踪した。
故に、その時アルハが何を知ってしまったのかは
……永遠に謎のままだ。
『黒き竜の書』の断片の一つ、保存状態の良い最後のページにはこう綴られている。
私は真の竜を知らぬ。
わが友ルプスは、私の為に真の竜を探しに外つ国へと旅立った。
友を待つ間、私は黒き竜、闇の生物たち、精霊達の暗い秘密を垣間見てしまった。
ああ、ルプスよ、キミは私がこうなってしまう事をどこかで予感していたんだね。
早く真の竜を連れて戻ってきてくれ。私を外つ国へ連れ出してくれ。
あんな恐ろしい事を知ったままこの国で生きるなど、私には耐えられない!
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